ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

大部隊

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ザッ!

「金成様、御報告致します!
先程現れた"外なる者達"の調査に向かわせた尖兵20名が討ち倒された模様!」

「ほぅ…国盗り直後に現れるとは…一難去ってまた一難…
して、"外なる者達"の総数は?」

「ハッ!主戦力と思われる【剣士】3人を筆頭に、黒い二刀の少年と銀髪の美女、黒い犬に年端も行かぬ少女、城の生き残りの爺の7人と1匹になります。」

「並びは?」

「は…並び…ですか…?」

「そ。隊列だ、隊列。
今お主が言った並びで進んでおるのか?」

「はい、主戦力3人のやや後方をその並びでおります。」

「ふむ、そうか…」


金成は配下からの報告に、顎に手を当てて少し考え込む。


「槍兵20、火矢衆50、鎖鎌10、足軽追加で20連れて行き、物量で押し潰せ。
随時報告は忘れるなよ?」

「な、7人と1匹相手に過剰では…」

「かもな。
だが相手は"外なる者達"だ。
"外の世界から来た者"と言う意味もあるが、"理の外に居る者達"っつー意味もあるのは知ってるだろ?」

「知っていますが、この間来た"外なる者達"2組は大した事ありませんでしたが…」

「ばーか、三度目の正直って言葉があんだろー?
兎に角今言った奴らを黒い二刀の少年にぶつけろ。恐らく連中の最高戦力はそいつだ。」

「え?3人の【剣士】の方では無く…ですか?」

「あぁ。
まぁ直ぐに分かるさ。一応"闇蜘蛛"にも準備させておけ。」

「ハッ!畏まりました!」ダッ!


伝令の足軽兵がその場から姿を消し、辺りがシンと静まると、分厚い鎧兜を着込んだ時羽金成が不敵に笑う。


「ふふ、"外なる者達"か…」

ザリッ…ドカッ!


そう言って金成は、焼け焦げた畳の上にドカリと腰掛け、半壊した天守閣から城下を眺めるのであった。







ギャリンッ!

「弾いたぞ!殺れぇっ!」

「シッ!」ボッ!

ドッ!「オゴッ!?」…ドサッ!


斬り掛かってきた足軽兵の刀をアークの拙い剣撃による<パリィ>で弾くと、すかさずハナが突進の勢いを乗せた突きを繰り出して足軽兵の喉を穿ち貫いた。


〝足軽兵1体を討伐、報酬として脇差し1本と"4分"を獲得しました。〟


アークは本日15人目の足軽兵を倒す。
今まで大して実戦を行って来なかったのだろう、アークは肩で息をしていた。


「はぁ…はぁ…
ふぅ…やっと15人目か…」

「アーク、あなた最初の頃より<パリィ>大分良くなって来てるじゃない、その調子その調子。」


上達の早いアークに素直に褒めるハナだが


「いや、こんなんじゃまだダメだ。
どうやら相手は多勢…
この程度では物量差で迫られれば意図も容易く押し潰されるだろう。」

「お、おぉぅ…」


調子に乗るかと思われたが、驕る事無く歯噛みしている姿にハナが困惑の表情を浮かべていた。







「…アークの事…どう思われます…?」

「うーん…元々は"『時の迷宮』内での強制労働を通しての改心"が目的だったはずなのに、こうも急に、露骨に人が変わると確かに凄く気持ち悪い…
ホントは良い傾向のハズなのに…」

「やっぱりそうですよねぇ…
良いっちゃ良い事なのですが…
…ノア殿、さっきの熱帯雨林でバカスカやり過ぎたのではないですか?」


ノアとハウンドの2人もハナ同様に、露骨に改心したアークに違和感を覚えていた。


「あの…あの青年が何か…?」

「ん?あぁ、お気に為さらず。
こちらの話ですので…」

「それよりも、体調の方は大丈夫ですか?
先程まで血塗れでしたが…」


2人でそんな事を話していると、元のアークの性格を知らない老齢の男性が心配そうに話に入ってきたので、やんわりと話を逸らす事に。


「えぇえぇ、あちらの青年方が"時"を与えて下さいましたのでもう心配は御座いません。
もう間も無く"失った者達も復活出来るやも知れません"。」

「おー、それは良かった。」

「ほぅ、なんとなんと。」

「……。」

「「……。」」

「……。」

「「…え?」」


老齢の男性が何やら引っ掛かる事を言い、ハウンドとノアは思わず思考が停止してしまった。
そんな中、戦闘を終えたアークとハナがやって来て


「はぁ…はぁ…ほら爺さん、追加の"時"だぜ。」

「酷くお疲れの様ですが、少しお休みになられては如何でしょうか…?」

「あ、あぁ…
残っていた分の敵も片付けたし、纏まった量の"時"が確保出来たから少し休ませて貰うよ…」

「その方が良いわ。
技術面は上達してきたけど、体力面を伸ばすのにはそれなりに時間が必要ですから。」

「それじゃあ僕は…」


ハナからもそう促されたアークが下がるのに合わせ、ノアが腰に差していた荒鬼神の柄を握りつつ前に出る。


「『犬姫』の2人はアークとお爺さんの警護に回りつつ最大限の防御を。
ブラッツも直ぐに行動が起こせる様に警戒しておく様に。
ラインハードちゃんも皆と一緒に居て下さい。」


ウォン!
「り、了解しました。」
「さ、お爺さんもっと近くに。」
「はーい(棒)。」
「急にどうしたんだ?」


ノアの行動と発言に困惑しつつも各々行動を開始。アークは<気配感知>の範囲が狭いのか、まだ気付いていない様子。

だが直ぐにその意味が分かる事になる。
遠くからガシャガシャという音を立て、数多くの甲冑が迫って来たのである。


ガシャガシャガシャガシャガシャガシャッ!
ザザザザザザザ…
ヂャラヂャラヂャラ…


一行の進行方向には槍持ちの兵5人編成が4列、その隙間を埋める様に足軽兵が20人と鎖鎌を持った兵が10人。
大方武器封じの要員であろう。

そして大部隊の殆どが火矢を持った兵で、焼け落ちた家屋の上や高台に少なくとも40人程見える。


「お、おい…何だよあの大部隊は…
今までの比じゃ無いぞ…」

「恐らく先程の隊は先遣隊で、確実に仕留める為に本隊が来たのでしょう。
あなたが先程言った様に、圧倒的物量差で押し潰しに来た様です。」

「集団戦は騎士団の訓練でも行ったが数が違い過ぎる…」


現れた敵兵の多さに戦々恐々とするアーク、ハナ、ハウンドの3人だが、更に状況は悪くなる。


「"外なる者共"発見!槍兵突撃準備!
足軽共!抜剣せよっ!」

「「「「「「「「おぅっ!」」」」」」」」

『『『ジャキッ!ジャキジャキ!』』』


時羽軍がこちらを視認すると、警告等一切無く武器を構えだした。
どうやらそのまま戦闘を開始するらしい。


「まぁ皆さん落ち着いて。
皆さんは防御の事だけを考えてて下さい。」

『『ジャキンッ!』』


ノアはいつもの調子で歩を進めつつ荒鬼神を抜く。


「あ、それと、少しの間耳を塞いでて下さい。」

((((((耳?))))))


ノアが耳を指差して塞ぐ様に指示を出す。
一様にノアの意図が分からないながらも全員が耳を塞ぐと


ガキン!

ギュリィィイイイィイッ!


「んぃっ!?」
「「「うぉっ!?」」」
「「うわっ!?」」
「「何だこの音はっ!?」」
「糞っ不快なっ!!」


自身の前で荒鬼神をクロスさせると、刃同士を擦り合わせて大音量の不快音を発生させる。

すると敵兵の多くは突撃体勢を中断して足を止める。


「止め『ィィイイイィ「止」イッ…』!」


大部隊の連中に指示を出していた者が声を荒げて止めさそうとするも、掻き消されてしまい何の意味も成さなかった。


ちなみにこの行動は、<挑発>を発動したノアによる敵視上昇行動である。
これによって全員の怒りの矛先がノアにしか向かなくなる事になった。


結局ノアはたっぷり20秒程掛けて相手(と多少味方にも)に不快音を聞かせる事になるのであった。
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