ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
520 / 1,117
獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

死地からの生還

しおりを挟む
「ッラアッ!」ザバッ!

ザシュゥッ!「がはっ!」ドサッ!


〝おめでとうございます!
足軽兵1体を討伐、報酬として脇差し1本と"4分"を獲得しました。〟


「はぁ…はぁ…4分か、湿気てやがるな…
さ、さて、次はどいつだ!」

「「「「お、おおぅ…」」」」


足軽兵を斬り倒したアークは周囲に居る他の足軽兵に睨みを効かす。
剣の扱いは拙いが、既にアークは足軽兵を6人倒し、現在も精力的に斬り伏せている。


「アーク!まだ無駄に力が入っているから体力消費が激し過ぎます!
私が出ます、あなたは少し休憩を!」

「お、おぅ…頼むわ…」


アークの後ろを着いていたハナが前に出つつ剣を抜く。
現在アーク、ハナ、ハウンドの3人はパーティを組んで次々とやって来る兵を倒している。

所でそのハウンドはと言うと、ハナとアークの更に後方に居るノアと老齢の男性の元に居た。






「うーん…どんな心境の変化か、真面目に戦ってますなノア殿。」

「何か思う所があったのでしょう。
何はともあれ良い傾向ではないですか。」

「あ、あの…御二人は加勢に向かわなくて宜しいので…?」

「大丈夫ですよ。
アークにはハナさんが着いていますし、<気配感知>の範囲内にはあの足軽兵しか居ませんしね。」


ハナとアークの周りを、8人程の足軽兵が居るが、取り敢えず戦力的に問題は無いだろう。

と、そんな事を話していると、肩で息したアークが3人の下へやって来た。


コロ…

「ほら爺さん…少ないが、追加の"時"だ。
長生きしろよ。」

「はは…こんな老い耄れにありがとうございます。」

ガション!チキチキチキチキ…


アークが手に乗せたガラス玉を老齢の男性に近付けると、次々に体内へと吸収されていく。

再び文字盤が出現し、針が大きく動いたかと思うと弱々しかった立ち姿をしなくなり、足腰強くなってしっかりと歩ける様になった。

その姿を見たアークは、満足してハナの所へと向かい始める。


「アークさん。」

「ん?何だノア。」

「剣を当てた直後、追撃を掛ける為に引き戻す動作で余計な体力を使っています。
当てた時の反動を利用すると良いですよ。」


先程の戦いを見ていたノアが助言を出す。
これが以前のアークであれば「うるせぇ!」位の文句を言っていただろうが


「おぅ、分かった、試してみるわ。」


額に汗を滲ませたアークはニッと笑みを浮かべてハナの所へと歩いていった。








~タイトル:『廃城』直後~


「…う、むむむ…」ムクリ…

「お…爺さん、大丈夫なのか!?」

「えぇ、先程に比べれば幾分良くなりました。」


老齢の男性から文字盤が消えた後、ゆっくりとではあるが体を起こし、一行を見やる。


「良かったのですか?私に"時"を与えてしまって…」

「正直賭けみたいな所があったのですが、上手くいって良かったです。」

「まさか相手から奪った時間で回復するとは…
うむむ…何とも不思議な…」


ハウンドが目の前で起こった一連の事象に首を傾げていると



"おめでとうございます!『死地からの生還』を達成しました!

この国は滅亡の危機に瀕しています。
あなた方は敵国の者達を討ち滅ぼし、獲得した"時"を用いて再興を成し遂げていって下さい。

尚、通常1ステージ"2時間"の制限時間が御座いますが、このステージに限り獲得した"時"と同じ時間だけ制限時間が延長されます。

制限時間を過ぎた場合、その段階での達成具合によって最終的な報酬が決定致します。

『復活の兆し』達成へ向け頑張って下さい!"



「…要約すると、"出て来る敵を倒してこの国を復興しろ"って事だな…?」

「まぁ平たく言えばそうなりますね。」

「うーむ…やはりこんなステージがある等聞いた事が無いな…」

「帰ったら王に報告しましょ。」


アナウンスが終了し、各々何と無くこのステージの内容を理解した所でアークが


「…なぁノア…とやら。
今までの数々の無礼、腹立たしい事この上無いだろうが、折入って頼みたい事「良いですよ。」

「え?」


先程までの傲岸不遜な態度は何処へやら。
沈痛な面持ちでノアに何か頼み事をして来たアークの言葉を遮るノア。


「大方"力を貸してくれ"と言った所でしょう?
そもそも自分は本来、"監視"という立場です。
さっきまでのあなたが全くやる気でなかったから強制的にやらせてましたが、自主的な行動を取るのならこちらから何か言う事はありませんよ。」

「じ、じゃあ…」


と言う事で今に至る。

尚、やる気を出したアークだが、剣技に関して拙い部分が多い為、ハナとハウンドを付けて即席の3人組パーティとして行動を取らせる。

老齢の男性は基本的にノアの方で護衛するつもりではあるが、敵の総数が知れない為、準備しておくに越した事は無いだろう。

なので応援として


「ヴァンディットさん、ブラッツ、出て来て下さい。」

ズズ…「はーい。」ズルッ…ウォンッ!

「おわっ!?何だ!?」

「えらい別嬪さんじゃのぅ…」

「私はノア様の従者でヴァンディットと申します。そしてこちらはブラッツ、私の眷属ですわ。」

ウォンッ!


突然ノアの足下からヴァンディットとブラッツが出て来たのだ、アークは驚いて後退りし、ハウンドは無言で目を見開いていた。


「ブラッツ、ヴァンディットさんとお爺さんを警護。向かってくる敵を全て噛み砕け。」

ウォンッ!

「ヴァンディットさんはブラッツに指示を出しつつ、回復ポーション等で3人をサポート。」

「はい。」

 「そう言えばラインハードさんの様子はどうですか?」

「相変わらずです。
ですが以前の話の通りであれば問題は無いかと
…」

「なる程…一先ず呼んでみて大丈夫そうなら同行して貰おう。
ラインハードさん、出て来て貰って良いですか?」


何やら不安要素を持っている様子のラインハードであるが、ヴァンディットとブラッツまで呼んで、1人だけ呼ばないのは気が引ける為呼び出す事に。

すると


ヒュォッ…ズダッ!

「…やっほーノア君、ラインハードちゃんだよー(棒)。」


ノアの影の中から勢い良く飛び出してきたラインハード。「だよー。」と言ってはいるが、声に感情が籠っていないし、抑揚も無い。

実の所、ラインハードは『時の迷宮』突入直後からこの状態である。

何故かと言うと答えは簡単で、"時間の流れが違うから"である。

地上と『時の迷宮』4層とでは時間の流れが40倍も違う。
それは別の場所にあるダンジョン『宝物庫』も同様で、その中から機体を操縦しているラインハード本人と連動が取れず、操縦不可となるのは仕方の無い事である。

なので現在のラインハードは機体内の魔力を使用し、"自動操縦・追従モード"で稼働しているのである。


「一先ずラインハードちゃんもお爺さんの警護で。何かあったら直ぐに知らせて下さい。」

「さー、いえっさー(棒)。」


再び抑揚の無い返事を返されるノアであった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...