ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~中級冒険者試験~

憂鬱

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試験会場で自分の試験の番を待つノアは少し憂鬱だった。

それは何故かと言うと、さっきまで試験会場内の観客席に殆ど人など居なかったハズなのに、時間を追う毎に増えていってる。

更には職員らしき人達の隣に冒険者が付いている事から、恐らく試験を途中で止めてまでこちらに来たのだろう。

だが、見世物的なモノでも見に来ている雰囲気か?と言われればそんな事は無く、皆の目は真剣で、嫌な感じは一切無い。


では何故ノアが憂鬱にしているかと言うと






ドヌッ。

「がふっ!?」ドサッ!

「はい、新人冒険者パーティ『四星の守人』戦闘不能により試験は終了となります。」


試合場の端に立っていた職員が手を上げて試験を止める。
先程ノアを小馬鹿にしていた4人組パーティの実戦試験が今まさに終了した所であった。


「ガッハッハ、筋力、俊敏性共にまずまずといった所だが、スキル頼りな戦い方はあまり頂けないでごわすな。」

「攻撃を繰り出す際に声を発っしない方が良い、君達の様に隙が大きいと、尚更相手に技の出だしを教えてる様なモノでござるぞ。」


地面に踞る『四星の守人』の面々に対し、試験官のゴワスとゴザルは息を切らしていない。

まぁ担当の試験官である2人は元上級冒険者らしいので、当たり前と言えば当たり前な事である。

だが、ゴワスとゴザルは各々の【適正】に備わった能力やスキル等を使用せず、その場から一歩たりとも動いていない。

要は明らかに手を抜いていたのである。

その結果


「各々の連携が上手く取れていない。
周りをよく見ず、ただただ突っ込んでくるだけだから全く脅威にならないでごわすな。」

「中級冒険者になりたいのであれば、せめて1歩位は我らを動かして欲しいものでござるな。
つまり君達は今回の試験は失格とするでござる。」

「くそっ…」
「「くっ…」」
「ううう…」ギリリ…


『四星の守人』の面々も、その程度の連携しか取れていないと分かっているからかとても悔しそうにしていた。

その後立ち上がった『四星の守人』達は、がっくりと肩を落として控えの席に向かっていった。


「「さて…」」

『『ギラッ!』』

「「残すは君だけでごわすな!」ござるな!」

「……。」


ゴワスとゴザル両名のギラギラとした鋭い眼光がノアに向けられる。
これが先程からノアが憂鬱になっていた理由である。

ノアはこの視線の正体を知っている。
これは最近アルバラストの街で数多く向けられた『君と戦ってみたい』と言う視線である。

別に戦うのは構わないが、この手の者は大抵自分が勝つか満足するまで終わらない事が多い。

しかも相手は試験官だ、下手すれば職権乱用で不合格とされるかも知れない。

等と考えていた為憂鬱になっていたのである。





「それではノア様、試合場の方へ!」

「はい…」


だがここからノアの思っていた展開とは違う流れへと変化していった。


「この街の方々、ご起立願います!」

『『『『『『『ガタタッ!』』』』』』』

「へ?」


職員の呼び掛けを受け、観客席に座っていたこの街の住人(試験官や職員)達が次々と立ち上がっていく。
中には小さな子供まで居たりした。

それ以外の冒険者(ちゃっかり席に居たクロラやハクア達含む)、控えの席に着いていた『四星の守人』や【神官】と鬼人の3人組パーティらは何が起こったのか分からず、周囲をキョロキョロと見回していた。


「へ?……え?」

「何がなんだかと言った感じでごわすな。」

「えぇ、まぁ…」

「試験を始める前に″我ら含め皆が″君に伝えたい事がある故、しかと聞いて欲しいでごわす。」

「は、はぁ…」


訳が分からないと言った様子のノアを他所に、ゴワスとゴザルがノアを見据え


「「【鬼神】のノア殿!我等が故郷フリアダビア奪還に尽力して下さり、誠にありがとうございます!」」

「「「「「「「「「「「「「「「「「ありがとうございます!!」」」」」」」」」」」」」」」」」

「…え?えっ!?じゃあこの街の人達って、元々…」


ノアが察した通り、この街は中級冒険者試験・【適正】試験等を専門で行える場であり、戦火となったフリアダビアからの避難民が数多く住まう街でもあった。

当初、フリアダビア奪還は絶望的とされたものの、支援は可能だが、どの国も避難民受け入れまでは手が回らない状態であった。

なのでこの地に街を造り、働き口として中級冒険者試験・【適正】試験等の試験官又は職員として斡旋したのである。

それから暫くしてフリアダビア奪還の報がこの街にも入り、元国民達は湧きに湧いたと言う。

しかも最も尽力したのが、1人の新人冒険者とその契約獣であるから驚きである。

現在は試験官としてこの街に住まうゴワスとゴザルも最初期の奪還メンバーとして最前線に赴いたのだが、圧倒的物量差と凶悪なモンスターの攻勢に押され、敢えなく避難と言う形となったと言う。


「新人冒険者という事は、何れこの地に訪れるだろうと思っていたでごわすが、これ程早くに会えるとは思ってもみなかったでごわす!」

「この街の者は皆君に礼をしたいと思っていた、だが寄って集られると迷惑を掛けると思ったでござる。
だからこの場を借り、こうして一堂に会したのでござるよ。」

「そうでしたか…
ですがあれは僕1人だけでは…「それでも、でごわすよ。」

「本来あの地には新人冒険者である君が派遣される事など有り得ないのでござる。
我らもあの地で奮闘したから分かるでござる。」

「…分かりました、素直に礼を受け取らせて貰います。」


今この場に居るのは自分のみ。
またあちこち旅をして、当時の参加メンバーに出会ったら「皆感謝していましたよ。」と伝えよう。

そう考えるノアであった。


「そんな君にこんな事を言うのは甚だおかしいとは思うが、試験とは別に我々と真剣勝負をして欲しいでごわす。」

「んぇ?」

「フリアダビアでは我ら含め観客席に居る住人達…元上級冒険者や中級冒険者等が共に手を組み、大規模なレイドを組んで防衛…あわよくば奪還に勤しんだ。
…だが圧倒的物量差の前では防戦一方で防衛すら叶わなかったでござる。」

「手を抜いたつもりは無い、皆命を睹す覚悟で奴等に挑んだ、だが状況は我らが思っている以上に地獄だった…
そんな地獄に新人冒険者である君が派遣された直後に状況が好転し、奪還が成された。
当初は皆と喜びを分かち合ったが、日が経って冷静になってくると皆が思う様になったのでごわす。
″あの地獄を打破した冒険者は一体どれ程の強さなのか″と「良いですよ。」

「「え?」」


思ってもみなかった、と言った様子のゴザルとゴワス。


「いやだってさっきからお2人、滅茶苦茶ギラギラしてましたし、そんな流れになるんだろうなぁと思ってました。
今までも″戦いたい″って言ってくる人は数多く居ましたが、理由としては数百倍真っ当です。」

「「ほ、本当でごわすか?」ござるか?」

「あ、でも試験はしっかりとお願いしますね?」

「「も、勿論でごわす!」ござる!」
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