ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
605 / 1,124
獣人国編~御前試合の代表決め~

激痛

しおりを挟む
<発勁(はっけい)>…全身の筋肉や体重移動などを駆使し運動で発生した力や体重をそのまま相手に与えるスキル。

と言っても、一定以上のダメージを出したり身に付けるまでにかなりの反復練習と時間を労する為、玄人向けのスキルと言える。



ズリリ…

「ガフッ!…くそ…<発勁>とはまたニッチなスキルを持ってやがるな…
お陰で反応出来ずに諸に食らっちまったぜ…ゴホッ!」

ザリッ!

「力が強いだけであれば技術で凌駕すれば良い…技術を持っている奴には圧倒的な武力で凌駕すれば良い…
どちらも持ち合わせている奴にはスピードで翻弄すれば良い…
だがこれら全てを持ち合わせている【鬼神】には…?
そんな相手だな、全く…」


観客席との仕切りまで吹き飛ばされたゴファンは、何とか受け身を取った様で大事無い様子。

だが彼の腹部には今しがた付けられた3発分の拳の痕がくっきりと、そして痛々しく残っていた。


「で?俺が体当たりで【鬼神】殿から攻撃を引き出してやったが、対処出来るか…?」

「…<発勁>は予備動作が見えた。
…が、ゴファンを地面に叩き付けた時の攻撃は正直見えなかった…」

「あぁ、同じく…
…取り敢えずは食らうの前提で、その後の受け身や受け流しをしっかり『受け流せるもんなら流してみろ。』

「「っ!?」」


闘技場中央に居たハズのノアが音も気配も立てずにいつの間にか2人に接近していた。
これは<気配消失>と<忍び足>、<縮地>を併用して行った為である。


ヌゥッ…

「っ!」ガッ!ガシッ!

「待て!ゴフゥ!」


ノアが徐にゴフゥに右手を伸ばす。
あまりにもゆっくりな動作であった為、思わずゴフゥは伸ばされた腕を掴んでしまった。


にぃい…

ガシッ!ギュゥウウウウッ!

「あっ!?ぐぎゃあ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″っ!?」


笑みを浮かべたノアは、上半身裸のゴフゥに、まるで服の襟を掴むかの様に胸板の皮膚を思いっきり掴む。

ゴフゥ自身も<激痛耐性>を持っていたとは言え、信じられない力で皮膚を掴まれると言った経験をした事が無く、あまりの激痛に思わず悲鳴を上げてしまった。


「あ″あ″あ″あ″っ!!」

「おぉおおおおおっ!<三連撃>ぃっ!」ボボボッ! 

ガッ!バシッ!ガシッ!「んなっ!?」

ガゴッ!『『パガァッ!』』「ぅぶっ!」


悲鳴を上げるゴフゥを助けるべく、<三連撃>を発動した上で強烈な蹴りを繰り出したゴファン。
だが全弾腕で止められただけでなく、顎に一撃、胴体に2発の<発勁>を打ち込まれ、再びぶっ飛ばされてしまった。


「ぐっ…あ″があ″あ″…『ゴフゥさん。』…っ!?」

『受け流してみろぉっ!』ダガァンッ!

「…か…は…っ…!っがぁあっ!」

ドガッ!


不意に呼び掛けられたゴフゥは、ノアに掴まれたまま思いっきり地面に叩き付けられた。
まるで投げ捨てられた人形の様に地面を跳ねたゴフゥは、激痛から解放された瞬間修羅の様な表情をし、体勢を整えつつノアの肩に<渾身>と<蹴撃>を乗せた踵落としを繰り出した。


ガシッ!

『!』

「ッリャァアアッ!」ギィイイッ!

ガゴォオッ!!


その流れで首に足を掛けて固定した後、ノアの顎目掛けて気を練り込んだ膝蹴りを叩き込む。
所謂『虎王』と言う技である。

こんな物、普通に使用すれば決定打となる一撃であるのだが


…コキッ…

ガシッ!ズダァンッ!

「あぐっ…」


ノアは首を軽く捻ると、ゴフゥの絡まった足を掴み、そのまま地面に叩き付ける。


ズンッ!「ぬっ!?」バッ!
バッ!「ふっ!」ズズンッ!

バガァッ!!

「うぉおあっ!」


眼下に居るゴフゥの顔面目掛けて地面にめり込む程の拳を打ち付ける。
これを首を振って何とか回避したが、地面をひっぺ返して纏めて吹き飛ばされた。


ズンッ…ズズンッ!

「「「「「「オォオオオ…(観客)」」」」」」


″『な、何という息つく暇も無い程の攻防!
【鬼神】に至っては防ぐ事すらせず、超犀野人2の2人は彼からの攻撃に対し防御は意味を成していません!
誰が言ったか【鬼神】との対峙はまるでレイドボス戦!
誇張でも何でも無く正にその通り!上級冒険者である2人が全く手も足も出ません!
つーか幾らなんでも強すぎだろ【鬼神】!』″





パラ…パラパラ…

「おーいゴフゥ大丈夫か…?
胸に手の痕がくっきり付いてるぞ…?」

「…そう言うゴファンだって拳の痣が5個も付いてるだろ…?
…にしても想像以上の強さだ、レイドボスの方がマシとすら思う位だ…」


ゴフゥの胸板にはノアに掴まれた時に出来た手形がくっきりと浮き出ており、血が滲んでいてとても痛々しい。


「どれ位持つか分からないが、俺達も【獣化】して少しでも防御を固めた方が良いだろう。」ゴギンッ!

「あぁ…皮膚を掴まれて好き勝手されるのはもうゴメンだ…」メキメキ…


2人は闘技場中央に佇む人生最強の敵へと再び挑むべく【獣化】を開始した。





「「「「「オォオオオオオッ!(観客)」」」」」


″『お!おおっ!どうやら超犀野人2の2人が【獣化】を行う様です!
と言うかこの状況であればそうせざるを得ないでしょう!
犀獣人の【獣化】は攻撃力・防御力を著しく上昇させるモノとなります!
その代わりスピードが通常時よりも下がる為、こう言った試合や、冒険者稼業では却って弱体化に繋がってしまうので使わずに一生を終える者も居ります!ですが今!この場では使用すべきです!
相手はあの【鬼神】なのだから!』″






『『メキメキメキ…』』

「うおオォオオオオオッ!」

「ガァアアアッ!」

『……。』


巨躯であったゴフゥとゴファンだが、【獣化】により更に筋肉が肥大化し、高密度となっていく。
その上犀獣人であった為、他の獣人よりも硬質の皮膚を持っていたが、更に硬度を増し、まるで磨いた金属を思わせる光沢のある皮膚へと変化していった。

特に肩と太腿の筋肉量が増加し、首が胴体と一体化したのかと言う位太くなった。

他にも肩甲骨まで伸びる長い金髪が更に光量を増し、何とも目に優しくない物に変化している事等が挙げられるが、最も大きく変わった点と言えば2人の額から生えた太く長い一本角であろう。


『おー、まるで鬼人族みたいですね。』

「だろう?
だが鬼人族の角は骨で、犀獣人のは皮膚の一部が硬化したものだ。これ豆知識な。」

「今はそんな事どうでも良いだろう。
…【鬼神】殿、これが俺達が今出せる全力だ。
さっきから全力で君に挑んでいったが、次が本当の最後だ。
どうか君も全力で向かってきて欲しい。」

「この状態の俺達はそこらの重鎧をも凌ぐ防御力を持っているし、攻撃も一味違う。
勝てはせずともせめて一泡位は吹かせてやるからな?」

『存分に。』 
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、 成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。 守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、 そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。 フレア。 彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。 二人の出会いは偶然か、それとも運命か。 無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、 そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。 孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

処理中です...