ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~全ての始まり~

10年前、全ての始まり。~終わりの準備~

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チュン、チュンチュン…

「ベルー、早く起きなさーい。
向かいの家のアモス君はもう起きて家の手伝いしてるわよー。」

「…むにゃむにゃ…はーい……ぐぅ…」

ガチャ

ドタドタドタ…

「ベルーおねぇちゃん、おかあさんがよんでるよ、おきておきて。」

「…むにゃー、あと5ふん…」

ユッサユッサ…

「あしたのおまつりのじゅんびするってきのういってたでしょ。」


向かいの家に暮らす奴隷獣人家族の仲の良い男の子アモスが、ベッドの中で寝惚け中のベルーの元にやって来た。



ベルーは虎獣人で、綺麗な毛並みの元気な女の子である。
アモスよりも1つ上なのでお姉ちゃんではあるが、少し大雑把で朝に弱い。
家族や仲良くなった者と接する時は語尾に「にゃ」が付く。

アモスは狼獣人で、綺麗な白い毛並みの大人しい男の子である。
大雑把な性格のベルーと一緒に居るからか、年下ではあるもののしっかり者である。
週に6回はベルーを起こしに来る。



ガバッ!

「そうだった『ゴッ!』(ベルー)」

「「………っ!…っ!(声にならない声)」」


今日の予定を思い出したベルーが勢いよく起き上がると、起こしに来たアモスの顎とごっつんこ。
一先ず目を覚ます事には成功したのであった。





「はーい、それでは広場の周りの家々に皆で作った花飾りを飾りに行きましょうねー?」

「「「「「はーい。」」」」」


スパルティアの正門と王城との凡そ中間地点には馬車が2台並んで通っても余裕がある程の広場があり、中央には噴水が設置されている。

水回りは手入れを怠ると直ぐに濁ったり臭いを放ったりする。

広場の噴水は清水の如く澄んだ水が常時流れている為、その手入れの行き届き具合が窺える。


「アモスくん、あっちにかざりにいこ!(ベルー)」

「うん!(アモス)」

…ラガラ…


ベルーとアモスは通りに面した家の方へと向かっていく。
すると通りの奥の方にある【錬金術】学舎から荷馬車が走ってきて


ガラガラガラガラ!

「ベルーあぶない!(アモス)」グイッ!
「にゃっ!?(ベルー)」


寸での所でアモスがベルーの腕を引っ張った事で荷馬車に轢かれる事は無かった。
だが城の人間が降りてきて2人の前に立ちはだかる。


「おい!」

「「ひっ!」」


明らかに2人が悪いのだが、2人が怯えているのには他にも訳があった。

それは、2人の前に立ちはだかった男が″獣人を毛嫌い″している者達の一派だからであった。

彼等は気付いていないが、獣人は気配に敏感で、例え隠れていたとしても気配や雰囲気を察知してしまう為、普段彼等が隠れて愚痴やサボリをしていたとしても容易に分かってしまうのである。

特に子供の場合特に敏感で、上っ面は笑顔であってもイライラや陰湿な雰囲気を感じ取ってしまうのである。


「ガ…ダメじゃないか、急に飛び出して…
轢かれでもしたらどうするんだ…?」

「「ご、ごめんなさい…」」

「あ!2人共大丈夫!?」


荷馬車の男は厳しくも優しい言葉で2人を叱る。
すると丁度そこに引率の先生が慌てた様子で2人の下へやって来た。


「貴さ…お前が引率か!
子供達が無事だったから良かったものを、ちゃんと見張っていないと危ないであろう?」

「え…?
あ、はい!申し訳ありませんでした!」


男の言っている事は至極真っ当なのだが、引率の先生はその一連の言動に違和感を持っている様子。


(あ、あれ?
いつもなら子供達のボタンが1つ掛け違ってるだけでくどくど文句言ってくるのに今日はやけにあっさりしてる…?
やだ気持ち悪い、お祭りの前なのに雨を降らさないでよ…?)


獣人を毛嫌いしている者達はツェドに見えない所で愚痴を言うか、僅かなミスを犯した奴隷に文句を言ってウサを晴らしていた。

今日はそういった事が無かったので、引率の先生は逆に良くない事が起こるのではと訝しんでいた。

だが獣人を毛嫌いしている者達はそんな事露知らず、計画に滞りが出ない様に心掛ける事で精一杯であった。


(このガキ共…荷の中には横流しで追放された奴が隠し持っていたハイマナポーションが入っているんだぞっ!
荷馬車に衝突して荷が崩れたり死傷でもすれば騒ぎになって計画所ではないではないか馬鹿者めっ!)

ガラガラガラガラッ!


やはりと言うべきか、上っ面だけ繕って獣人達の事は一切気にしていなかった様だ。
内心では文句を言いまくっていたが、再び荷馬車に乗り込んで王城の方へと走らせていった。

こういった違和感は各所で確認されていたものの、前日にあった追放で懲りたのでは、と思われたらしい。

だがここで運び込まれたハイマナポーションが後に獣人達を窮地に追い込む事になる。





「え?そっちでもそうだったの?」

「あぁ。
いつも誤字脱字、計算間違い当たり前。
指摘したら無茶苦茶不服そうな顔されるのに、今日は何度も読み返して確認作業にあたっていたよ。」

「いつもそれ位気を付けて欲しいもんだぜ。」

「「「「「なぁ。」」」」」


スパルティアは奴隷事業を主としており、外に出て即戦力になる様に戦闘職は実戦を交え、非戦闘職は本職さながら、何なら本職以上に厳しいチェック体制を敷いて行われている。

上記の会話にも出ていたが、誤字脱字、計算間違いは以ての外で、例え字が間違っているとは言え意味の通る文章であったら担当の方で訂正するのでは無く、提出者に突っ返して直させるのがツェドの方針である。

その間、前後にある行程、作業は停止させる決まりとなっている。

つまり計画遂行の為、城内への物の運搬、贄となる奴隷達へ違和感を持たせずに誘い込む為の依頼書等の書類に少しでもミスがあると、ドンドンと遅れが生じてしまうのだ。

この時はそう言った遅れが発生して欲しいものだが、彼等は普段愚痴や文句で回している舌を止め、頭を回してミスや漏れが無いかの確認作業に没頭していた。

その努力を別の方向に回してくれれば、という気持ちは誰しもが持った事だろう。





~王城内~

「え?明日再度調査を実施するのですか?」

「そうだ。
前回の調査で『廃都』方面に繋がる通路を発見したのだ、更なる発見が見込めるだろう。」

「ですが、後日王都から専門の【学者】を要請するとツェド様が仰っていたハズですが…」

「その後にツェド様が″もう少し調査を進め、モンスター生息の有無を確認せよ″と仰せつかっている。」

「地下の祭壇場らしき広場に陣を張り、炊き出し、戦闘職等の者も呼んで万全の体制で挑むぞ。
これはツェド様からの命だ。心して掛かる様に。」

「「「は、はい、分かりました。」」」


報告を受けた各【適正】の者達は、早速その情報を各人に伝達しに向かう。
普段からの教育の賜物か、奴隷達は淀み無く行動を開始し、30分も経たずに天幕や炊き出し用の物資等の運び込みが開始されたのだった。
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