ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~全ての始まり~

10年前、全ての始まり。~外遊~

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~ツェドの私室~


「それで、地下の遺跡の調査はどうだ、進展はあったか?(ツェド)」

「いえ、何分技術力が桁違いですからね。
文字の様なモノも専門的な【学者】を派遣しないと解読出来ません。
分かった事といえば、地下に広がる大きな部屋は何やら儀式を執り行う祭壇場である事。
そこから奥に繋がる一本道は『廃都』まで続いている事。
そこにある何かの施設に繋がっている事、位しか分かりませんでした。」

「ふむ…左様か
まぁ【学者】と言っても主に座学ばかりで実地訓練等は行ってこなかったからのぅ…。(ツェド)」


3日程掛けて行われた地下空間の調査を終え、監督者となっていた者から報告を受けるツェド。
は顎に手を当てて暫し思案していると


「よし、明日の外遊を終えた後、王都から【学者】を要請して調査を依頼しよう。
良い経験になるだろうからその際。ウチの【学者】らも同行させる事にしよう。(ツェド)」

「っ…そ、そうですか。
分かりました、その様に調整致しましょう…」

(…ん?(ツェド))


いつに無いやる気を見せていたので、こちらもその想いに応えてやろうと思い予定を立てたのだが、監督者の男性の表情に僅かに焦りの色が浮かんでいた。


「さて、外遊には明朝ここを発ち、4日後には戻ってくるだろう。
明々後日の祭に顔は出せんが、まぁ仕方無いと割り切ろう。(ツェド)」

「か、畏まりました。」ススス…


そう手短に伝えたツェドは早速外遊の準備に取り掛かる。
恭しく頭を下げて私室を出た監督者の男性は、額に汗を滲ませて足早にその場を後にした。





~陽の落ちた城下・路地~

ペラ…

″例の件は明々後日の祭の日に行おう。
各々準備を進めろ。″

ペラ…

″了解。
奴隷は300人も居れば足りると思うが、不足する事も考えて横流しがバレて追放されたジーノが隠していたハイマナポーションを手中に収めてある。それを用意しておこう。″

ペラ…

″了解。
300人の奴隷はどうやって集める?″

ペラ…

″【学者】と【魔法使い】、後は祭絡みの何とか適当な事を言って集めよう。″

ペラ…

″了解。『隷属の首輪』は用意してあるか?″

ペラ…

″急拵えだが5個作ってある。
喚び出した存在を捕らえ、我らで使役しよう。
何てったって″王を冠する存在″だ。″

ペラ…

″我らをあの″人間擬き″以下の存在として虐げる愚王に取って変わり、我らが″王″となろう。″

ペラ…

″やはり我らの様な高尚な人間こそが上に立に相応しい。″

ペラ…

″人間こそ至上なり。″

ペラ…

″人間こそ至上なり。″


路地に集まった男達は、実地訓練として潜んでいるかも知れない【諜報】や【忍】を恐れ、一言も発する事無く紙片でのやり取りを行っていた。


~一旦回想終わり。~


「というのを、後になって聞いてもいないのに ベラベラと偉そうに喋っておったよ。
「分からなかったろ?」「気付かなかっただろう?」ってな。(ツェド)」

「て言うか、地下空間って元々スパルティア所有の物とかじゃなかったんだ?(バラス)」


話を黙って聞いていたバラスが地下にあるであろう空間を指差してツェドに質問を投げ掛けた。

大昔は諍いが絶えなかったらしく、てっきり過去のスパルティア人が掘り抜いて避難所等に使用していた物だと思っていた。


「あぁ、スパルティアの蔵書を見て貰っても構わんがそれらしい記述は一切無い。
そもそも大昔のスパルティア人には″逃げる・撤退″の文字は無いからな。(ツェド)」

((((攻撃一点の脳筋戦略って事か…))))


非常に戦闘力に秀でていたと言うスパルティア人。″スパルタ″と言う語源になる程の強者だったのは伊達じゃない様だ。


「…でだ。
確かおヌシが″森の番人レント・レアナ″の討伐で近郊に来ていたのはこの頃じゃなかったか?(ツェド)」

「え?…あぁ、外遊に向かう直前だったからその辺りだろうな。
当時は俺が率いた『極大射程』と妻のアミ率いる『死屍累々』の精鋭約20人で滅びの森近傍で野営を張ってたかな。
朝早くから周辺の木を伐採して″森の番人レント・レアナ″を誘き出そうとしてたんだ。(レドリック)」


レドリックも顎に手を当てて当時の事を思い出す。


「何じゃ、遠近最強格の2大クランが夫婦じゃったんか?
有名所に挟まれるとは…間に産まれる子供はさぞ肩身の狭い想いを「うるへー、人の家庭環境に文句言うない。
良いから続きを話してくれっての。(レドリック)」


ジト目でツェドに問われたレドリックは、変な方向に向かい掛けていた話を戻す事に。

ちなみに、肩身の狭い想いをしていると思っているレドリックとアミスティアの子供は、この国の行く末に大きく関わっていた事を、ツェドはまだ知らない。


「まぁ良い、話を戻すわい。
翌早朝馬車に乗り、スパルティアを発つ際に儂は滅びの森で伐採作業に勤しんでおるおヌシ達を見ておる。(ツェド)」



~回想再開~ 


ガラガラガラ…

「ふむ、レイドパーティか。
確か獣人国側から通達が来てたな、″森の番人が出た。″と。その討伐隊の様だな。(ツェド)」

「えぇ、何でも『極大射程』と『死屍累々』と言う名の知れたクランに御座います。」

「あぁ、【神出弓士】と【殲滅剣士】とか言う聞き慣れぬ【適正】持ちをリーダーとするクランか。
いつかウチに顧問として参って欲しいモノだな。(ツェド)」

「一応打診してみましょうか?」


早朝、まだ陽も上らぬ深夜3時に目を覚まし、数人の【騎士】奴隷と城の者達に声を掛けて静かに馬車に乗り、従者2人と共にスパルティアを発ったツェド一行は南方を目指す。

大体昼頃までは馬車に揺られる事になるので、仮眠を取った方が良いのだが、ツェドは馬車の窓から見える風景や建物、冒険者やその装備に目を凝らし、如何にスパルティアの教育に取り入れるかを考えていた。

国が違えば建物の造り等も変わってくるし、冒険者の装備を見れば最新の流行等もある程度は分かる。

自ら外遊に赴き、見聞を広めているのは国に暮らす奴隷達の事を思っての事もあるが、自身が持つ情報、経験の更新でもあった。

幾ら自身が推し進めたい教育方針があったとしても、それが世間と大きくズレているモノであった場合、いざ修了して外の世界に飛び出した時に奴隷達は路頭に迷ってしまうだろう。

故にツェドは外遊に向かう際馬車に乗っている間はひたすらに外を眺め、時には従者の者達と議論を重ねたりしている。

そんなツェドに従者達は嫌な顔1つせず、忌憚のない意見をツェドにぶつけている。

そんなこんなで、最初の外遊先に到着するまでの間馬車の中では白熱した話し合いが行われるのであった。


スパルティアでは最悪の計画が着々と進んでいる事も知らずに…
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