ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~

解放

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【…と、少し話過ぎたな。
我らについての詳しい話は、地下から逃げ延びた者達が話してくれよう。
俺は新天地へ旅立つのでな。】


『あ、待

ボッ!

「待てぃ、そこな怪しき者よっ!(クリストフ)」


未だ爆煙立ち込める中、ノア達の後方から何かが放たれた直後に傷だらけのクリストフとナサケが駆け込んできた。

どうやらクリストフは、槍状の物をエボル・バトフライの上に立つ【魔王】アクロスに向けて放った様だ。

だが


パキョッ!

【…少なくとも人間サイズのキノコに″怪しき者″などと言われる筋合いは無いな。】


容易く槍状の物を手で払われ、クリストフの攻撃はアッサリと処理されてしまった。





「ぐぬぬ…(クリストフ)」

『…クリストフ、ナサケさんを庇ってくれてありがとう。
すまないな、手加減出来なくて。』

「何を仰います。この位怪我の内に入りませぬぞ。(クリストフ)」


クリストフは到着早々ノアから謝罪を受けたが、本当に痛覚が無い様で全く気にする素振りを見せなかった。

ナサケは、自分以外が重症である事に少し負い目を感じている様であった。





【おや?先程逃げ延びたというのに、性懲りも無くまた戻ってきたのか?】


「…異世界の【魔王】よ!″先程″の話が本当であれば全世界が貴様の敵となるのだぞ!



【″考え直せ″、か?
人間を滅ぼす為に【魔王】として産み出されたと言うのに、その目的を達成出来ぬまま、全てを捨てて1からやり直せるとでも?
そんな事では、ここまで尽力して死して逝った者達に顔向け出来ん。
考え直すのは達成した後にでも考える事にしよう。ではな。】


「待!」


今度こそとばかりに【魔王】は身を翻して一同の前から姿を消そうとしたが、ナサケは尚も説得を試みようとする。




【エボル・バトフライ″放卵″の準備を始めろ。】

[ギギギギギ…]

『『『『『グヂュグヂュグヂュ…』』』』』


「なっ!?(ナサケ)」


【魔王】アクロスが足下のエボル・バトフライに何やら呼び掛けると、巨大な翅の全面が変化を開始。

通常蝶の翅には鱗粉が備わっているものだが、エボル・バトフライの翅には、″球状″の物体が次々に形成されていった。


「な、何


【一言も喋るな。
今このエボル・バトフライの翅に夥しい量の″卵″を出現させた。
次に何か喋れば、これらの″卵″を半径10キロメルの範囲内に拡散させる。
そこの少年はエボル・バトフライに植え付けた″造魔核″を知っている様だから皆まで言わずとも分かるだろうが、″コイツ″が″この数″増える事になるぞ?】



エボル・バトフライ…通称″進化の蝶″。
本来は翼長30セメル程の少し大きめな蝶なのだが、″極限環境下(超高温・超低温・無酸素・真空等)で生存する為、自身の身体を造り変える″事が可能で、その場所場所で違った特性のエボル・バトフライを見る事が可能。

今回の場合、そんな特性を持った蝶エボル・バトフライに″造魔核″を搭載した事で【魔王】アクロスが新天地に向かう為の足、後に″苗床″として活用する為に造り出された。



たった今翅の全面に出現した″卵″だが、その半透明な球体の中には既にエボル・バトフライの幼体らしき黒い紐状の生き物が蠢いていた。


【今コイツは俺の制御下にある故、このまま静かに出立を見送ってくれれば″放卵″しないと誓おう。
だが、時間稼ぎと取れる説得や邪魔立てを続けると言うなら容赦しない。
即高高度まで上昇して広範囲に″放卵″するから覚悟しろ?】


〔『……っ…』〕
〔……。〕
『……っ』
「……っ!」
「………」


本当に【魔王】が″造魔核に汚染された卵を放卵″しない保証は無いが、その場に居た全員は従わざるを得なかった。

だがノアは。【魔王】の言動から″従っていれば最悪の行動は取らない″と漠然と感じ取っていた。

それはノアの持つスキル<虫の知らせ>が一切反応していなかったからであるのだが、殆ど″勘″と言って差し支えないモノであった。


【賢明な判断、感謝する。
元居た世界の人間はいつも感情に身を任せた″交渉″とも取れない行動を取る故、強攻策を取らせて貰った。
その代わりと言っては何だが、少し情報を与えよう。】


(((〔『〔情報…?〕』〕)))


【我らはこれより南にある″南獄大陸″へと向かい、そこを今後の活動拠点とする。
近くにはドワーフの暮らす『フェレイロ』があるが、戦争を吹っ掛けられない限りは友好な関係を築こうと思っている。
そこで暫くは地固めに取り組もうと思っているが、″人間による排除行動″が行われた場合、全力で応えようと思っている。以上だ。】

(((〔『〔……〕』〕)))


ここで下手に行動を取らずに【魔王】からの譲歩に応じた事で、今後の活動予定を自ら語ってくれた。

すると最後に【魔王】アクロスはノア達の方を向き


【そこな巨躯の海洋種よ、今日の国交式典御祝い申し上げる。
獣人国とは良好な関係を築ける様願っているが、人間との付き合いは慎重を期すると良い。
人間と関わった事で絶滅の危機に瀕した種族からの忠告だ。】


〔『……っ…』〕


【″停止″。】










気が付くと、一同の目の前から【魔王】とエボル・バトフライは忽然と姿を消しており、周囲一帯には静寂が広がっていた。

まるで今まで何事も無かったかの様な静けさであったが、焼け野原となり荒れ地と化した大地が広がっており、先程までの出来事が嘘では無い事が感じられた。


『『ドカッ!』』

『…っ痛ぅ…』

〔はぁ…〕

『『『ズズゥンッ!』』』

〔『…やれやれ…だな…』〕

「大丈夫ですか皆々様?(クリストフ)」


そしてずっと気を張っていたからか、今頃になって諸々の痛みがぶり返して来た為、思わず座り込んでしまった。


「…困った事になりましたな…
【魔王】の登場、しかもそれが異世界の…明らかに未来の存在とは…(クリストフ)」

〔『…一体奴は何だ。
廃都の地下で何を見聞きしたのだ?』〕

「その前に情報の整理をさせて下さい。
ツェド殿からの話と整合性を取らねば…
それにまずはリヴァイア殿や獣人国国王等、関係各所への説明が第一です。(ナサケ)」

〔『む…そうだな、済まん…先走ったわい。』〕

『…一先ず一度獣人国に戻りましょう…
皆心配してるでしょうし、正直怪我を早くどうにかしたいですしね…』

「そういえば獣人国は無事で…
まぁ皆さんが戻ったから大丈夫でしょう。(クリストフ)」


【魔王】が新天地である″南獄大陸″へと移動した為、一同は獣人国へと戻る事に。

ナサケの話では、国王にいの一番に報告、後日王都から調査隊を派遣して貰うそうだ。

″【魔王】出現″の報は全世界に轟く事となるのであった。


(『…そういや、【鬼哭崇崇】って解除したか…?』)

(『…あ…』)
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