ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
794 / 1,117
獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

ふがっ…

しおりを挟む
獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~:タイトル『試合開始』より抜粋。


「さぁさぁ賭けの始まりだよ!
『海洋最強種のエルダークラーケン』か、『フリアダビアの英雄【鬼神】のノア』かっ!」

「エルダークラーケンに焼肉定食5人前。」
「エルダークラーケンにドラゴンステーキ!」
「【鬼神】には申し訳無いが、エルダークラーケンに酒3樽で。」

「おいおい!全員がエルダークラーケンに賭けちゃ、賭けにならねぇだろ!」


※獣人国では金品での賭けは禁止されています。


「それじゃ俺は賭けを成立させてみようか。(???)」

「お、気っ風が良いねぇ!
で?どちらに賭けるんだいおたくは。」

「そりゃ…『引き分け、もしくは決着着かず』だ。(デミ)」

「「「「「はぁ?」」」」」


スロア領の若き領主、デミ・スロアからの提案に口をあんぐりと開く一同。


「おいおい兄ちゃん、賭けを成立させてくれるのは助かるが、幾ら【鬼神】でもあんなデカいのとは勝負にならんて。」

「そう思いたいんだが、彼が一方的に負ける姿が想像出来ないし、なーんかイレギュラーな事が起こりそうなんだよね。(デミ)」





~んでその日の夜・スロア領~


「「「「「「「「「「「「「「わぁ~っ!(子供の獣人達)」」」」」」」」」」」」」」

「さ、色々あって御馳走が確保出来たから、皆でお腹一杯食べよう。今日は獣人国でお祝い事があったからね。
まだまだ500枠アイテムボックス2つ分位の料理があるから、領民達も気にせず飲んで食べて日頃の労を労ってくれ。(デミ)」


スロア領、デミの邸宅前の広場には所狭しと大量の料理が並べられ、それを健康体となった元奴隷の獣人の子供達が目を輝かせて眺めている。

それを領民達は暖かい目で眺めていたが、誰かしらが手を付けないと子供達も手を付けなさそうだったので、デミのパーティ『新鋭の翼』のリナ、ミミ、ララ、ガドラ、ノンが子供達の手を引いて連れ立っていった。

するとそこから各所で飲み食いが開始されたのだった。


「…当たりましたね…(ローザ)」

「…当たったな…
いやー…まさか本当に『決着着かず』になるとはな…(デミ)」

「しかもそのまま防衛戦に突入し、被害0のまま終結させるとは…また彼の名が広く知れ渡りますね…(ローザ)」

「一体何をやったんだろうな?
とんでもない爆発で、ここまで揺れが来たらしいしな。(デミ)」

「恐らく御前試合の対戦相手であるエルダークラーケンが放ったモノではないでしょうか?(ローザ)」

「まぁ数日以内に何かしら報せが届くだろう。
彼に会いたかったが、獣人国に戻ってくるなり崩れ落ちる様にぶっ倒れたと聞く…
一言声を掛けたかったが仕方無いな…(デミ)」

「『稼がせて貰ったぜぇ!』とかですか?(ローザ)」

「お前俺を何だと思ってやがる…?(デミ)」


和気藹々と本日発生した擬似的大氾濫について話す【戦闘執事(バトラー)】のローザとデミ。

彼の言う通りこの日に発生した出来事は3日後に知らされる事になったが、″ある一文″が各方面に衝撃を与える事となる。

それは勿論″【魔王】出現″である。





~龍宮城・広場~


ズズゥンッ…

〔『ふぅ…』〕

『大丈夫ですかなエルダークラーケン殿…?』

『海洋最強種たる頑強な甲殻をいとも容易く突破する超技術を所有しているとは…
いやはや【魔王】とは恐るべき存在でございますな…』

〔『あぁ…
<人化>形態であったとはいえ、こうも易々と突破されるとは思ってもみなかった…
それに奴等は不完全とはいえ″時を操る能力″を持っていると思われる…』〕

『と、″時″を!?
つまりリヴァイア様と同等の力を保有しているという事ですか?』

〔『いや、全くの別物だろう…
リヴァイア殿は、莫大な魔力を用いて独自の空間魔法を展開し、他者をその空間内に取り込む事で化膿としている。
だが【魔王】やその仲間が行ったモノはそう言った魔力を糧にした類いのモノでは無く″技術″によるモノだろう、一切魔力の反応を感じなかった。』〕

『『うむむ…』』


龍宮城最深部に降り立った<人化>形態のエルダークラーケンの下に各種族の長が集まってきた。

話の中心はやはり【魔王】で、地上よりも技術力が進んでいる海洋種を脅かす脅威となる事に、各種族の長は頭を悩ませていた。


『…してその【魔王】は何処へ…?』

〔『分からん…
いつの間にか忽然と姿を消しており、行方は不明。暫くは様子見となるだろうな。』〕


【魔王】は現在行方不明となってはいるが、″南獄大陸″と言う場所は分かっている。
だが、海洋種達は地上でのその呼び名(地名)は知らない為、暫くは情報収集に重きを置く事になるだろう。

すると、とある種族の長が


『…此度の国交式典…最初は否定しておりました…地上の者よりも武力があり、技術力も抜きん出ている。
今更弱き者共と交わって何があるのだ、と。
だがこういった時は″情報力″に欠けてしまいますな…』

〔『古代なら武力だけで強者として君臨出来る。
現代でも技術力が上なら最先端を行く事が出来るが、我等よりも個が多い地上の者なら素早い情報力の伝達によって直ぐに対策を取られてしまうだろう。
そして今日<人化>形態とは言え、地上に住まう者の中に、我の命を脅かすやも知れぬ存在が居ると広く知れ渡る事になったであろう?
お主の様な者がその様に考えを改めてくれただけで此度の式典は実りあったと言えよう。』〕


強大な力を持つが故の驕りから、外界との交わりを断っていた事から持ち上がった今回の御前試合だが、結果から言えばそういった者達の意識が少しでも変わったのは確かであった。


『…そう言えば例の人族の少年はどうされたのですか…?』

〔『諸々の事柄が終わった後、獣人国に戻った瞬間に気を失ったらしい。
後の事をリヴァイア殿や街の者達に任せて一足先に戻ってきた、と言う訳だ。』〕










~獣人国・早朝~

スヤァ…

「ふがっ…『ビクンッ!』あ、あれ?ここ…あ、宿か…しまった完全に気を失ってたな…
…夕が…いや朝方か…
うわぁ…半日も寝てた『ガタンッ!』うおっと!」

ドサッ!


獣人国のとある宿で寝ていたノアが不意に目覚めて起き上がろうとしたが、体がガチガチに固まっていた為、ベッドから落ちてしまった。


「痛てて…いやー…体が固まってるし重いなぁ…
でもこれが【鬼哭崇崇】の反動?
思ったよりは軽いかな…?
…気絶するのはマズイけ『ぐるるるるぅ…』
うわぁ…凄い腹の虫…何処かの屋台で腹拵えして来よう…」

「お早う御座いますノア″様″、よく眠れましたか?(ラインハード?)」

「あ、お早うラインハードさん…
うん、体が固まる程ガッツリ…ん?
ノア″様″…?」


床から起き上がると、いつの間にかラインハード(?)が近くに立っており、ノアに朝の挨拶をしてきた。

だが少し違和感があった。

ラインハードはノアの事を、″ノア君″もしくは″ノアさん″と呼ぶのだが、″ノア様″と呼ぶ事は一切無かった。

なので、ふと気になったノアがラインハードの顔を見上げてみると、そこには″無表情″のラインハード(?)が立っていた。


(あ、あれ、怒ってる…?
もしかしてズタボロになって帰って来たから流石に怒ってるのかな…?
ねぇ鬼神、何か知ってる…?)



(あれ?鬼神?)
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...