ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

ふがっ…

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獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~:タイトル『試合開始』より抜粋。


「さぁさぁ賭けの始まりだよ!
『海洋最強種のエルダークラーケン』か、『フリアダビアの英雄【鬼神】のノア』かっ!」

「エルダークラーケンに焼肉定食5人前。」
「エルダークラーケンにドラゴンステーキ!」
「【鬼神】には申し訳無いが、エルダークラーケンに酒3樽で。」

「おいおい!全員がエルダークラーケンに賭けちゃ、賭けにならねぇだろ!」


※獣人国では金品での賭けは禁止されています。


「それじゃ俺は賭けを成立させてみようか。(???)」

「お、気っ風が良いねぇ!
で?どちらに賭けるんだいおたくは。」

「そりゃ…『引き分け、もしくは決着着かず』だ。(デミ)」

「「「「「はぁ?」」」」」


スロア領の若き領主、デミ・スロアからの提案に口をあんぐりと開く一同。


「おいおい兄ちゃん、賭けを成立させてくれるのは助かるが、幾ら【鬼神】でもあんなデカいのとは勝負にならんて。」

「そう思いたいんだが、彼が一方的に負ける姿が想像出来ないし、なーんかイレギュラーな事が起こりそうなんだよね。(デミ)」





~んでその日の夜・スロア領~


「「「「「「「「「「「「「「わぁ~っ!(子供の獣人達)」」」」」」」」」」」」」」

「さ、色々あって御馳走が確保出来たから、皆でお腹一杯食べよう。今日は獣人国でお祝い事があったからね。
まだまだ500枠アイテムボックス2つ分位の料理があるから、領民達も気にせず飲んで食べて日頃の労を労ってくれ。(デミ)」


スロア領、デミの邸宅前の広場には所狭しと大量の料理が並べられ、それを健康体となった元奴隷の獣人の子供達が目を輝かせて眺めている。

それを領民達は暖かい目で眺めていたが、誰かしらが手を付けないと子供達も手を付けなさそうだったので、デミのパーティ『新鋭の翼』のリナ、ミミ、ララ、ガドラ、ノンが子供達の手を引いて連れ立っていった。

するとそこから各所で飲み食いが開始されたのだった。


「…当たりましたね…(ローザ)」

「…当たったな…
いやー…まさか本当に『決着着かず』になるとはな…(デミ)」

「しかもそのまま防衛戦に突入し、被害0のまま終結させるとは…また彼の名が広く知れ渡りますね…(ローザ)」

「一体何をやったんだろうな?
とんでもない爆発で、ここまで揺れが来たらしいしな。(デミ)」

「恐らく御前試合の対戦相手であるエルダークラーケンが放ったモノではないでしょうか?(ローザ)」

「まぁ数日以内に何かしら報せが届くだろう。
彼に会いたかったが、獣人国に戻ってくるなり崩れ落ちる様にぶっ倒れたと聞く…
一言声を掛けたかったが仕方無いな…(デミ)」

「『稼がせて貰ったぜぇ!』とかですか?(ローザ)」

「お前俺を何だと思ってやがる…?(デミ)」


和気藹々と本日発生した擬似的大氾濫について話す【戦闘執事(バトラー)】のローザとデミ。

彼の言う通りこの日に発生した出来事は3日後に知らされる事になったが、″ある一文″が各方面に衝撃を与える事となる。

それは勿論″【魔王】出現″である。





~龍宮城・広場~


ズズゥンッ…

〔『ふぅ…』〕

『大丈夫ですかなエルダークラーケン殿…?』

『海洋最強種たる頑強な甲殻をいとも容易く突破する超技術を所有しているとは…
いやはや【魔王】とは恐るべき存在でございますな…』

〔『あぁ…
<人化>形態であったとはいえ、こうも易々と突破されるとは思ってもみなかった…
それに奴等は不完全とはいえ″時を操る能力″を持っていると思われる…』〕

『と、″時″を!?
つまりリヴァイア様と同等の力を保有しているという事ですか?』

〔『いや、全くの別物だろう…
リヴァイア殿は、莫大な魔力を用いて独自の空間魔法を展開し、他者をその空間内に取り込む事で化膿としている。
だが【魔王】やその仲間が行ったモノはそう言った魔力を糧にした類いのモノでは無く″技術″によるモノだろう、一切魔力の反応を感じなかった。』〕

『『うむむ…』』


龍宮城最深部に降り立った<人化>形態のエルダークラーケンの下に各種族の長が集まってきた。

話の中心はやはり【魔王】で、地上よりも技術力が進んでいる海洋種を脅かす脅威となる事に、各種族の長は頭を悩ませていた。


『…してその【魔王】は何処へ…?』

〔『分からん…
いつの間にか忽然と姿を消しており、行方は不明。暫くは様子見となるだろうな。』〕


【魔王】は現在行方不明となってはいるが、″南獄大陸″と言う場所は分かっている。
だが、海洋種達は地上でのその呼び名(地名)は知らない為、暫くは情報収集に重きを置く事になるだろう。

すると、とある種族の長が


『…此度の国交式典…最初は否定しておりました…地上の者よりも武力があり、技術力も抜きん出ている。
今更弱き者共と交わって何があるのだ、と。
だがこういった時は″情報力″に欠けてしまいますな…』

〔『古代なら武力だけで強者として君臨出来る。
現代でも技術力が上なら最先端を行く事が出来るが、我等よりも個が多い地上の者なら素早い情報力の伝達によって直ぐに対策を取られてしまうだろう。
そして今日<人化>形態とは言え、地上に住まう者の中に、我の命を脅かすやも知れぬ存在が居ると広く知れ渡る事になったであろう?
お主の様な者がその様に考えを改めてくれただけで此度の式典は実りあったと言えよう。』〕


強大な力を持つが故の驕りから、外界との交わりを断っていた事から持ち上がった今回の御前試合だが、結果から言えばそういった者達の意識が少しでも変わったのは確かであった。


『…そう言えば例の人族の少年はどうされたのですか…?』

〔『諸々の事柄が終わった後、獣人国に戻った瞬間に気を失ったらしい。
後の事をリヴァイア殿や街の者達に任せて一足先に戻ってきた、と言う訳だ。』〕










~獣人国・早朝~

スヤァ…

「ふがっ…『ビクンッ!』あ、あれ?ここ…あ、宿か…しまった完全に気を失ってたな…
…夕が…いや朝方か…
うわぁ…半日も寝てた『ガタンッ!』うおっと!」

ドサッ!


獣人国のとある宿で寝ていたノアが不意に目覚めて起き上がろうとしたが、体がガチガチに固まっていた為、ベッドから落ちてしまった。


「痛てて…いやー…体が固まってるし重いなぁ…
でもこれが【鬼哭崇崇】の反動?
思ったよりは軽いかな…?
…気絶するのはマズイけ『ぐるるるるぅ…』
うわぁ…凄い腹の虫…何処かの屋台で腹拵えして来よう…」

「お早う御座いますノア″様″、よく眠れましたか?(ラインハード?)」

「あ、お早うラインハードさん…
うん、体が固まる程ガッツリ…ん?
ノア″様″…?」


床から起き上がると、いつの間にかラインハード(?)が近くに立っており、ノアに朝の挨拶をしてきた。

だが少し違和感があった。

ラインハードはノアの事を、″ノア君″もしくは″ノアさん″と呼ぶのだが、″ノア様″と呼ぶ事は一切無かった。

なので、ふと気になったノアがラインハードの顔を見上げてみると、そこには″無表情″のラインハード(?)が立っていた。


(あ、あれ、怒ってる…?
もしかしてズタボロになって帰って来たから流石に怒ってるのかな…?
ねぇ鬼神、何か知ってる…?)



(あれ?鬼神?)
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