ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

閑話:【魔王】に関する出来事 その7

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ノアがアルゴダの宿ですやすやと眠りについている頃、遠く離れた場所に位置する【魔王】アクロスと隣接するドワーフ国の方では動きがあった。

1つ目は、10日あまり膠着状態であった両者が、図らずも接触を果たしたというモノであった。

【魔王】アクロスは『南獄大陸』到着後、早い段階で蟻竜兵スプラドルダートと兵隊蟻を増やし、廃坑となった縦坑掘らせ、金属鉱石の確保と兵隊蟻の苗床設営、そして『何か』の準備を行わせていた。

『何か』については一旦置いておくとして、接触の原因となったのが実はドワーフ側に寄るものであった。

ドワーフ国フェレイロは鉱山を所有しているのだが、地下500メル地点で金属鉱脈を掘り進んでいた所、兵隊蟻が掘り進めていた一部坑道に繋がってしまったのだった。

ドワーフ側は『地下から攻めてきたか!』と、屈強且つ手練れの戦士を坑道に配置、警戒体制に入ったが、兵隊蟻側はどうして良いか分からずその場で待機していた。

その後、話を聞き付けたドワーフ国国王シトルベが完全武装で直接坑道にやって来て、タイミングを同じくして【魔王】アクロスもやって来たのだった。

一触即発の雰囲気になるかと思われたが、【魔王】アクロスは「縦穴を掘っていただけで繋ぐつもりは無かった」とし、謝罪の姿勢を見せ、ドワーフ国国王シトルベは【魔王】アクロスに…と言うか【魔王】アクロスの″装備″に興味津々であった。

ドワーフという種族は元より好戦的で、職人気質な性格も持ち合わせており、自身が作成した武具を持って戦闘し、更なる強さを求めて改良を施す事で強さの高みを目指している。

そんな職人気質なドワーフ達が″別次元の、遠い未来の武装″を見て興味が湧かない訳が無いのであった。

この時ドワーフ国側は全員重鎧姿に斧と言う、如何にも″ドワーフ″という姿なのに対し【魔王】アクロスは外部装甲を身に纏い、腰にSPV-B(超出力振動ブレード)を差しているだけの軽装備であった。

だが自分達の装備よりも洗練されており、軽装でありながら防御の高さは自分達以上である事を悟り、刀身を見ただけで攻撃力の高さを物語っていた。

更に待機していた兵隊蟻の背中には″蟻酸発電による蓄電池″が装備されており、それもドワーフ側の興味を引いていた。


【″これ″が気になるかな?】

「む…まぁな。
何じゃそれは、侵略兵器か何かか…?(シトルベ)」

【そんな物騒な物では無い、これは″発電機と蓄電池″だ。
″この世界″ではまだそう言った技術は使っていない様だが…まぁ雷を作り出す装置だと思ってくれれば良い。】

「″この世界″…?雷を作り出す…?
何だ、魔法が使えんのか?(シトルベ)」

【いや使えるが、これは装備用だ。
この武器は燃費が悪くてな、予備電源を確保したいだけなのさ。】

「武器に…燃費…?
どういう事だ…?(シトルベ)」

【ここから先は極秘事項。
顔を突き合わせてはいるが、まだ友好関係を築けていない以上、お互いにあまりペラペラと喋る訳にはいかないだろうしね。】

「うぐ…(シトルベ)」


興味はあるが相手は【魔王】。
静観し、遠くから監視を続けていた事が響き、絶好のタイミングで知り得たい情報が入手出来ずもどかしい事になってしまった。



そんなもどかしい状況の最中、ドワーフ国が現在頭を悩ませている″存在″が迫ってきていた。


ダッダッダッダッダッ!

「おぅシトルベ!
【勇者】軍が隣国を出て此方に向かってきとるらしいぞ!」

「ああくそっ!
遂に来よったかっ!(シトルベ)」

【おや?】


坑道の奥から慌てた様子のドワーフがやって来て国王シトルベに報告をしに来た。
するとシトルベは忌々しそうな表情で吐き捨てた。

真っ直ぐ大陸の南端を目指していた【勇者】軍の大集団がドワーフ国に迫っているとの事であった。


「ああっ!?マジか!」
「頭のネジが飛んどる連中が来よったか!」
「畜生め!」

「隣国でも10を超える村々と2つの街で略奪行為を行い、多大な被害を出しよった輩共が来っど!
そこん【魔王】の事もええが、迎撃ん事も考えんと二の舞になってまうぞ!」

「全く次から次へと…!(シトルベ)」


周りに居た他のドワーフ達も口々に文句を言い、国王シトルベは頭を悩ませていた。




【俺が行こう。】

「「「「「あ?」」」」」

【【勇者】軍は元々俺が目当てでやって来たのだろう?
ならば俺が行くのが道理じゃないか?】

「…であれば隣国に来た段階で対処してくれりゃ良かったものの…(シトルベ)」

【隣国は″人間″の国だろう?
そこがどうなろうが知った事では無いが、このドワーフの国が攻め込まれるのは此方としても心苦しい。
前にも言ったが貴国とは友好関係を築きたいと思っている、今回の事が済んだらそれを前向きに考えてくれないかな?】

「…拒否したらどうする?(シトルベ)」

【そうなったらそうなったで仕方無いと諦めるさ。一朝一夕で関係を築けるものでは無い事は重々承知しているしな。
行くぞ兵隊蟻。50体程呼び、残りは作業を続けさせるんだ。】

ギギギギッ!


【魔王】アクロスは、待機していた兵隊蟻と共に坑の奥へと去っていった。


「…シトルベ、【魔王】と友好関係を結ぶんか?」

「…考えん事も無い。(シトルベ)」





~ドワーフの国『フェレイロ』から5キロメル離れた場所『南獄大陸』・縦穴最深部~


「あ、【魔王】様、どうでしたかドワーフ国の方々は。(アリス)」

【どうだろうね。
友好関係を築けそうではあるが、今回の働き次第かな。】

「働き…?(アリス)」

【【勇者】軍が来るらしい。
″討伐と根絶やし″に行こうと思う、少しの間ここを離れるので後を頼む。】

「…畏まりました、行ってらっしゃいませ。(アリス)」





~ドワーフ国との境・平原~


『『『『『ズズズズズズズズズ…』』』』』(地響き)


ドワーフ国まで数ケメルと言う距離にある平原では、2000人規模の大集団によって土煙が舞い、辺りには地響きが轟いていた。

その大集団は統一感が一切無く、冒険者だけでなく野盗であったり、人種・種族も様々で寄せ集め感が否めない。

そしてその大集団の中に、『隷属の首輪』を装着させられて操り人形の如き空虚な眼差しで歩を進める【勇者】アーク、【聖女】ミミシラ、【紅武士】アックスレイ、【死陣操糸】のヴォルフスティの4人の姿があった。

大集団の者達は下卑た笑みを浮かべながら次なる略奪先を夢想し、ここに来る前に襲った村で略奪した食料を貪っていた。

彼等と【勇者】達は思いも寄らなかっただろう。【勇者】軍の大半が死亡し、生き残った者達は絶望。

そして【勇者】の故郷イグレージャ・オシデンタルが″消滅″する事を。
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