ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

ぬるりと退場

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『つーかコイツ(黒ノア)に取り憑かれるまでは割と普通に旅してたろ?
確かに夢の中で昔の自分の姿が出て来た時には魘される事はあるにはあるが、自分の過去に起こった事象なんだから、切っても切れないモノだってのは主自身がよーく分かってる。』

「あ、確かに言われてみれば…
ノア君が辛そうにしてたのってアンテイカーの時からだし…(ミダレ)」

《あれ?そうなの?(アンテイカーから参加のイスクリード)》


「ま、待て…待て待て待て待て待て待て待て待て!そんなハズ無

『嘘だと思うなら記憶を遡ってみろ。
俺の言っている事が正しいと証明されるハズだぜ?』


実際の所、ノアは年がら年中不眠について悩んでいる訳でも無く、アンテイカーで1度悪霊に昔のトラウマを蒸し返されてから不眠云々についての話が出てきていた。

″自身が取り憑いた事によりトラウマと恐怖による支配は後僅か″。

そう黒ノアは思っていた様だが、鬼神の話では、″既に克服しつつあったが、悪霊の残りカス(黒ノア)によって一時的にトラウマを蒸し返されて魘されていた″事になる。

意味合いとしては似ているものの、″トラウマで寝れない″のと″魘されている″とでは雲泥の差である。


「な、あ、あぁ…(黒ノア)」


鬼神に促されてノアの記憶を遡って確認した黒ノアの表情にどんどんと焦りの色が浮かんでくる。

どうやら鬼神の言う通り、ノアが旅の道中でトラウマについて言及している箇所は殆ど無く、アンテイカーに立ち寄り、悪霊(黒ノア)に過去のトラウマを見させられてから話の主題として上がった程度であった。


『だからお前が気にしていた本人の心の問題は、時間経過で解消される。
後はお前がここから去ってくれりゃ丸く収まるんだが…』

「…わ、分かった…悪霊とはいえ消滅したくは無い…こ、このガキからは手を引くし、今後関わる事は一切『ガシッ!』ひっ…!?(黒ノア)」

『悪霊の言う事は信用出来ねぇんだ、悪いな。』


悪足掻きが意味を為さず、命乞いも通用しなかった黒ノア(以降悪霊に戻す。)の末路は中々に酷いものであった。

綺麗サッパリ″悪霊退散″となれば悪霊側としても良かったものの、圧倒的暴力の塊である鬼神によって、再生しては悪霊″体″散させられてしまい、ノアから搾取した負の魔力をどんどんと消費させられてしまった。

垂れ流していた黒い液体は負の魔力の減少と共に徐々に枯渇し、ノアを模す事も出来ず、不定形のウネウネへと変貌を遂げて最終的にイスクリードの腹の中へと収まったのであった。





ムグムグ…

《けぷっ。ぷはーっ…
よし、もう悪霊はぽんぽん(お腹)に収まったから契約者様に悪さをする事は無いよ。》

『…いや、お前いくら可愛く言っても今の絵面は中々にエグいからな?』

「うん…正直少し引いたっちゃ…(ミダレ)」

《うわーん!これが夢魔の仕様なのにぃ!》


鬼神によって徹底的に弱体化させられた悪霊は、イスクリードに捕食されたのだが、その絵面が中々にエグかった。

何せイスクリードは、自身の頭身程もある悪霊(見た目的には″真っ黒い蛸″)に抵抗されながらも踊り食いしていったのである。

マスコット的キャラのイスクリードがそんな事をしていたので、鬼神とミダレは「うわぁ…」な気持ちでその光景を眺めていたのであった。


『…まぁそれはもう良いか…
それで?今度こそ奴は始末出来たのか?
まーた残りカスが悪さして再戦なんて面倒だぜ?相手にならないから構わんが…』

《もう大丈夫だよ。
夢魔であるボクが処理したんだし、ヤツの気配ももう無いしね。
後は契約者様の心持ち次第だけど…》

『それは心配ない。だろ、娘っ子?』

「うん、さっきより血色も良いし、すやすや寝てる…
ノア君の寝顔…可愛いっちゃ…(ミダレ)」

スー…スー…スー…(幼いノアの寝息)


悪霊に取り込まれていたノアは既に解放され、ミダレの腕の中ですやすやと心地良さそうに寝息を立てて眠っている。

悪霊に囚われていた時は痩せ細り、青白い顔で呼吸も安定していなかったが、現在は健康そのもの。
現実でのノア自身を表している様であった。

そんなノアをミダレは我が子の様に抱き、慈愛の眼差しで見詰めていた。

そんな光景を眺めていた鬼神が、ふととある質問をミダレとイスクリードの2人へと投げ掛ける。


『そういえば、もじゃ…イスクリード。
夢魔ってどの程度夢に干渉出来る?
何て言うか、″特定の夢″を見せる事も出来るのか?』

《あ、ちゃんと名前で呼んでくれた…
えっと、″楽しい夢″、″悪夢″、″性的な夢″みたいに大雑把なモノは見せる事は出来るけど、″特定の夢″となるとある程度″情報″で絞って当事者にその夢を引き当てて貰う必要があるよ。》

『…情報で絞る、か。
なる程な。実は″確認したい夢″があってな。』

「″確認したい夢″?(ミダレ)」

『あぁ。主が昔大病に罹っていた、と言うのはもう既に知っている事だと思うが、この病、通称『インクラーベル』は発生源・感染経路・治療法一切不明の病として現在でも謎の病として知られ、主も最終的には対症療法で難を逃れている。』

「え?もしかして原因究明の為に当時の夢を?(ミダレ)」

『いや、そんな大それた事をするつもりは無い。もう過ぎた事だし、今更掘り返すつもりも無い。』

《?それじゃあ何の目的で?》


てっきり鬼神は、ノアの夢を介して病気の元凶を探るものと思ったがそういう訳では無いらしい。


『対症療法で治ったっつっても一筋縄でいかなかったらしくてな。
何にしても食って飲んで体力を付けて貰いたいものなんだが、食い物見たら吐き気を起こし、匂いを嗅いだら胃がひっくり返った、とか後々になって言っていた主は、あまりの辛さに逆に死にたがっててな。
10日で粥1匙食えたら良い方って感じだったんだ。』

「…っ…(ミダレ)」
《ひぇ…》

『そんな時、近くの村で開かれたバザーに気分転換目的に家族3人で出掛けたらしく、そこで見掛けた″子″が切っ掛けで我慢してでも飯食う様になったんだと。』

「へぇ~そんな事があったっちゃね。(ミダレ)」
《なる程~、想い出の夢を見たいと…》

『まぁそういう事だ。
しかもどうやらその″子″と言うのが″クロラ″らしいんだよ。』

「え!?ええ~っ!?それ、本当だとしたら運命っちゃね!(ミダレ)」

《え?だ~れ~?》

『いやぁ、ずっと気になってたんだよな。
何で主があそこまであの娘っ子(クロラ)にドハマリしてんのかって。
王都でそんな話をした時があって、機会があったら確認してみたかったのさ。』

《ね~ぇ、だ~れ~?》


その後イスクリードは、鬼神からもたらされた情報をもとに、ノアとクロラが初めて出会したと思われる夢を見付け出して3人で観賞するのであった。
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