ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

閑話:【魔王】に関する出来事 その8

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『『『『『ズズズズズズズズズ…』』』』』(地響き)

クッチャクッチャ!(咀嚼音)
グビビッ!(酒を煽る)

「ぎゃはははっ!何やっても無罪放免ってのは良いもんだ!」
「毎日のお仕事(略奪)にやりがいを感じるぜ!」
「昨日襲った村の女ァ良い尻をしてたなぁ!堪んなかったぜ!」
「次ぁドワーフの国だろ?女には期待できねぇ、飯と酒だ!」
「そうだ酒だ!酒があんじゃねぇか!」
「楽しみだなぁ!略奪してぇなぁ!ぎゃはははっ!」


【勇者】軍とは名ばかりの犯罪者集団は、現在ドワーフ国まで数ケメルという距離に居た。

″【魔王】討伐まで行われた蛮行は罪にならない″等と言うとんでも無い法(勿論どの国も支持はしていない。)を聞き付け、碌でも無い連中がわんさかと集まってきていた。

村々から略奪した食い物や酒を煽り、たった今下卑た話を繰り広げていた野盗集団は1000人にも上り、1人1人の戦力は大した事無いものの、数の暴力で進行方向にある村や街を蹂躙、多大な被害を出し続けていた。

次なる場所も数の力でどうにかなると考えている野盗集団に対し


「気楽で良いわね、野盗の連中は。
フェレイロ(ドワーフの国)間近になったら機を見てオサラバしましょ。(とあるクランのメンバー)」

「賛成。
(略奪行為で)懐も温かくなったし、そろそろ身バレして手配されそうだからね。(とあるクランのメンバーその2)」

「それに、国民全員戦闘集団のドワーフに今までの手が通用する訳無いしな。
引くなら今だ。そもそも【魔王】討伐するつもり無ぇしな。(とある犯罪クランのメンバー)」


【勇者】軍には野盗集団だけでなく冒険者やクランの者達も居り、悪行に加担しつつ自身の懐を潤していた。

だが幾ら大集団とは言え、ここまで悪行を繰り返していれば流石に顔を覚えられ、何れは牢屋行きとなる為、引き際を考えていた。

そもそもこの大集団の中に、本当に″【魔王】討伐″を目的としている者等居やしない。

先に述べた″【魔王】討伐まで行われた蛮行は罪にならない″と言う、イグレージャ・オシデンタルが勝手に掲げた法を盾に略奪を行う為だけに参加しているだけに過ぎない。

【魔王】が居るであろう『南獄大陸』に近付いて来た今、野盗以外の者達は己の引き際を考える頃合いになったのだった。

そんな矢先


「んぉ?見てみろよ、あそこに誰か突っ立ってるぜ?」
「何だ?女か?」

タァン…(遠くから破裂音)

「いや、野郎だ。
こっち向いてぼーっと突っ立って『パガンッ!』っ…」

ドシャッ!(野盗が地面に倒れる。)

「あ?」
「お?」
「は?」


集団の先頭に居た野盗が平原の向こうに人影を確認。
直後下卑た笑みを浮かべていた野盗の1人の眉間に強い衝撃が走り、崩れ落ちたままピクリとも動かなくなってしまった。

周りに居た他の野盗は何が起こったのか分からず、呆然としていると


タタァン…タンタン…

『パゴッ!』っぎゃっ!?」
「何『ゴパッ!』
『『ドパパッ!』』
『ボンッ!』

「うわっ!?うわぁあああっ!」
「ち、血ぃっ!死ぃっ!?」
「て、敵襲!敵襲ですぜ先生が『パガンッ!』


再びの破裂音と共に新たに数人の頭部が爆ぜる。先程までの下卑た笑みは何処へやら、野盗達は腰に提げた武器を構える事無く、へっぴり腰となって地面に這いつくばった。


「あん?前が五月蝿いわね。(とあるクランのメンバー)」

『『パパン…』』

「野盗共が騒いでるだけだろ『パガンッ!』

「ぃ、いやぁあっ!?ジョゼ!?ジョゼっ!?(とあるクランのメンバー2)」


先頭から遅れる事数秒、【勇者】軍に紛れていたとあるクランメンバーの頭部が爆ぜた事で外敵がやって来た事を理解したのであった。





カシュッ!(魔力を消費した魔石を排出)

″MP-G(魔力貫通銃)のリロードを行って下さい。″

【ふむ、作成した魔石では弾数10発以下か…
主戦力としてはまだまだだが、足止めには使えるかな。
…にしてもあれだけバカみたいに固まってりゃ、これ位離れてても百発百中だな。】

ジャラ…カッ!カシュッ!(小粒の魔石をMP-G(魔力貫通銃)のカートリッジにセットし装填。)

【限られた資源で作った魔石故純度もまだまだ…鉄が入手出来ればもう少しマシになるのだが…
急いてはダメだな…】


兵隊蟻という生体燃料電池によって生産された電力を魔力に変え、魔石として生成した【魔王】アクロスは、それを自身の武器に使用。

彼は【勇者】軍を相手にしつつ性能チェックを行うスタンスであった。





「あああ、アイツだ!アイツが現れてからこんな事になった!」
「奴は誰だ!?1人だぞ!」
「冒険者か?執行人か!?軍の斥候か!?」
「何にしても取っ捕まえて知ってる事を吐かせるんだ!何か知ってるハズだ!」
「奇妙な術を使いやがるが、いつも通り数で行け!数で行けば簡単に潰せる!」

「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」」」


先頭集団が平原にポツンと立つ人影を視認。
【勇者】軍を脅かす外敵であろうと判断した輩共は数の暴力に任せて突撃を開始。
その数はざっと200を超えていた。



″敵戦力30…80…110…尚も増大中です。″

【…何の策も無く閧の声を上げて突撃とは一体何世紀前の戦い方をして…
…いや、年代を考慮すればこちらの世界ではこれが主流なのか…?】

″元の世界で言う1600年代ですから。″


元の世界で人類軍のズル賢い戦術や戦法を見て来た身としては、無策で突撃してくる輩共の存在に思わず頭を混乱させる【魔王】アクロス。


【まぁ数が多いに越した事は無い、良い見せしめになるからな。
″広域殲滅戦技:ルシフェル″を放とうと思う、必要な魔力量を算出せよ。】

″先程の魔石換算で4つ分となります。″

カシュッ!『ジャラッ!』ガショッ!(SPV-B(超出力振動ブレード)に魔石を装填。)

【一々カートリッジに装填しなければならないのは何とも煩わしいな。】

″魔力消失を実行した場合頼みの綱なのですから我慢して下さい。″

【気にするな、唯の独り言だ。】

ギシッ…(【魔王】アクロスが抜刀術の構えを取る。)


人工知能と話す【魔王】アクロスは話を打ち切り、腰に装備していたSPV-B(超出力振動ブレード)を手にした状態で身を屈めて動きを止める。



『『『『『ドドドドドドドッ!!』』』』』

「おい見ろ!怖じ気づいたのか身動きを止めたぜ!」
「命乞いにも見えるぜ!絶対ぇ許さねえ!」
「嬲り殺しだ!」
「【勇者】軍を相手にするとはどういう事か思い知らせてやれ!」

「「「「「「おおおおおおお『『『『『ゾリンッ!!』』』』』

ドシャドシャッ!
『『バシャッ!』』
ビチャッ!
『『『ドチャッ!』』』
ズシャッ!!


【魔王】の行動に息巻く野盗共。
互いの距離は既に目と鼻の先にまで迫っていたが、アクロスが恐ろしい速度で腰に提げていたSPV-B(超出力振動ブレード)を振ると、前方扇状の範囲内に居た野盗共推定150人の上半身と下半身が両断。

一瞬の内に静寂が訪れ、濃い血の匂いが辺りに充満した。
平原は扇状に血と飛び出た内臓により赤黒く染まり、この光景を見た者は漏れなく気分を害する事だろう。

だが【魔王】アクロスはそんな光景に眉1つ動かさず、血のカーペット手前で呆然と佇んでいる【勇者】軍に対して


【やぁ【勇者】軍、いや″見せしめ共″。
遠路はるばる良く参った、私が【魔王】のアクロスだ、君達を歓迎しよう。】
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