ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
953 / 1,117
取り敢えず南へ編

閑話:【魔王】に関する出来事 その9

しおりを挟む
「【魔王】っ!?馬鹿言ってんじゃ無いわよ!
こんな所に居るハズないでしょっ!
『ギガンテ・エステレイラス(星砕きの巨人)』!」

ボゴボゴッ!

『『『ズズズズズズズズズズズズズズズズズズッ!!』』』(地面が大きく捲れ上がり、人を形作る。)

「ぅおっ!?地震か!?」
「違ぇよ!姐さんが″巨人″を喚び出したんだって!」



「何にしても好き勝手殺られるのは気に入らねぇ。『パッサロ・イスカラーチ(緋の鳥)』っ!」

シュボッ!

『ピュォオオオオオオオッ!』(灼熱の大怪鳥の鳴き声)

「あっ!熱っちぃっ!」
「殺人ギルドの頭が召喚獣を喚び出しやがったぞ!」
「逃げろ!ここら一帯が火の海になるぞ!」


【魔王】アクロスが名乗りを上げた直後、大集団の輪の中から召喚獣が2体出現した。

1体は表面がゴツゴツとした、一見するとゴーレムかと見間違う見た目をしているが、体表が異常に硬く、4階建ての建物を有に超える巨駆をしていた。

とある冒険者が喚び出したこの召喚獣、門を締め切って徹底抗戦の構えを見せていた1つ前に襲った街の防壁を、たった一撃の拳で破壊する働きを見せていた。



2体目は、とある殺人ギルドのリーダーが召喚した、翼長20メルを超える灼熱の大怪鳥。

あまりの高温故、近付いただけで周辺が火の海と化す恐ろしいモノで、とある街を襲った際、周囲から聞こえてくる怨嗟と恨みの声が″耳障り″だった為、喚び出して跡形も無く焼き払ったらしい。



「1人に対する火力じゃねぇが、【魔王】だと宣う野郎には丁度良いだろう。
何処の国の奴が送り込んできたか知らねぇが、【勇者】軍に楯突けばどうなるかを教えてやるぜ!
行け召喚獣!奴を灰にしちまえ!」

『ピュォオオオオオオオッ!』バサァッ!


「ほらデカブツ、アンタも行ってらっしゃい!」

ゥゴゥ…(巨人の鳴き声) ズンッ!ズンッ!


召喚された『パッサロ・イスカラーチ(緋の鳥)』は【魔王】へと飛翔。
高温の為、通過した場所には焦げ跡が出来、『ギガンテ・エステレイラス(星砕きの巨人)』も追随する様に巨駆を揺らしながら歩を進めていた。



【召喚獣か…なる程、その手があったな。
…取り敢えずはアレを″消して″奴らを無力化するか。】

『『バチチチ…』』(背鰭の様な器官が発光。)


召喚獣が迫るも平然とした様子の【魔王】アクロスは、徐に背中に意識を集中させ、自身の生体電気を別ベクトルで背中の背鰭状に加工された『ヘル・クリスタル』へと流す。

それを起点として背鰭が発光してチャージを開始。背鰭と背鰭との間でまるで放電現象の様にバチバチと音を立てていた。



『ピュォオオオオオオオッ!』

『『『ゴォオオオオオッ!』』』(目前まで迫った『パッサロ・イスカラーチ(緋の鳥)』が太陽の様な火球を生成。)

【【魔王】とは何たるかを思い知れ。】


『『『『『『『バチィィイイイイイイイイイイイイイイイッ!!』』』』』』』(【魔王】を中心として全方位に光の衝撃波が発生。)


『ピュォオオオ『『『バシュッ!』』』(霧散)

ゥゴ『『『バシュッ…ガラガラッ!』』』(崩壊)


「何っ!?『ガクッ…』…かはっ…」
「召喚『ガクッ…』ぅぉぉ…」
「何だこ『ガクッ!』が…は…」

『『『ドサドサッ!』』』ズシャッ!『『ズザッ!』』(衝撃波の伝播と共に大集団が次々に崩れ落ちる。)


『パッサロ・イスカラーチ(緋の鳥)』が【魔王】アクロスに接敵して僅か5秒程の出来事である。

地面に倒れ込む【勇者】軍の面々は、冒険者・野盗に関わらず皆一様に僅かな呻き声1つ上げる事が出来ず、″魔力消失に伴う魔力枯渇状態となって気絶する者″が殆どであった。

それによって再び平原は静寂に包まれる。

先程【魔王】アクロスによって上半身と下半身がサヨナラした者達はある意味幸運だったと言えよう。

この場で気絶し、生き残った者達が次に目を覚ました時には、彼等には″地獄″が待っているのだから。





パチンッ!(指を弾く音)

【兵隊蟻、終わったぞ。
そこに転がってる死体は丸めて″餌″とし、息のある者は縦穴に連れて″苗床″にしろ。】

『『『ウゾウゾウゾ…』』』(地中から兵隊蟻が出現。)
『『『ヂキヂキヂキ…』』』(兵隊蟻の鳴き声)

【人間を宿とする故、お前達よりも上位の兵隊蟻が産まれるだろう。
丁重に扱え。だが暴れるなら殺して腹に収めろ。】


『ヘル・クリスタル』による魔力消失の効果範囲外に待機させていた兵隊蟻を呼び、気絶している【勇者】軍を運ばせるアクロス。

彼らの用途は″苗床″であった。

普通に産み出すよりも、人間を宿とした場合産まれてくる兵隊蟻は通常よりも強化されているらしい。


【うーむ…予想よりも【勇者】軍が多かったか…
もう少し兵隊蟻を呼んでくれば良かったか…】

<……、…>

【…ん?
意識がある奴が居るか…どれどれ…】


思いの外【勇者】軍の数が多く、兵隊蟻による運搬に時間が掛かると感じ、少し思案していたアクロスの<聞き耳>に、微かな声が届く。

アクロスによる魔力消失に耐え得る猛者が居るのではと、自ら確認に行くのだが





「…ぅ…、……っ…」

【ふむ…この状況で立っていられるとは…
…いや、″立たせられている″と言った方が正しい様だな。】


倒れ伏す有象無象を掻き分けて進んでいくと、虚ろな目でありながら歯を食い縛り、今にも崩れ落ちそうになりながら耐え凌いでいる男女4人が居た。

その4人と言うのが、この世界本来の【勇者】パーティである【勇者】アーク、【聖女】ミミシラ、【紅武士】アックスレイ、【死陣操糸】ヴォルフスティであった。

彼等は獣人国でノアと出会い色々とあった後、全うな【勇者】として旅立つハズであったが、【勇者】の父親であるゲッシュバルドの命により拉致され、強制送還。

今は亡きヒュマノ聖王国と裏で繋がっていた際に入手していた『隷属の首輪』をパーティ全員に装着して操り、強制的に【勇者】軍に参加させられていたのである。

今も4人共魔力枯渇であるハズなのだが、『隷属の首輪』によって強制的に意識を保たれ、何とか立っていられている状態である。

こんな悲惨な状態での【勇者】対【魔王】という構図が出来上がってしまい、図らずも窮地に立たされる4人であったが


【…これは『隷属の首輪』…
なる程、コイツらは何処かの街を襲った際に″性処理用″として【勇者】軍に捕らえられた冒険者パーティだろう。
怨敵とは言え酷い有り様だ。】


目の前に佇む男女を【勇者】パーティと知らない【魔王】アクロスは、4人の状態を見て同情する。

具体的な描写は避けるが、例え【勇者】パーティと言えど『隷属の首輪』によって操り人形と化し、何も言わずとも付いてくる″物言わぬ若い男女″が居たら″集団の半分以上を野盗が占める″【勇者】軍の中でどういう扱いを受けるだろう?

″【魔王】討伐が成されるまでは何事にも罪に問われない″と、【勇者】の故郷イグレージャ・オシデンタルでは謳っている事も後押しした形となる。



ちょっと長くなりそうなのでここら辺で。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...