ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
954 / 1,117
取り敢えず南へ編

閑話:【魔王】に関する出来事 その10

しおりを挟む
キキンッ!キンッ!キキンッ!(『隷属の首輪』を断ち斬る音)

『『ドサッ!』』ドササッ! 

「…ご…ぇぅ…」
「げぼっ…」
「ごぉっ…」
「げぇ…ぉ…」


【魔王】アクロスは徐に超出力振動ブレードを振るい、【勇者】パーティ(アクロスは知らない)の首に装着させられていた『隷属の首輪』を斬り落とす。

すると直ぐ様4人は気絶して崩れ落ちる。
ただ、ここに来る間に″色々″あったのだろう、一気に顔を青ざめさせて全員戻していた。


″…助けるのですか?″

【俺が手を出すのはここまでだ。
流石に訳も分からず捕らえられ、『隷属の首輪』を掛けてまで″利用″され、挙げ句にモンスターの苗床にするのは気が引ける。
この者達はここに残しておけば、ドワーフ国側がどうにかするだろう。
運が良ければ親元に帰れるだろうさ。】


【勇者】軍を相手取るとドワーフ国国王に直接言ってここまでやって来た以上、ドワーフ国側から少なからず監視の者が来ている事だろう。

アクロスが気付いただけで約20人程周辺に散らばっており、今までの一連の行動を監視していた。(全員魔力枯渇状態で気絶中)

なのでこの場に4人を放置していたとしても大丈夫であろう、と判断した様だ。


【それに苗床にはなるべく″新鮮な″肉体を使いたい所だ。
この者達は…恐らく目覚めたら″壊れる″だろう。
ならばさっさと親元に戻した方が良い。】

″まぁ…そうでしょうね。″


4人の状態を確認したアクロスと人工知能は、彼らは″もうダメだろう″と判断した。

余談だがこの『隷属の首輪』、体の制御が利かないものの意識はハッキリしている為、装着中の記憶はしっかりと残っている。

【魔王】アクロスの言う通り4人は後にドワーフ国の者達に保護されたものの、その内の【紅武士】アックスレイ、【死陣操糸】ヴォルフスティはドワーフ達の目を盗み自死を選択。

【聖女】ミミシラは処女を散らされた事により【聖女】としての力を全て喪失、無気力状態となる。

【勇者】アークは【紅武士】アックスレイ、【死陣操糸】ヴォルフスティの死、【聖女】ミミシラの状態を知りショック状態に陥る。

どうしようも無くなったドワーフ国が【勇者】の故郷イグレージャ・オシデンタルへ送還の報を送るも、返事が返って来ず、代わりに他国から″イグレージャ・オシデンタル消滅″の報が送られて来る事になる。


そして今まで生温い程人死にが出ないストーリーラインであったが、主に【勇者】軍が原因となって多くの地域で治安が悪化。

比較的平穏であった日常が徐々に崩れていく事になるのだった。





【さて、俺は廃都から発つ際に全世界に向けて発したハズだな?
″人間による排除行動が行われた場合、全力で応える″とな?】

″そうですね。″

【では″報復措置″と行こう。
アリスが調査してくれたデータを元に、イグレージャ・オシデンタルまでの最短距離を割り出せ。
″転移″の多重発動で最速で向かおう、アリスを1人にさせたくないからな。】

″畏まりました。
イグレージャ・オシデンタルまでの距離は計算中…
【魔王】様、装甲内に貯蔵している魔力量では″転移″の多重発動が難しいかと思われます。
魔力消失によって『ヘル・クリスタル』の効果範囲外に追いやった魔力を吸収・貯蔵した方がよろしいかと。
効果範囲外に漂っている魔力は現在69%程御座います。″

【ふむ、そうだな。
追いやった魔力を無駄に拡散するのは勿体無いからそうしよう。
兵隊蟻達よ、【勇者】軍の運搬を終えた後、俺が居る地点に″女王蟻候補″を連れて来い。】

ギチギチギチッ!(了承の意)


後に【魔王】アクロスは人工知能からイグレージャ・オシデンタルまでの距離を聞きつつ、先程【勇者】軍から追いやった魔力を背鰭の『ヘル・クリスタル』に吸収・貯蔵。

報復措置を行いにイグレージャ・オシデンタルへ向けて発つのであった。


【″転移″。】





~1時間半後、イグレージャ・オシデンタル~


「『…という事で、今回の【勇者】軍による蛮行と、それらを先導、助長させる行動を取った貴国とは関係を解消したいと思う。
獣人国代表ローグ・ラグナー。』…」

ダンッ!

「またその様な報せか!
【魔王】だぞ!?世界的な危機なのだぞ!?
何故私の思想が世に伝わらん!?
事を成すには犠牲は付き物!僅かに被害が出ただけで私を悪者の様に言いおって!(ゲッシュバルド)」

「″【魔王】討伐までに行われた全ての蛮行は不問とする″等と言う無茶苦茶な法を出された事によって、野盗連中が大挙として押し寄せた為だと思われますよ?」

「何だ!私の思想に異を唱えるか?
偉業を成す為には野盗の様な微々たる戦力であろうと欲しい所であろう?(ゲッシュバルド)」

(皆が皆馬鹿正直に【魔王】討伐を遂行する訳無ぇだろ…
これだから農民上がりの爺は分かっちゃいねぇ…)


イグレージャ・オシデンタルには連日各国から抗議と関係解消、賠償請求についての報が届いており、その度にゲッシュバルドは怒り狂っていた。

彼の頭の中では、″世界的な危機なのだから【勇者】軍は全うに【魔王】討伐に尽力している″と思い込んでいる。

実際は自身が発した無茶苦茶な法によって真逆の事が行われており、それに関する報せも連日の様に届いている。

だが自身を悪者に仕立てる為にわざと過大評価された内容であると信じて疑わないゲッシュバルドは、その報せを見ようともしていなかった。




『『『ズズンッ!』』』(大きな揺れと破砕音)
『『ガラガラガラ…』』

「うぉっ!?(ゲッシュバルド)」

「っ!?地震…?いや、それにしちゃ…」


突如彼らの元に大きな揺れが襲う。
地震かと思ったが揺れは一瞬で、何かが崩れていく様な音はずっと耳に届いている。

彼らは一先ず状況を確認する為外に向かうのだが


ギィ…

「…な…何だこれは…(ゲッシュバルド)」

「せ、聖堂が″無い″…?」


大慌てで扉を開け放ち外へと出て行くと、普通は目の前に【聖女】ミミシラの住まいとも言えた聖堂が建っていたのだが、まるでそこだけがくり貫かれたかの様に消滅していた。

崩れたでも、焼け落ちたでも無く、″消滅″していたのであった。

街の外ではゲッシュバルド同様外に飛び出してきた人々や、空を見上げる者も居た為、ゲッシュバルドもそれに倣って空を見上げてみる。

すると


「…人…か?(ゲッシュバルド)」


街の上空を見てみると、麦粒程の大きさの点が留まっており、注視してみるとそれは人間の形に見えた。

それが聖堂の消失や先程の揺れと何が関連しているかは分からないが、ゲッシュバルド含めた街の人々はただただ呆然とその光景を眺めていると


ォォオ…

「…何だ…あれは…(ゲッシュバルド)」

ォオオオ…

「礫…石…岩…?」

ゴォオオオオオオオッ!!

「…違う、あれは…″聖堂″だ…(ゲッシュバルド)」

『『『ゴォ″オ″オ″オ″オ″オ″オ″オ″ッ!!』』』


麦粒程の大きさの物が浮かんでいたかと思うと、そのすぐ横に″砂粒″が浮かんでいる様に見えた。 

だかその″砂粒″が超高速で高度を落としていくにつれ、それが″消失した聖堂″である事が分かった。 

″聖堂″が街に叩き付けられると、その衝撃と破壊力で以てイグレージャ・オシデンタルは″消滅″する事となった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...