3 / 78
第2話
しおりを挟む
夕方、部活動というものに向かう少女の後を追う。
「桜良先輩、お疲れ様です」
「ごめんなさい。忙しいのに顔を出してもらって…」
「いえ。私も放送するの、楽しいですから」
見たことがない機会が大量に動きはじめ、ざざざ、と音がする。
『時刻は午後5時になりました。生徒の皆さんは速やかに下校しましょう。
部活時間の延長を申請していない場合は、片づけが終わり次第下校するようにしてください』
2度同じことを言い、そのまま電源を落とす。
「あ、あの…」
「大丈夫。ちゃんとできていたわ」
「ありがとうございます」
「紅茶を淹れたの。…よかったらあなたも飲んでみて」
「ありがとうございます。白露も飲んでいいって」
《だから俺は、》
「もしかして、紅茶苦手?本当は和食以外体が受け付けないとか…」
ふたりが頭をかかえるのを見てしまうと、飲まないわけにはいかない。
別に意味などないのに、なぜ俺の分まで用意されるのか。
「どうかしら?今日はオレンジティーにしてみたのだけれど…」
「美味しいです!カップケーキもふんわりしてて好きです」
「そう。喜んでもらえてよかった」
放送というものが終わった後は、大抵こうして茶菓子を食べながら日常会話をしている。
どんな顔をすればいいか分からず立ち尽くしていると、はっとした顔で主が立ちあがった。
「今日は金曜日だから、夜仕事のお手伝いをさせてもらえる…!」
「そんなに楽しみなの?」
「はい。お姉ちゃんにお願いして勝ち取った枠なので、もっと強くなりたいんです」
今の主の思考の根底には、強くならなければならないという強い意志がある。
そこまでしなくていいと夜紅に言われてもやめようとしない。
「今のままでも強いと思うけど、まだ足りないと思っているの?」
「はい。みんなみたいに上手に力を使いこなせないから…」
「霊力のコントロールなら室星先生に訊くのがいいと思う。私たちのなかで1番物知りだから」
「そうします。ありがとうございます」
そそくさと部屋を出る主を追いかけようとすると、放送少女に呼び止められる。
「穂乃さんが無茶しないように見ていてほしい。…勿論あなたも」
《…?》
この少女は何を言っている?
式は主の命令に逆らえず、何かあれば即刻処分されてしまうのはずだ。
…少なくとも、前の人間はそうだった。
「今は分からなくても、いつか分かる日がくるはずよ」
《…覚えておく》
主の気配を辿っていると、何やら見知らぬ気配がはりついているのを感知する。
急いで向かった先には、最早人とすら呼べなくなってしまった存在と対話を試みる主の姿があった。
「桜良先輩、お疲れ様です」
「ごめんなさい。忙しいのに顔を出してもらって…」
「いえ。私も放送するの、楽しいですから」
見たことがない機会が大量に動きはじめ、ざざざ、と音がする。
『時刻は午後5時になりました。生徒の皆さんは速やかに下校しましょう。
部活時間の延長を申請していない場合は、片づけが終わり次第下校するようにしてください』
2度同じことを言い、そのまま電源を落とす。
「あ、あの…」
「大丈夫。ちゃんとできていたわ」
「ありがとうございます」
「紅茶を淹れたの。…よかったらあなたも飲んでみて」
「ありがとうございます。白露も飲んでいいって」
《だから俺は、》
「もしかして、紅茶苦手?本当は和食以外体が受け付けないとか…」
ふたりが頭をかかえるのを見てしまうと、飲まないわけにはいかない。
別に意味などないのに、なぜ俺の分まで用意されるのか。
「どうかしら?今日はオレンジティーにしてみたのだけれど…」
「美味しいです!カップケーキもふんわりしてて好きです」
「そう。喜んでもらえてよかった」
放送というものが終わった後は、大抵こうして茶菓子を食べながら日常会話をしている。
どんな顔をすればいいか分からず立ち尽くしていると、はっとした顔で主が立ちあがった。
「今日は金曜日だから、夜仕事のお手伝いをさせてもらえる…!」
「そんなに楽しみなの?」
「はい。お姉ちゃんにお願いして勝ち取った枠なので、もっと強くなりたいんです」
今の主の思考の根底には、強くならなければならないという強い意志がある。
そこまでしなくていいと夜紅に言われてもやめようとしない。
「今のままでも強いと思うけど、まだ足りないと思っているの?」
「はい。みんなみたいに上手に力を使いこなせないから…」
「霊力のコントロールなら室星先生に訊くのがいいと思う。私たちのなかで1番物知りだから」
「そうします。ありがとうございます」
そそくさと部屋を出る主を追いかけようとすると、放送少女に呼び止められる。
「穂乃さんが無茶しないように見ていてほしい。…勿論あなたも」
《…?》
この少女は何を言っている?
式は主の命令に逆らえず、何かあれば即刻処分されてしまうのはずだ。
…少なくとも、前の人間はそうだった。
「今は分からなくても、いつか分かる日がくるはずよ」
《…覚えておく》
主の気配を辿っていると、何やら見知らぬ気配がはりついているのを感知する。
急いで向かった先には、最早人とすら呼べなくなってしまった存在と対話を試みる主の姿があった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。
そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる