未熟な蕾ですが

黒蝶

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第1話

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俺の1日は主を護るのが基本だ。
「わっ…」
《下を見ておかないと危ないぞ》
「ごめんね。ありがとう」
「穂乃ちゃん、誰と話してたの?」
「あ、えっと…独り言。次、音楽だったよね?」
「そろそろ移動しないと間に合わないかも!」
式というのは、基本的に視える人間にしか視えない。
だが、今のように不審がられても俺に話しかけるのをやめることはなかった。
「白露、あそこの小さい子を助けられないかな?」
学校という場所には小物の妖が集まりやすいのか、よく小さい存在を見かける。
《ありがとうございます》
《…気をつけろ。窓枠を駆使して進んだ方がいい》
《は、はい》
中庭にある大木の精霊、といったところか。
風にのってそのまま飛んでいってしまった。
「ありがとう」
《…少し風にあたってくる》
こうして距離をおかなければ、俺の主はずっと声をかけてくる。
だからといって、離れすぎれば探しにやってくるのだ。
式なんていつでも切り捨てられるはずなのに、今の主の周りにはそういう考えの存在がいない。
おかげで調子を狂わされっぱなしだ。
「あ、白露。散歩中?」
《…そんなところだ》
目の前にいるのは死霊の少年。
過去を背負いながらここにとどまっていると聞いている。
「白露は、その…好きなものとかないの?」
《考えたことがなかった》
「そっか。これから見つかるといいね」
式は命令どおり穢れを喰らい、闇を祓うためだけの使い捨ての駒。
前に使役しようとした人間はそう言っていたのに、まるで俺が生きているような言い方をする。
《何故そんなことを言う?》
「え?そうだな…友だちになりたいから、かな」
《俺はただの式神だぞ》
「そんなの関係ないよ。それを言ったら僕はただの死霊だし…。
色々な人が仲良く慣れる環境があれば、それが1番幸せになれる気がするんだ。僕にとってはみんなの近くがそういう場所」
穢れきった俺を見ても怯えなかっただけのことはある。
廃棄処分になるはずだったこの身が今でも動いているのが不思議だ。
「気が向いたら僕とも遊ぼうよ。外に出るのは難しいけど、色々な遊びを知ってるから」
死霊の少年はそれだけ言うと古い建物へ入っていった。
そこで不思議な気配を感じとり、すぐ主のもとへ向かう。
《ケケケ…美味そうだな》
間違いない。妖だ。
《やめておけ。その人間を狙うならここで斬る》
《ひっ……》
少し刀を見せて脅すつもりが、相手は顔を青くして逃げていった。
「あ、白露。あのね、家庭科の授業でグラタンを作ったんだけど余っちゃって…。よかったら食べない?」
《いただこう》
この少女は霊力が強すぎるが故に、悪意を持った存在を感知することができない。
その霊力を分けてもらいながら生活しているが、それでもただの人間と死霊の区別がつかないようだ。
グラタンとやらを食べながら、周囲に散らばっている悪意を持った妖に殺意を向ける。
その視線にさえ気づいていないのか、少女は呑気に笑っていた。
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