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第3話
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「大丈夫。私と少し話してみない?」
《ア、アア……》
言葉が通じている様子はなく、勢いよく主に襲いかかった。
「白露?」
《目を閉じていろ》
即座に斬り捨て、主を抱えていつもの部屋へ向かう。
「どこに行くの?」
《このまま走る》
周囲の妖たちにも目眩まし程度にはなったはずだ。
辿り着いた部屋には誰もおらず、一先ず主を座らせる。
《他の奴等はまだなのか》
「色々忙しいんだと思う。お仕事だったり勉強だったり…」
時折淋しげな表情をしているのはそれが原因か。
《正直に言えばいいだろう。あの人たちはおまえの気持ちを蔑ろにしないはずだ》
「分かってる。分かってるけど、言えないんだ。私のために時間を犠牲にしてしまうんじゃないかって思って…。
それに、最近は白露が一緒にいてくれるから前ほど寂しくないよ。ご飯だって、ひとりで食べるより美味しいから」
《……そうか》
曖昧にしか返せないが、人というのはそういうものなのだろう。
齢十二なら親の傍にいたいと願うものも多いはずだ。
「しんみりしちゃったね。…そういえば、今夜はお姉ちゃんも夕飯一緒に食べられるんだよ」
《…なんだこれは》
木でできた三叉の何かを渡され首を傾げる。
「あ、もしかしてスパゲティって初めて?」
《すぱ…?》
「なんて説明したらいいかな…。えっと、洋風のうどんって表現したら分かりやすい?」
《それを食べるときに使うのがこれか》
「うん。フォークっていうんだよ」
見たことがないものが次々飛び出してくる生活は新しい発見ばかりだ。
「ふたりとも、おまたせ」
「お姉ちゃん!」
「今日は店長がたらこスパゲティをくれた。デザートにってプリンもくれたよ。
フライドポテトはみんなに渡すとして…夕飯にしよう」
意味が分からない言葉が大量に出てきたものの、なんとか状況を把握する。
この麺に絡められているつぶつぶしたものがたらこで、洋風麺がスパ……?
「思考停止してないか?」
《問題ない》
「そっちのプリンはスパなんとかの後で食べるんだ。丸い木の棒はそれを食べるための匙だと思ってくれればいい」
《…成程》
何故俺の分まで用意されているのかという疑問は尽きないが、答えを求めるのはとうに諦めた。
姉妹揃ってそれが当然のことのように答えてくるからだ。
両手を合わせ、見様見真似でフォークというものを使ってみる。
洋風麺を一口食べてみると、ほろほろとたらこがとけた。
「気に入らなかったか?」
《…いや。こういう料理もあるのかと味わっているだけだ》
「白露、パスタ系も食べられるんだね」
《パスタ系?》
「その説明はまた今度。まだ時間あるし、味わって食べてくれ」
少しずつ口に運んでは茶を飲むというのを繰り返す。
…食事を摂るというのは、案外悪いものではないのかもしれない。
《ア、アア……》
言葉が通じている様子はなく、勢いよく主に襲いかかった。
「白露?」
《目を閉じていろ》
即座に斬り捨て、主を抱えていつもの部屋へ向かう。
「どこに行くの?」
《このまま走る》
周囲の妖たちにも目眩まし程度にはなったはずだ。
辿り着いた部屋には誰もおらず、一先ず主を座らせる。
《他の奴等はまだなのか》
「色々忙しいんだと思う。お仕事だったり勉強だったり…」
時折淋しげな表情をしているのはそれが原因か。
《正直に言えばいいだろう。あの人たちはおまえの気持ちを蔑ろにしないはずだ》
「分かってる。分かってるけど、言えないんだ。私のために時間を犠牲にしてしまうんじゃないかって思って…。
それに、最近は白露が一緒にいてくれるから前ほど寂しくないよ。ご飯だって、ひとりで食べるより美味しいから」
《……そうか》
曖昧にしか返せないが、人というのはそういうものなのだろう。
齢十二なら親の傍にいたいと願うものも多いはずだ。
「しんみりしちゃったね。…そういえば、今夜はお姉ちゃんも夕飯一緒に食べられるんだよ」
《…なんだこれは》
木でできた三叉の何かを渡され首を傾げる。
「あ、もしかしてスパゲティって初めて?」
《すぱ…?》
「なんて説明したらいいかな…。えっと、洋風のうどんって表現したら分かりやすい?」
《それを食べるときに使うのがこれか》
「うん。フォークっていうんだよ」
見たことがないものが次々飛び出してくる生活は新しい発見ばかりだ。
「ふたりとも、おまたせ」
「お姉ちゃん!」
「今日は店長がたらこスパゲティをくれた。デザートにってプリンもくれたよ。
フライドポテトはみんなに渡すとして…夕飯にしよう」
意味が分からない言葉が大量に出てきたものの、なんとか状況を把握する。
この麺に絡められているつぶつぶしたものがたらこで、洋風麺がスパ……?
「思考停止してないか?」
《問題ない》
「そっちのプリンはスパなんとかの後で食べるんだ。丸い木の棒はそれを食べるための匙だと思ってくれればいい」
《…成程》
何故俺の分まで用意されているのかという疑問は尽きないが、答えを求めるのはとうに諦めた。
姉妹揃ってそれが当然のことのように答えてくるからだ。
両手を合わせ、見様見真似でフォークというものを使ってみる。
洋風麺を一口食べてみると、ほろほろとたらこがとけた。
「気に入らなかったか?」
《…いや。こういう料理もあるのかと味わっているだけだ》
「白露、パスタ系も食べられるんだね」
《パスタ系?》
「その説明はまた今度。まだ時間あるし、味わって食べてくれ」
少しずつ口に運んでは茶を飲むというのを繰り返す。
…食事を摂るというのは、案外悪いものではないのかもしれない。
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