余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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学園編

24.作戦会議

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ブレイドとの誤解も解けてめでたしめでたし。
……とはならなかった。というか、ここからが始まりだ。僕とブレイドの間には、とっても重大な計画があるから。


「それで、えっと、ローズのことだよね。どうにかしなきゃ……」

「忙しなくお手を煩わせて申し訳ございません」


きちんと話をしてブレイドと本当の意味で友人になれたのはいい。
でも、残念なことに問題はそこじゃない。あの日ブレイドから受けた相談を、僕はまだ解決できていないのだ。

とっても申し訳なさそうに眉尻を下げるブレイドに慌てて首を振る。
謝らなきゃいけないのは僕の方だ。なんといったって、あれからこの問題については一歩も事が進んでいないのだから。


「ごめんねブレイド、ローズにお手紙送ってみたんだけど、お返事がなくって」


そう、例の件をローズに手紙で伝えてはみたものの、肝心の返事が来ないのである。
ローダにも一応話を共有しようとして、結局未だに話せていないままだし……僕ったらぐだぐだすぎて自己嫌悪に陥りそうだ。

僕がしょんぼりと縮こまると、ブレイドは僕を慰めるように優しい言葉を掛けてくれた。


「いいえ、フェリアル様に非はございません。彼からすればウォード家の者など仇敵も同然、関わりを拒絶するのは当然のことです」

「ブレイド……」


無表情で平静を保っているけれど、友達になった今なら分かる。
ブレイドは今、とっても落ち込んでいる。それが分かるからこそ、僕は改めて自分の不甲斐なさに落胆した。

二人揃ってどよーん……と暗い空気を纏っていると、ふいにシモンが声を上げた。
ちなみについさっき僕がメッと叱って離れたので、膝から僕を下ろした現在のシモンは大人しく一人掛けの椅子に座っている。


「あの、すみません。シリアスにお話しているところ申し訳ないんですが、俺にも情報を共有していただいても?」


控えめに手を挙げるシモンに視線を向ける。
確かに、これもシモンに話しておくべきか。ブレイドに許可を得てから、僕は改めてローズの左腕についての話をシモンに説明した。

シモンは僕の説明を聞き終えると、真剣な面持ちで「ふむ」と頷いた。


「なるほど、状況は分かりました。つまりお二人は、たった二人で元暗殺者の治療を試みようとしていたと。ふむふむ、フェリアル様??」

「ごめんなさい」

「反省が早くて結構ですけれども、これはちょっと疑惑の判定ですよ?俺の目の届かないところでなに勝手に危ない真似しようとしちゃってたんですか?」

「ごめんねシモン。あのね、でもね、危なくないとおもったの。だって、ローズは敵じゃないから、危なくないでしょ?」

「そんな可愛い顔しても駄目ですよ?報!連!相!入学する前にあれだけ言い聞かせましたよね?何か無茶をする時は必ず報!連!相!もう忘れちゃいました?」

「おぼえてるよ。ほう、れん、そう。いま、おもいだした」

「今思い出してどうするんですか……」


ガックシ肩を落とすシモンをとりあえず放置して、ブレイドにサッと向き直る。


「ブレイド。あのね、相談があるの。このこと、ローダにも話してみない?」

「……ローダンセ・シュタインですか」

「うん。ローズは忙しいから、僕のお手紙を読む時間がないのかも。でも、ローダはローズの家族だから。ローダに協力してもらえたら──」

「せっかくのご提案ですが、それは難しいかと」


きっぱりと否定されてぎょっとする。
ブレイドなら即座に頷いてもおかしくないのに、こうして否定するということは相当の理由があるに違いない。

そういえば、ローダの方もやけに酷くブレイドを警戒していたな、とふいに思い出した。
ローダのあれほど感情を表に出したのは珍しいことだったから、もしかしてブレイドとの間に何かあるのだろうかと思ってはいたけれど。


「ブレイド。ローダのこと、苦手?」


恐る恐る尋ねると、ブレイドは複雑そうな表情を浮かべつつも首を横に振った。


「いえ、逆です。私があの男に嫌悪されているのです。まぁ、当然と言えば当然です。彼にとって私は親の仇も同然でしょうから」


あぁ、そっか。ローダはローズの左腕のことを、詳細まで知っているのか。
それなら確かに、憎しみとまではいかなくてもブレイドにも似た感情を抱いてしまってもおかしくない。

ローダはローズによく似ている。
『家族』を逆鱗とするあの特徴まで同じだとすれば、ブレイドの想定は正しいかも。


「うーん……どうしよう。とにかく、ローダに警戒を解いてもらうのが先だよね」


なんにせよ、ローダが不信感を抱いている内はローズも応えてくれない可能性が高い。
きっと僕がブレイドと関わっていることを知ったローダは、ローズにそのことを報告しただろうし。
ローズも今はブレイドのことを警戒しているかも。

だとすれば、第一の問題はやっぱりローダだ。
なんとかしてブレイドとローダの仲を改善する方法はないだろうか。

ぐぬぬ……と悩んでいると、ふと腕を組んで何やら考え込んでいたシモンが声を上げた。


「あの、すみません。疑問なんですが、そもそもなんで嫌われている前提なんですか?」

「……へ?」

「……どういうことでしょうか」


予想外のセリフにぱちくりと瞬く。
ブレイドも怪訝そうな様子だ。シモンは僕達の反応を受けると、逆に困惑した様子でおずおずと語った。


「いや、まぁ警戒はされてるでしょうけど。でも、それは当然ですよね。実際に物騒な噂が飛び交っているのは事実ですし」

「うん……?」

「警戒されているのは当然なんですよ。俺だってさっきまで警戒してましたし。だって、恐ろしい噂が囁かれている人間がフェリアル様と関わっているんですよ?」


……うむ、確かに。考えてみればそうだ。

客観的に見て、ローダがブレイドを警戒するのは当然だ。
僕だってシモンと同じように、ちょぴりブレイドを警戒していたからそれは分かる。

でも、別に嫌っていたわけじゃない。なら、ローダがブレイドを嫌っていると決め付けるのもおかしいんじゃないか?
僕達にはローズについての知識があるから、なんとなくそういう先入観を抱えてしまったけれど。


「例の生徒会長。俺も何度か見かけましたけど、本当にシュタイン伯爵にそっくりですよね。外見とかではなく、中身が」

「うん、うん。わかる。ローダ、ローズにそっくり」

「そうでしょう。なら尚更おかしいですよ。仮にこれがシュタイン伯爵なら安易に嫌悪を抱いて避けますかね?彼、あの効率主義者の後継者でしょ?」


た、確かに……確かに、それはそうだ。
考えれば考えるほどおかしい。僕達の思い込みは、全部ただの思い込みなのかも。

シモンの話を聞いて思ったのは、何はともあれ絶対的な事実が一つあるということ。

ローダなら少なくとも、会話の機会を拒絶したりしない。
僕が頼めば、たぶんしっかりブレイドとの対話の席についてくれる。だって、ローダはそういう人だから。


「ブレイド、行こう」

「……?突然どちらに」

「ローダのところ。せっかくだから、今日のうちに全部終わらせちゃおう」


善は急げだ。考えをまとめた僕はガタッと立ち上がり、ブレイドの手を引いて早く行こうと急かした。

ブレイドは当然ながら困惑した様子。
けれど僕は構わずブレイドをつれて歩き出した。


「シモン。シモン、先生。先生も来てください。あの、もしものときのために」

「もちろんです!殴り合いが起きた時は全力で仲裁しますのでご安心を!」


うむ……僕の言いたいことをしっかり理解してくれたようでありがたい。

まぁ、まぁ。今から一縷の望みにかけてローダのところへ行くわけだけれど、普通にこの希望が打ち砕かれる可能性もあるから。
当初の予想通り、本当にローダがブレイドを嫌っていたら大変なことになりかねない。

そういうわけなので、僕はしっかりとシモンも連れていそいそと部屋へ向かった。
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