414 / 423
学園編
53.後夜祭
しおりを挟む時刻はもうお昼過ぎ。
アル先生にしっかりご挨拶をしてから学園長室を出ると、僕はライネスとシモンを連れて文化祭の最終日を楽しむべく急いだ。
お昼ご飯代わりの屋台を回ってお腹いっぱいになるまで食べると、次は飲食系以外の出し物を見て回った。
グリードのクラスの展示とか、魔術発明品の紹介とか。残った時間を全力で楽しんでいると、時間はあっという間に過ぎていった。
『──……生徒会よりお知らせです。各クラスによる全企画が終了致しました。後夜祭の準備を開始しますので、担当の生徒はグラウンドへ集合してください』
空がほんのり赤く染まってきた頃に放送が入る。
お昼の放送とは違ってしっかりしたお知らせだなぁ……と思ったら、聞く限りこれはアランの声らしい。
そういえばアランとアディくんは会計だから、文化祭が行われた三日間はずっと忙しかっただろうな。
僕の仕事は準備期間に行うものばかりだったから、行事中はあまり忙しい感じはしなかったけれど……。
明日はアランとアディくんをいっぱい労ってあげなきゃ。
ぐるぐる考え込んでいると、ふとライネスが首を傾げた。
「そういえば、後夜祭は学園の関係者以外も参加していいのかな」
その尤もな疑問にハッとする。
そうだった。後夜祭は文化祭が終わった後の生徒達による打ち上げ……いわゆる『お疲れさま会』みたいなものだ。
お客さんも参加していいのかな、と僕までそわそわしていると、安定の有能シモンがニッコリ笑って答えた。
「学園長に許可を頂いたので問題ありませんよ。特別棟の屋上を開錠してくださるそうです。お二人の貸し切りですね」
「か、貸し切り……!?」
僕達だけそんな、特別な対応をしてもらってもいいのだろうか。
へにゃ、と眉尻を下げる僕に素早く気付いたらしいシモンが、またニッコリと満面の笑顔を浮かべて言った。
「大丈夫ですよフェリアル様。大公家は学園に対して巨額の寄付をしていますし、これくらいの厚意は当然です」
「あぁ、そういえばそうだね。フェリが過ごす場所だし、快適な環境を維持してもらうためにも寄付していたんだった」
「え、えぇ……」
そんな、そんな軽い感じで言うことじゃないのでは……。
大公家が学園に寄付をしているなんて知らなかった。
というか、大公家による巨額の寄付ってことは、もしかしなくてもパパや大公妃さまも関わっているんじゃなかろうか。
仮に三人が揃ってドーンと寄付したのなら、シモンの言う『巨額』の詳しい金額って……考えるのも恐ろしい。
「ま、まぁ、とにかく、ライネスと花火見られるみたいで、よかった」
ちょっぴり無理やりだけれど、生々しい話題を慌てて逸らす。
僕がそう言うと、ライネスも嬉しそうに頬を緩めた。
「ふふ、そうだね。私もフェリと花火見るの楽しみだよ」
言葉の通り、とっても楽しそうにほくほくとした空気を纏うライネスを見上げる。
ライネスと花火を見る……きっとその時が、先延ばしにした話を伝える最後のチャンスだ。
浮かれてすっかり頭から抜けていたけれど、仮に帝国を出るとなれば、ライネスとの結婚にも差し障りが生じるかもしれない。
旅行気分で考えていたけれど、この話はもっと大きな問題になるかもしれないのだ。
だから、しっかり話さないと。シモンやアル先生にも背を押された通り、大事なことはきちんと伝えなきゃいけないから。
「あ、シモンは仕事とか大丈夫?後夜祭の時間に被ってない?」
ふとライネスがシモンに尋ねる。僕もそういえば、と思ってライネスに続いた。
「先生のお仕事、残ってるなら、今のうちにやるといいよ!」
お兄さんらしくキリッとアドバイスする。
てっきりまたニコニコ笑ってお礼を言うと思ったのに、シモンは僕の予想に反して呆れたような表情を浮かべた。
「……いや、あの、あなた達ね。お二人とも本気ですか?」
「……?なんのこと?」
「どういうこと……?」
僕とライネスが同時にきょとんと首を傾げる。
するとシモンは、とっても大きくて長くて深い溜め息を吐き出した。なにごとかね。
「いやいや!わかってます!?これ、文化祭ですよ!?そんでもって後夜祭!花火!どこの世界にカップルの花火鑑賞にちゃっかり同行する侍従がいるんですか!」
久しぶりにシモンによる早口のお説教を食らってしまった。
あわわ、とびっくり仰け反った体勢から我に返る。僕はライネスとぱちくり顔を見合わせて、すぐに『やだなー』といった感じに笑った。
「なにいってるの。シモンは、いつも一緒だよ。花火きれいだから、シモンもおいで」
「そうだね。フェリもシモンが居たらもっと楽しめるはずだ。フェリが楽しむ為にも君は必要だよ。シモンもおいで」
揃ってちょいちょいと手を振る僕とライネス。
シモンはまたもや特大の溜め息を吐くと、今度は何やら諦めた様子で「いいえ!」と首を横に振った。
「申し訳ありませんが、ちょうど後夜祭の時間に外せない仕事がありますので!」
「え……そうなの」
「それは残念だね……」
ライネスと揃ってしょんぼり肩を落とす。
残念なことにシモンは来られないみたいだけれど、僕に一大任務があるのは変わらない。
ライネスに例の話を伝えて、できればこの文化祭を最後まで良い空気で終わりたい。
その為には、ライネスにどんな反応をされても怖気付かないように覚悟をしておかないと。
とにかく大事なのは、あまり気を張らないこと。
それを意識して深呼吸すると、僕はなるべくいつも通りの感覚で会話を再開した。
「ライネス。今日はだめみたいだから、今度のお休みに、三人でおでかけしよう」
「そうだね。シモンの好きなチョコケーキのお店なんか良いんじゃないかな」
今後の予定をワクワクと話し始める僕達をよそに、なぜかシモンは「まったくこの二人は……」と疲れた様子で項垂れていた。
668
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。