余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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学園編

53.後夜祭

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時刻はもうお昼過ぎ。
アル先生にしっかりご挨拶をしてから学園長室を出ると、僕はライネスとシモンを連れて文化祭の最終日を楽しむべく急いだ。

お昼ご飯代わりの屋台を回ってお腹いっぱいになるまで食べると、次は飲食系以外の出し物を見て回った。
グリードのクラスの展示とか、魔術発明品の紹介とか。残った時間を全力で楽しんでいると、時間はあっという間に過ぎていった。


『──……生徒会よりお知らせです。各クラスによる全企画が終了致しました。後夜祭の準備を開始しますので、担当の生徒はグラウンドへ集合してください』


空がほんのり赤く染まってきた頃に放送が入る。
お昼の放送とは違ってしっかりしたお知らせだなぁ……と思ったら、聞く限りこれはアランの声らしい。

そういえばアランとアディくんは会計だから、文化祭が行われた三日間はずっと忙しかっただろうな。
僕の仕事は準備期間に行うものばかりだったから、行事中はあまり忙しい感じはしなかったけれど……。

明日はアランとアディくんをいっぱい労ってあげなきゃ。
ぐるぐる考え込んでいると、ふとライネスが首を傾げた。


「そういえば、後夜祭は学園の関係者以外も参加していいのかな」


その尤もな疑問にハッとする。

そうだった。後夜祭は文化祭が終わった後の生徒達による打ち上げ……いわゆる『お疲れさま会』みたいなものだ。
お客さんも参加していいのかな、と僕までそわそわしていると、安定の有能シモンがニッコリ笑って答えた。


「学園長に許可を頂いたので問題ありませんよ。特別棟の屋上を開錠してくださるそうです。お二人の貸し切りですね」

「か、貸し切り……!?」


僕達だけそんな、特別な対応をしてもらってもいいのだろうか。
へにゃ、と眉尻を下げる僕に素早く気付いたらしいシモンが、またニッコリと満面の笑顔を浮かべて言った。


「大丈夫ですよフェリアル様。大公家は学園に対して巨額の寄付をしていますし、これくらいの厚意は当然です」

「あぁ、そういえばそうだね。フェリが過ごす場所だし、快適な環境を維持してもらうためにも寄付していたんだった」

「え、えぇ……」


そんな、そんな軽い感じで言うことじゃないのでは……。
大公家が学園に寄付をしているなんて知らなかった。

というか、大公家による巨額の寄付ってことは、もしかしなくてもパパや大公妃さまも関わっているんじゃなかろうか。
仮に三人が揃ってドーンと寄付したのなら、シモンの言う『巨額』の詳しい金額って……考えるのも恐ろしい。


「ま、まぁ、とにかく、ライネスと花火見られるみたいで、よかった」


ちょっぴり無理やりだけれど、生々しい話題を慌てて逸らす。
僕がそう言うと、ライネスも嬉しそうに頬を緩めた。


「ふふ、そうだね。私もフェリと花火見るの楽しみだよ」


言葉の通り、とっても楽しそうにほくほくとした空気を纏うライネスを見上げる。

ライネスと花火を見る……きっとその時が、先延ばしにした話を伝える最後のチャンスだ。
浮かれてすっかり頭から抜けていたけれど、仮に帝国を出るとなれば、ライネスとの結婚にも差し障りが生じるかもしれない。

旅行気分で考えていたけれど、この話はもっと大きな問題になるかもしれないのだ。
だから、しっかり話さないと。シモンやアル先生にも背を押された通り、大事なことはきちんと伝えなきゃいけないから。


「あ、シモンは仕事とか大丈夫?後夜祭の時間に被ってない?」


ふとライネスがシモンに尋ねる。僕もそういえば、と思ってライネスに続いた。


「先生のお仕事、残ってるなら、今のうちにやるといいよ!」


お兄さんらしくキリッとアドバイスする。
てっきりまたニコニコ笑ってお礼を言うと思ったのに、シモンは僕の予想に反して呆れたような表情を浮かべた。


「……いや、あの、あなた達ね。お二人とも本気ですか?」

「……?なんのこと?」

「どういうこと……?」


僕とライネスが同時にきょとんと首を傾げる。
するとシモンは、とっても大きくて長くて深い溜め息を吐き出した。なにごとかね。


「いやいや!わかってます!?これ、文化祭ですよ!?そんでもって後夜祭!花火!どこの世界にカップルの花火鑑賞にちゃっかり同行する侍従がいるんですか!」


久しぶりにシモンによる早口のお説教を食らってしまった。
あわわ、とびっくり仰け反った体勢から我に返る。僕はライネスとぱちくり顔を見合わせて、すぐに『やだなー』といった感じに笑った。


「なにいってるの。シモンは、いつも一緒だよ。花火きれいだから、シモンもおいで」

「そうだね。フェリもシモンが居たらもっと楽しめるはずだ。フェリが楽しむ為にも君は必要だよ。シモンもおいで」


揃ってちょいちょいと手を振る僕とライネス。
シモンはまたもや特大の溜め息を吐くと、今度は何やら諦めた様子で「いいえ!」と首を横に振った。


「申し訳ありませんが、ちょうど後夜祭の時間に外せない仕事がありますので!」

「え……そうなの」

「それは残念だね……」


ライネスと揃ってしょんぼり肩を落とす。

残念なことにシモンは来られないみたいだけれど、僕に一大任務があるのは変わらない。
ライネスに例の話を伝えて、できればこの文化祭を最後まで良い空気で終わりたい。

その為には、ライネスにどんな反応をされても怖気付かないように覚悟をしておかないと。

とにかく大事なのは、あまり気を張らないこと。
それを意識して深呼吸すると、僕はなるべくいつも通りの感覚で会話を再開した。


「ライネス。今日はだめみたいだから、今度のお休みに、三人でおでかけしよう」

「そうだね。シモンの好きなチョコケーキのお店なんか良いんじゃないかな」


今後の予定をワクワクと話し始める僕達をよそに、なぜかシモンは「まったくこの二人は……」と疲れた様子で項垂れていた。
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