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番外編
if.レナード×フェリアル
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※※レナード×フェリアルのif番外編です※※
(地雷の方はご注意下さい!)
────
「──……リ……フェリ」
優しい声で目が覚めた。
額やらほっぺやら鼻やらにちゅっちゅと忙しなく柔い感触が触れている。擽ったくて思わず「むぅ……」と不服に唇を尖らせると、今度はその唇に柔い感触がちゅっと触れた。
そこまでされると流石に完全に目が覚めて、今のはなんぞ?とぱちくりしながら頭を覚醒させる。
ぼやけた視界がやがて明確になると、目の前にとんでもない美形が突如現れてぴたっと硬直してしまった。
「おはようございます、フェリ。今日も愛していますよ。はい、おはようのキスをどうぞ」
キラキラッとした笑顔に、いつものごとく寝起きから多すぎる情報量。
僕が寝起きでぽやんぽやんとなっている間に、あえてたくさんの情報と指示を与えることで思い通りに僕を動かす策、流石にそろそろ分かってきたぞとほっぺを膨らませる。
昨日まではこの策にまんまと乗って、ぼくもあいしてるよーと言いながらちゅーをしてしまったけれど……今朝は別だ!もうその手には乗らないものっ、とドヤ顔を浮かべて言い放つ。
「むにゃむにゃ……ふふんっ!もうその手にはのっからないの。レオの意地悪はおみとーしだもの」
むぅ、ちょっぴり眠気が残っているでござる……。
目を擦りながらどどやぁと言い放つと、レオは途端にきょとんとぱちくり瞬いた。
ふふん、どうやら僕の賢さにびっくり仰天おどろき桃の木をしてしまったようだ。
今日は僕がレオより一枚上手……と二度目のどどどやぁをお見舞いしようとした時、ふいにレオがニコッと笑顔を浮かべたかと思うと、いつもの余裕たっぷりキラキラスマイルで予想外の返答をしてきた。
「おやそうでしたか。それじゃあ今朝のおはようのキスは一度でやめですね。残念です」
「……む?いっかい?」
「えぇ。いつも二回しているでしょう?フェリが起きる直前に一回、起きた直後にもう一回」
ニコニコレオの言葉に理解が追い付かず、なんのこっちゃとぐるぐる頭が回る。
やがてその言葉の意味を理解した途端、昨日の朝までのおはようのちゅーを思い出してぽふっと顔を真っ赤に染めた。
起きる前に唇に感じたあのふにゅっとした柔らかさ。あれはレオのちゅーだったのか……!と全身が熱くなる。
「なななっ、も、もうしてた!」
「もうしてましたよ?あれ?もしかして気付いていませんでした?気付かないで、さっきは愛らしいドヤ顔を浮かべていたのですか?」
ニコニコしながら意地悪な言葉を浴びせてくるレオ。
僕は恥ずかしさと照れくささでもうだめになって、ぷくーっと思いっきりほっぺを膨らませた状態でふんすっと布団に潜り込んでしまった。
「もうしらないっ!レオなんてもう知らないのっ!」
ふかふかの毛布の下に丸まってムスーッとふて寝する。
きっと外から見ればしょぼくれた芋虫みたいになっていることだろう。ぷくぷくとほっぺを膨らませて羞恥の涙に耐えていると、ふいに温かな手が毛布越しに僕の背を撫でた。
「フェリ、フェリ。ごめんなさい……フェリがあまりにも可愛らしくて、つい意地悪してしまいました……どうか愚かな私を許して、愛するフェリのお顔を見せてくれませんか……?」
縋るような声を聞いて、ぷくっと膨れていた頬はたちまちぷしゅーっと萎んだ。
毛布を片側だけそっと持ち上げて「……きて」と小さな声で誘う。蚊の鳴くような声もレオにはしっかり届いたようで、すぐにほっとしたような気配と共にレオが隣に潜り込んできた。
ちょっぴり息苦しい毛布の中、ぴったりと外界から遮断された暗い空間で、嬉しそうに微笑むレオと視線が合う。
丸まっていた身体をぎゅうっと抱き締められ、耳元でレオの甘い声が囁いた。
「あぁっフェリ……好きです、愛しています。ここは良いですね……狭くて、フェリのちっちゃな身体も甘い匂いも、よく分かります……」
腕でも足でもきつく拘束され、これは自力では抜け出せないなとふいに悟った。
暗く狭い、閉じ込められた空間で逃げ出すことも出来ない……冷静に今の状況を分析すると、ちょっぴり怖いかもなんてがくがく震えてしまった。
けれど、その震えもすぐに収まる。伝わる温もりが、大好きなレオのものだということを思いだしたから。
そろーりと顔を上げると、すぐそこにレオの顔がある。
なぜか熱っぽく潤んだ瞳に蕩けた甘い笑みを浮かべる、レオの顔が。
「あぁごめんなさい……考えれば考えるほど、今の状況が最高に幸せで……まるでフェリと一緒に棺桶に入っているみたいでゾクゾクしますね」
想像がなんだか物騒だなぁ……と思ったけれどむぐっと口を噤んだ。
見る限り本当に幸せそうだから、あまり現実に戻さないでいてあげよう。レオが仮面を取っ払ってこんなにも素の蕩けた笑みを浮かべるなんて、無意識のものだと滅多にないから。
「レオ、ちゅーする?ちゅーしたら、もっと幸せになるかも」
蕩けた表情を見ていると、だんだんレオの幸せのお手伝いがしたくなって。この状況で何をしてあげたらレオは喜ぶのかな、と考えながらとりあえずちゅーを挙げてみた。
おはようのちゅーをしている時のレオはいつも幸せそうだったなって、ふと思い出したから。
何の気なしに伝えた提案だったけれど、僕はどうやら何かを間違えてしまったみたい。
レオは突如まん丸に目を見開き、その瞳からぽろぽろと涙を零し始めたのだ。
「え……え?私、いま夢を見ているのでしょうか……?なんだか幸せ過ぎる展開が続いているのですが……怖いです、どうしましょう、全部夢だったら……」
その言葉と涙に心がきゅーっとなって、すぐさまレオを精一杯の力で強く抱き締める。
自分からちゅーをするなんて慣れていないから、雛の給餌みたいなものになってしまったけれど……それでも頑張って真っ赤な顔でちゅーをして、レオをよしよしと撫でてあげた。
レオが今までたくさんの悲痛を経験して、これからもたくさんの疲労を抱えるということ。それは僕もよく理解している。
いつも余裕な顔をしてキラキラスマイルを浮かべるレオだけれど、実は誰よりも繊細で儚くて、危なっかしいメンタルと思考を持っている人なのだ。
僕はそれをよく知っている。理解している。
だから、レオが悲しくなったり苦しくなったりした時は、僕がレオをぎゅーっと抱き締めて、危ないところに行かないように引き留めてあげないと。
「レオ、レオ、だいすき。僕ね、レオのこと、とっても大好きだよ」
そう囁いた瞬間、ついさっきまで弱々しく泣いていたはずのレオに、突然力強くぎゅーっと抱き締め返された。
慌ててその抱擁を受け止めると、やがて耳元にレオの呟きが届き始める。
「──……フェリ、私のフェリ。実は私は、もしもフェリを捕まえることが出来たなら、籠の中に入れてずぅーっと出られないよう、閉じ込めてしまおうと考えていたのです」
突然の重い吐露に身体が強張る。けれど、不思議と恐怖は湧かなかった。
それはきっと、レオがそう考えそうだということくらい、ずっと前から僕も分かっていたからだ。
「……レオがそれで安心するなら、僕は平気だよ。レオのこと、とっても大好きだもの」
暗くて狭い、まるで世界に二人だけみたいな空間の中。ぽつりとそう返すと、レオはくしゃっと微笑んで、けれどすぐに弱々しく首を横に振った。
「ありがとう……フェリ。けれど、違います。いえ……初めは本当に、そう企んでいたのですが……段々と、分かったのです。私はずっと、勘違いをしていたのだということに」
勘違い?予想外の言葉に首を傾げる。
勘違いって、なんのことだろう。きょとんと瞬く僕を見下ろし、レオはとっても優しい色を宿した瞳をふわりと細めた。
浮かぶ微笑みもとっても柔らかくて、まるで重苦しい何かから解放されたみたいな……。
優しい笑みに思わず見惚れる僕に、レオは小さく呟いた。
「──籠の中に閉じ込められていたのは、私の方だったのです」
息を呑む。その言葉はきっと、塞ぎ込んでいた以前のレオの口からは絶対に出なかっただろう。
閉じ込められていた、なんて。そこから抜け出して飛び立つことが出来た人にしか言えない言葉だから。
続けて耳元で囁かれるセリフ。どれもこれも全て、レオの想いが苦しいくらいに伝わるものだった。
──籠の中の鳥は私でした。
──籠はもう鳥が抜け出した後の、使い終えた空の屑籠。
「──……そんな屑籠にフェリを閉じ込めようなど、出来るはずもありません」
まるで大昔の恋文みたいな、いっそ初々しいくらいの告白にも聞こえるレオの言葉。
なんだか僕まで心がきゅーっと耐えられなくなって、涙がぽろぽろ溢れ出す。レオはそんな僕を強く強く抱き締め直して、ふいに毛布をばさりと剥ぎ取った。
途端に視界を照らす眩いくらいの朝日に目を細める。
突然広がった空間に瞬くと、レオが今度は儚い微笑みを悪戯っぽく深めた。
「だからフェリは、心だけ私の中に閉じ込められていてください」
「こころ、だけ……?」
「えぇ。明るくて、広い世界で、自由に。心だけを私に」
ぱちくりと瞬く。
それは──ただただ純粋に相手と心を通わせる世の恋人たちと、一体何が違うと言うのだろう。
以前のレオなら、そんな広い意味での自由なんて絶対に口にしなかった。
あぁそうか。だからこんなに涙が溢れるんだ。レオが、純粋な想いの示し方を知ろうとしてくれたから。
「むぅ……」
「うん?どうしてむぅなのですか?可愛すぎて困惑なのですが……ぎゅうしても良いですか?」
「……むぅ」
涙を隠すためと、真っ赤な顔の照れ隠しのため。
むぅっと唸りながらレオの胸元にうりうりと顔を埋める。するとレオに困惑気味にぎゅうっと抱き締められて、心にも身体にも広がるぽかぽかとした温もりに思わず「レオ」と呼びかけた。
「ん、どうしました?」
「……すき」
ぽつりと呟いた瞬間、僕の体を包むレオの全身がぐぅっと強張る。見上げなくても、レオの顔が今真っ赤っかに染まっているのだろうということを悟った。
きっと梅干を食べた直後みたいに、きゅーっとした表情を浮かべていることだろう。
「──私も、愛しています」
返された言葉は予想通り。
ぽろぽろと涙が溢れたままの顔をふにゃあっと緩めると、その一瞬の油断をついてレオに顔を覗き込まれた。
ふにゃふにゃの泣き笑いみたいな僕の表情を見たレオが、更にかぁっと頬を染める。
結局、問答無用で部屋に上がり込んできたギデオンに引き剥がされるまで、レオが僕をむぎゅむぎゅして離すことはなかった。
(地雷の方はご注意下さい!)
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「──……リ……フェリ」
優しい声で目が覚めた。
額やらほっぺやら鼻やらにちゅっちゅと忙しなく柔い感触が触れている。擽ったくて思わず「むぅ……」と不服に唇を尖らせると、今度はその唇に柔い感触がちゅっと触れた。
そこまでされると流石に完全に目が覚めて、今のはなんぞ?とぱちくりしながら頭を覚醒させる。
ぼやけた視界がやがて明確になると、目の前にとんでもない美形が突如現れてぴたっと硬直してしまった。
「おはようございます、フェリ。今日も愛していますよ。はい、おはようのキスをどうぞ」
キラキラッとした笑顔に、いつものごとく寝起きから多すぎる情報量。
僕が寝起きでぽやんぽやんとなっている間に、あえてたくさんの情報と指示を与えることで思い通りに僕を動かす策、流石にそろそろ分かってきたぞとほっぺを膨らませる。
昨日まではこの策にまんまと乗って、ぼくもあいしてるよーと言いながらちゅーをしてしまったけれど……今朝は別だ!もうその手には乗らないものっ、とドヤ顔を浮かべて言い放つ。
「むにゃむにゃ……ふふんっ!もうその手にはのっからないの。レオの意地悪はおみとーしだもの」
むぅ、ちょっぴり眠気が残っているでござる……。
目を擦りながらどどやぁと言い放つと、レオは途端にきょとんとぱちくり瞬いた。
ふふん、どうやら僕の賢さにびっくり仰天おどろき桃の木をしてしまったようだ。
今日は僕がレオより一枚上手……と二度目のどどどやぁをお見舞いしようとした時、ふいにレオがニコッと笑顔を浮かべたかと思うと、いつもの余裕たっぷりキラキラスマイルで予想外の返答をしてきた。
「おやそうでしたか。それじゃあ今朝のおはようのキスは一度でやめですね。残念です」
「……む?いっかい?」
「えぇ。いつも二回しているでしょう?フェリが起きる直前に一回、起きた直後にもう一回」
ニコニコレオの言葉に理解が追い付かず、なんのこっちゃとぐるぐる頭が回る。
やがてその言葉の意味を理解した途端、昨日の朝までのおはようのちゅーを思い出してぽふっと顔を真っ赤に染めた。
起きる前に唇に感じたあのふにゅっとした柔らかさ。あれはレオのちゅーだったのか……!と全身が熱くなる。
「なななっ、も、もうしてた!」
「もうしてましたよ?あれ?もしかして気付いていませんでした?気付かないで、さっきは愛らしいドヤ顔を浮かべていたのですか?」
ニコニコしながら意地悪な言葉を浴びせてくるレオ。
僕は恥ずかしさと照れくささでもうだめになって、ぷくーっと思いっきりほっぺを膨らませた状態でふんすっと布団に潜り込んでしまった。
「もうしらないっ!レオなんてもう知らないのっ!」
ふかふかの毛布の下に丸まってムスーッとふて寝する。
きっと外から見ればしょぼくれた芋虫みたいになっていることだろう。ぷくぷくとほっぺを膨らませて羞恥の涙に耐えていると、ふいに温かな手が毛布越しに僕の背を撫でた。
「フェリ、フェリ。ごめんなさい……フェリがあまりにも可愛らしくて、つい意地悪してしまいました……どうか愚かな私を許して、愛するフェリのお顔を見せてくれませんか……?」
縋るような声を聞いて、ぷくっと膨れていた頬はたちまちぷしゅーっと萎んだ。
毛布を片側だけそっと持ち上げて「……きて」と小さな声で誘う。蚊の鳴くような声もレオにはしっかり届いたようで、すぐにほっとしたような気配と共にレオが隣に潜り込んできた。
ちょっぴり息苦しい毛布の中、ぴったりと外界から遮断された暗い空間で、嬉しそうに微笑むレオと視線が合う。
丸まっていた身体をぎゅうっと抱き締められ、耳元でレオの甘い声が囁いた。
「あぁっフェリ……好きです、愛しています。ここは良いですね……狭くて、フェリのちっちゃな身体も甘い匂いも、よく分かります……」
腕でも足でもきつく拘束され、これは自力では抜け出せないなとふいに悟った。
暗く狭い、閉じ込められた空間で逃げ出すことも出来ない……冷静に今の状況を分析すると、ちょっぴり怖いかもなんてがくがく震えてしまった。
けれど、その震えもすぐに収まる。伝わる温もりが、大好きなレオのものだということを思いだしたから。
そろーりと顔を上げると、すぐそこにレオの顔がある。
なぜか熱っぽく潤んだ瞳に蕩けた甘い笑みを浮かべる、レオの顔が。
「あぁごめんなさい……考えれば考えるほど、今の状況が最高に幸せで……まるでフェリと一緒に棺桶に入っているみたいでゾクゾクしますね」
想像がなんだか物騒だなぁ……と思ったけれどむぐっと口を噤んだ。
見る限り本当に幸せそうだから、あまり現実に戻さないでいてあげよう。レオが仮面を取っ払ってこんなにも素の蕩けた笑みを浮かべるなんて、無意識のものだと滅多にないから。
「レオ、ちゅーする?ちゅーしたら、もっと幸せになるかも」
蕩けた表情を見ていると、だんだんレオの幸せのお手伝いがしたくなって。この状況で何をしてあげたらレオは喜ぶのかな、と考えながらとりあえずちゅーを挙げてみた。
おはようのちゅーをしている時のレオはいつも幸せそうだったなって、ふと思い出したから。
何の気なしに伝えた提案だったけれど、僕はどうやら何かを間違えてしまったみたい。
レオは突如まん丸に目を見開き、その瞳からぽろぽろと涙を零し始めたのだ。
「え……え?私、いま夢を見ているのでしょうか……?なんだか幸せ過ぎる展開が続いているのですが……怖いです、どうしましょう、全部夢だったら……」
その言葉と涙に心がきゅーっとなって、すぐさまレオを精一杯の力で強く抱き締める。
自分からちゅーをするなんて慣れていないから、雛の給餌みたいなものになってしまったけれど……それでも頑張って真っ赤な顔でちゅーをして、レオをよしよしと撫でてあげた。
レオが今までたくさんの悲痛を経験して、これからもたくさんの疲労を抱えるということ。それは僕もよく理解している。
いつも余裕な顔をしてキラキラスマイルを浮かべるレオだけれど、実は誰よりも繊細で儚くて、危なっかしいメンタルと思考を持っている人なのだ。
僕はそれをよく知っている。理解している。
だから、レオが悲しくなったり苦しくなったりした時は、僕がレオをぎゅーっと抱き締めて、危ないところに行かないように引き留めてあげないと。
「レオ、レオ、だいすき。僕ね、レオのこと、とっても大好きだよ」
そう囁いた瞬間、ついさっきまで弱々しく泣いていたはずのレオに、突然力強くぎゅーっと抱き締め返された。
慌ててその抱擁を受け止めると、やがて耳元にレオの呟きが届き始める。
「──……フェリ、私のフェリ。実は私は、もしもフェリを捕まえることが出来たなら、籠の中に入れてずぅーっと出られないよう、閉じ込めてしまおうと考えていたのです」
突然の重い吐露に身体が強張る。けれど、不思議と恐怖は湧かなかった。
それはきっと、レオがそう考えそうだということくらい、ずっと前から僕も分かっていたからだ。
「……レオがそれで安心するなら、僕は平気だよ。レオのこと、とっても大好きだもの」
暗くて狭い、まるで世界に二人だけみたいな空間の中。ぽつりとそう返すと、レオはくしゃっと微笑んで、けれどすぐに弱々しく首を横に振った。
「ありがとう……フェリ。けれど、違います。いえ……初めは本当に、そう企んでいたのですが……段々と、分かったのです。私はずっと、勘違いをしていたのだということに」
勘違い?予想外の言葉に首を傾げる。
勘違いって、なんのことだろう。きょとんと瞬く僕を見下ろし、レオはとっても優しい色を宿した瞳をふわりと細めた。
浮かぶ微笑みもとっても柔らかくて、まるで重苦しい何かから解放されたみたいな……。
優しい笑みに思わず見惚れる僕に、レオは小さく呟いた。
「──籠の中に閉じ込められていたのは、私の方だったのです」
息を呑む。その言葉はきっと、塞ぎ込んでいた以前のレオの口からは絶対に出なかっただろう。
閉じ込められていた、なんて。そこから抜け出して飛び立つことが出来た人にしか言えない言葉だから。
続けて耳元で囁かれるセリフ。どれもこれも全て、レオの想いが苦しいくらいに伝わるものだった。
──籠の中の鳥は私でした。
──籠はもう鳥が抜け出した後の、使い終えた空の屑籠。
「──……そんな屑籠にフェリを閉じ込めようなど、出来るはずもありません」
まるで大昔の恋文みたいな、いっそ初々しいくらいの告白にも聞こえるレオの言葉。
なんだか僕まで心がきゅーっと耐えられなくなって、涙がぽろぽろ溢れ出す。レオはそんな僕を強く強く抱き締め直して、ふいに毛布をばさりと剥ぎ取った。
途端に視界を照らす眩いくらいの朝日に目を細める。
突然広がった空間に瞬くと、レオが今度は儚い微笑みを悪戯っぽく深めた。
「だからフェリは、心だけ私の中に閉じ込められていてください」
「こころ、だけ……?」
「えぇ。明るくて、広い世界で、自由に。心だけを私に」
ぱちくりと瞬く。
それは──ただただ純粋に相手と心を通わせる世の恋人たちと、一体何が違うと言うのだろう。
以前のレオなら、そんな広い意味での自由なんて絶対に口にしなかった。
あぁそうか。だからこんなに涙が溢れるんだ。レオが、純粋な想いの示し方を知ろうとしてくれたから。
「むぅ……」
「うん?どうしてむぅなのですか?可愛すぎて困惑なのですが……ぎゅうしても良いですか?」
「……むぅ」
涙を隠すためと、真っ赤な顔の照れ隠しのため。
むぅっと唸りながらレオの胸元にうりうりと顔を埋める。するとレオに困惑気味にぎゅうっと抱き締められて、心にも身体にも広がるぽかぽかとした温もりに思わず「レオ」と呼びかけた。
「ん、どうしました?」
「……すき」
ぽつりと呟いた瞬間、僕の体を包むレオの全身がぐぅっと強張る。見上げなくても、レオの顔が今真っ赤っかに染まっているのだろうということを悟った。
きっと梅干を食べた直後みたいに、きゅーっとした表情を浮かべていることだろう。
「──私も、愛しています」
返された言葉は予想通り。
ぽろぽろと涙が溢れたままの顔をふにゃあっと緩めると、その一瞬の油断をついてレオに顔を覗き込まれた。
ふにゃふにゃの泣き笑いみたいな僕の表情を見たレオが、更にかぁっと頬を染める。
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