追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第51話

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 街道を離れ、森沿いの小道へ入ると、空気が一段と静まった。鳥の声が遠く、木々の葉擦れが一定のリズムで続いている。視界は悪くないが、足元は柔らかく、痕跡が残りやすい。

「ここから先、嫌な感じがする」

 先頭を歩いていたフィーナが足を止めた。淡い光が彼女の足元に広がり、地面の様子を確かめる。

「どうした」

「森が、落ち着いてない。踏み荒らされた跡が多いのに、逃げた気配がない」

 アリアが鼻を鳴らす。

「待ち伏せか」

「可能性は高い」

 ライトは周囲を見回し、剣に手をかけた。ミリュウが肩で身を低くし、喉を鳴らす。

 次の瞬間だった。

 木々の間から、鈍い衝撃音が響いた。

 地面が揺れる。

「下から来る!」

 フィーナの声と同時に、土が盛り上がった。太い腕のようなものが地面を突き破り、唸り声が森に広がる。

 土塊の魔獣。

 だが、普通のものとは違う。動きが速く、狙いが正確すぎる。

「操られてるな」

 ライトは踏み込み、剣を振る。

「《斬撃強化(中)》」

 刃が土を削り取るが、すぐに再生する。硬さも、粘りも増している。

 リオナが距離を取り、杖を掲げた。

「ストーンブレイク!」

 衝撃波が土塊を砕くが、完全には止まらない。

「土だけじゃない!」

 アリアが叫ぶ。木々の間から、さらに二体。左右から挟む動き。

 その瞬間、フィーナが一歩前に出た。

「私が抑える」

 ライトは即座に判断する。

「任せる」

 フィーナは両手を広げ、静かに息を整えた。足元の草木が揺れ、地面の色がわずかに変わる。

 土塊の魔獣が踏み込んだ瞬間、地面が沈んだ。

 絡みつく根。

 足を取られ、動きが止まる。

「……自然の力、か」

 リオナが思わず呟く。

 だが、それだけでは終わらない。魔獣の背後、木の上から人影が落ちてきた。

 外套の男。

 刃が一直線にライトへ向かう。

 ライトは半歩下がり、剣を振る。

「《ウィンドLv1》」

 風が刃を逸らし、軌道がずれる。その隙にアリアが割り込んだ。

「遅い」

 一閃。

 外套が裂け、男は地面に叩きつけられる。

 だが、別方向から魔法が飛んできた。

 土の塊を圧縮した弾丸。

 ライトは反射的に踏ん張る。

 衝撃が走る。

 だが、身体が崩れない。

 脚に、確かな力が通っていた。

 剣を構え直し、前に出る。

「今だ」

 フィーナが地面を踏みしめる。

 根が一斉に締まり、土塊の魔獣が完全に動きを止めた。

 リオナが詠唱を短く切る。

「フレイムボール」

 火球が弱点を撃ち抜き、土塊が崩れ落ちる。

 残る一体も、アリアの踏み込みで沈黙した。

 静寂が戻る。

 森が、ゆっくりと息を整えるようだった。

「……助かった」

 ライトが言うと、フィーナは小さく首を振った。

「私も、守られてる」

 視線はライトとミリュウに向いている。

 ミリュウが短く鳴いた。

「ミリュ」

 倒れた外套の男は、すでに息をしていなかった。だが、その身体には、洞窟や集落で見たものと同じ歪みがある。

「やっぱり、組織的ね」

 リオナが眉を寄せる。

「しかも、森や土にまで手を出してる」

 ライトは森の奥を見据えた。

「範囲が広がってる」

 勇者パーティ、追手、魔獣、改変。

 それぞれが別々に動いているようで、確実に重なり始めている。

「戻ろう」

 ライトが言う。

「今日は十分だ」

 誰も異論はなかった。

 帰路につく四人の背後で、森が静かに揺れた。

 それを、誰も見ていない。
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