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第54話
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朝の川は静かだった。
霧が薄く流れ、水面は鈍く光っている。鳥の声も少ない。人の手が入っていない自然のはずなのに、どこか息苦しさが残っていた。
「……ここが、被害が出てる川沿いか」
ライトは足元の湿った地面を確かめながら進む。
背後には、三つの気配があった。
リオナは周囲を見渡しながら、常に杖を持つ手を緩めない。
アリアは少し前を歩き、獣人特有の感覚で空気を探っている。
フィーナは一歩遅れて、川の流れに指先を伸ばしていた。
「魚の気配が……薄いです」
フィーナの声は小さいが、はっきりしている。
「昨日までは、もっと流れがありました。水が、ここで止まってる」
ライトは川を見た。
確かに、水は流れている。だが“動いている感じ”がしない。
「せき止められてるわけじゃない。でも……」
リオナが眉を寄せる。
「魔力が散ってる。自然な残り方じゃない」
アリアが低く唸った。
「匂いもおかしい。魔獣じゃない。でも、人間とも違う」
「全員、止まれ」
ライトは手を上げる。
一歩、踏み出しただけで分かる。地面が柔らかすぎる。
「この辺り、足を取られる」
その瞬間だった。
川の中央、水面がわずかに盛り上がる。
泡が浮き、次の瞬間、何かが“這い上がった”。
「……来る!」
アリアが即座に前へ出る。
現れたのは、魔獣だった。
だが、見覚えのある種類じゃない。四足だが関節が不自然に多く、体表は水を吸った泥のように歪んでいる。
「動きが……変だ!」
リオナが距離を取り、即座に詠唱する。
「フレイムボール」
火球が直撃する。
だが、魔獣は倒れない。
水を被った体表が、衝撃を流す。
「耐性持ちか」
ライトは前に出る。
「アリア、正面抑えろ」
「任せろ!」
アリアが剣を振るう。重い一撃。だが、斬り応えが鈍い。
「硬い……!」
フィーナが一歩前に出る。
「水が、歪められています。流れを無理やり……」
言葉の途中で、魔獣が地面を叩いた。
泥水が跳ね、足元を絡め取る。
ライトは踏ん張った。
脚に力が通る。
動きは止まらない。
「《斬撃強化(中)》」
剣が走り、魔獣の首元を裂く。
今度は、確かな手応え。
魔獣は崩れ、水に溶けるように消えた。
静寂。
川の音だけが戻る。
「……普通じゃないわね」
リオナが息を整える。
「水に依存してる。でも、自然発生じゃない」
フィーナが川を見つめたまま言った。
「ここだけじゃありません。上流……もっと奥です」
ライトは頷く。
「だな。これで確定だ」
「何が?」
アリアが振り返る。
「魔獣被害は結果だ。本体は別にいる」
川の流れを見据える。
「この川沿い、拠点にされてる」
風が吹き、霧がわずかに晴れた。
上流方向。
木々の隙間に、人為的な痕跡が見える。
「……行く?」
リオナが聞く。
「今日は様子見までだ」
ライトは即答した。
「場所は掴んだ。深追いはしない」
フィーナが小さく頷く。
「自然が、嫌がっています。ここ」
アリアが笑った。
「じゃあ、ぶっ壊すのは後だな」
ライトは剣を鞘に収める。
「次は、準備して来る」
川の奥から、微かに水音が響いた。
さっきとは違う。
生き物の音じゃない。
誰かが、動かしている音だ。
四人は何も言わず、引き返した。
この川は、まだ入口に過ぎない。
霧が薄く流れ、水面は鈍く光っている。鳥の声も少ない。人の手が入っていない自然のはずなのに、どこか息苦しさが残っていた。
「……ここが、被害が出てる川沿いか」
ライトは足元の湿った地面を確かめながら進む。
背後には、三つの気配があった。
リオナは周囲を見渡しながら、常に杖を持つ手を緩めない。
アリアは少し前を歩き、獣人特有の感覚で空気を探っている。
フィーナは一歩遅れて、川の流れに指先を伸ばしていた。
「魚の気配が……薄いです」
フィーナの声は小さいが、はっきりしている。
「昨日までは、もっと流れがありました。水が、ここで止まってる」
ライトは川を見た。
確かに、水は流れている。だが“動いている感じ”がしない。
「せき止められてるわけじゃない。でも……」
リオナが眉を寄せる。
「魔力が散ってる。自然な残り方じゃない」
アリアが低く唸った。
「匂いもおかしい。魔獣じゃない。でも、人間とも違う」
「全員、止まれ」
ライトは手を上げる。
一歩、踏み出しただけで分かる。地面が柔らかすぎる。
「この辺り、足を取られる」
その瞬間だった。
川の中央、水面がわずかに盛り上がる。
泡が浮き、次の瞬間、何かが“這い上がった”。
「……来る!」
アリアが即座に前へ出る。
現れたのは、魔獣だった。
だが、見覚えのある種類じゃない。四足だが関節が不自然に多く、体表は水を吸った泥のように歪んでいる。
「動きが……変だ!」
リオナが距離を取り、即座に詠唱する。
「フレイムボール」
火球が直撃する。
だが、魔獣は倒れない。
水を被った体表が、衝撃を流す。
「耐性持ちか」
ライトは前に出る。
「アリア、正面抑えろ」
「任せろ!」
アリアが剣を振るう。重い一撃。だが、斬り応えが鈍い。
「硬い……!」
フィーナが一歩前に出る。
「水が、歪められています。流れを無理やり……」
言葉の途中で、魔獣が地面を叩いた。
泥水が跳ね、足元を絡め取る。
ライトは踏ん張った。
脚に力が通る。
動きは止まらない。
「《斬撃強化(中)》」
剣が走り、魔獣の首元を裂く。
今度は、確かな手応え。
魔獣は崩れ、水に溶けるように消えた。
静寂。
川の音だけが戻る。
「……普通じゃないわね」
リオナが息を整える。
「水に依存してる。でも、自然発生じゃない」
フィーナが川を見つめたまま言った。
「ここだけじゃありません。上流……もっと奥です」
ライトは頷く。
「だな。これで確定だ」
「何が?」
アリアが振り返る。
「魔獣被害は結果だ。本体は別にいる」
川の流れを見据える。
「この川沿い、拠点にされてる」
風が吹き、霧がわずかに晴れた。
上流方向。
木々の隙間に、人為的な痕跡が見える。
「……行く?」
リオナが聞く。
「今日は様子見までだ」
ライトは即答した。
「場所は掴んだ。深追いはしない」
フィーナが小さく頷く。
「自然が、嫌がっています。ここ」
アリアが笑った。
「じゃあ、ぶっ壊すのは後だな」
ライトは剣を鞘に収める。
「次は、準備して来る」
川の奥から、微かに水音が響いた。
さっきとは違う。
生き物の音じゃない。
誰かが、動かしている音だ。
四人は何も言わず、引き返した。
この川は、まだ入口に過ぎない。
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