追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第53話

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 街道沿いの小高い丘に、焚き火の明かりが揺れていた。

 夜は深く、風は弱い。だが空気は張りつめている。

 勇者カイルは、地図を広げたまま黙っていた。焚き火の赤が、その横顔を照らしている。

「……報告が食い違ってる」

 低く言うと、アルシアが小さく肩をすくめた。

「魔獣被害、集落の混乱、街中での小競り合い。どれも単独じゃないわね」

 リデルは地面に腰を下ろし、矢羽根を整えながら言った。

「動きが散ってる。でも、無秩序じゃない」

「そうだ」

 カイルは地図の一点を指でなぞる。

「ここだ。川沿い、集落、洞窟、街外れ。全部、同じ線上にある」

 焚き火が弾ける音が、短く響いた。

 アルシアが視線を上げる。

「ライトの動線と、重なってる」

 その名が出た瞬間、リデルの手が止まった。

「……偶然?」

「偶然なら、出来すぎてる」

 カイルは視線を逸らさずに答える。

「竜、異常な成長速度、魔獣の活性。どれも、放っておける段階じゃない」

 アルシアは口を開きかけて、閉じた。

 代わりに、小さく息を吐く。

「……あの子、前とは別人みたいだって話よ」

「聞いた」

 カイルは短く頷く。

「洞窟で外套の連中を退け、街中でも被害を抑えた。しかも、パーティでだ」

「仲間、揃えたのね」

「揃いつつある」

 リデルが矢を一本、地面に突き立てた。

「それが問題?」

「状況次第だ」

 カイルは地図を畳み、焚き火を見る。

「力を得た者が、どこへ向かうか。そこが重要だ」

 アルシアは腕を組んだ。

「ライトは、逃げない」

「知ってる」

 即答だった。

「昔から、そうだった」

 一瞬、沈黙が落ちる。

 焚き火の音だけが続く。

 やがて、リデルが口を開いた。

「外套の連中、完全に別口だ。国の影でもない」

「分かってる」

 カイルは立ち上がり、丘の下を見下ろした。

 街の灯りが、遠くに見える。

「だから、厄介なんだ」

 アルシアが苦笑する。

「勇者パーティが動いてるって噂、もう広がってるわよ」

「構わない」

 カイルは振り返らない。

「隠す段階は過ぎた」

「じゃあ、どうするの?」

 アルシアの問いに、カイルは少し間を置いた。

「監視を続ける」

 短く、だがはっきりと。

「ライトにも、外套にも。両方だ」

 リデルが眉をひそめる。

「ぶつかる可能性は?」

「高い」

 カイルは否定しなかった。

「だが、今じゃない」

 焚き火を踏み越え、影の中へ歩き出す。

「力を得た人間は、試される」

 振り返り、二人を見る。

「自分が、何を守るかでな」

 アルシアは小さく笑った。

「……相変わらずね」

 リデルは静かに矢を回収する。

「じゃあ、次は?」

「街へ戻る」

 カイルは答えた。

「情報を集める。水の使い手、魔導具、魔獣の動き。全部だ」

 焚き火を消し、三人は夜へ溶ける。

 街では今、別の火種が静かに燻っている。

 それが誰の手によるものか。

 まだ、確定していないだけだ。

 だが、確実に言えることが一つある。

 この街を中心に、力が集まり始めている。

 ライトだけじゃない。

 選ばれた者たちが。
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