追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

文字の大きさ
54 / 72

第54話

しおりを挟む
 朝の川は静かだった。

 霧が薄く流れ、水面は鈍く光っている。鳥の声も少ない。人の手が入っていない自然のはずなのに、どこか息苦しさが残っていた。

「……ここが、被害が出てる川沿いか」

 ライトは足元の湿った地面を確かめながら進む。

 背後には、三つの気配があった。

 リオナは周囲を見渡しながら、常に杖を持つ手を緩めない。
 アリアは少し前を歩き、獣人特有の感覚で空気を探っている。
 フィーナは一歩遅れて、川の流れに指先を伸ばしていた。

「魚の気配が……薄いです」

 フィーナの声は小さいが、はっきりしている。

「昨日までは、もっと流れがありました。水が、ここで止まってる」

 ライトは川を見た。

 確かに、水は流れている。だが“動いている感じ”がしない。

「せき止められてるわけじゃない。でも……」

 リオナが眉を寄せる。

「魔力が散ってる。自然な残り方じゃない」

 アリアが低く唸った。

「匂いもおかしい。魔獣じゃない。でも、人間とも違う」

「全員、止まれ」

 ライトは手を上げる。

 一歩、踏み出しただけで分かる。地面が柔らかすぎる。

「この辺り、足を取られる」

 その瞬間だった。

 川の中央、水面がわずかに盛り上がる。

 泡が浮き、次の瞬間、何かが“這い上がった”。

「……来る!」

 アリアが即座に前へ出る。

 現れたのは、魔獣だった。

 だが、見覚えのある種類じゃない。四足だが関節が不自然に多く、体表は水を吸った泥のように歪んでいる。

「動きが……変だ!」

 リオナが距離を取り、即座に詠唱する。

「フレイムボール」

 火球が直撃する。

 だが、魔獣は倒れない。

 水を被った体表が、衝撃を流す。

「耐性持ちか」

 ライトは前に出る。

「アリア、正面抑えろ」

「任せろ!」

 アリアが剣を振るう。重い一撃。だが、斬り応えが鈍い。

「硬い……!」

 フィーナが一歩前に出る。

「水が、歪められています。流れを無理やり……」

 言葉の途中で、魔獣が地面を叩いた。

 泥水が跳ね、足元を絡め取る。

 ライトは踏ん張った。

 脚に力が通る。

 動きは止まらない。

「《斬撃強化(中)》」

 剣が走り、魔獣の首元を裂く。

 今度は、確かな手応え。

 魔獣は崩れ、水に溶けるように消えた。

 静寂。

 川の音だけが戻る。

「……普通じゃないわね」

 リオナが息を整える。

「水に依存してる。でも、自然発生じゃない」

 フィーナが川を見つめたまま言った。

「ここだけじゃありません。上流……もっと奥です」

 ライトは頷く。

「だな。これで確定だ」

「何が?」

 アリアが振り返る。

「魔獣被害は結果だ。本体は別にいる」

 川の流れを見据える。

「この川沿い、拠点にされてる」

 風が吹き、霧がわずかに晴れた。

 上流方向。

 木々の隙間に、人為的な痕跡が見える。

「……行く?」

 リオナが聞く。

「今日は様子見までだ」

 ライトは即答した。

「場所は掴んだ。深追いはしない」

 フィーナが小さく頷く。

「自然が、嫌がっています。ここ」

 アリアが笑った。

「じゃあ、ぶっ壊すのは後だな」

 ライトは剣を鞘に収める。

「次は、準備して来る」

 川の奥から、微かに水音が響いた。

 さっきとは違う。

 生き物の音じゃない。

 誰かが、動かしている音だ。

 四人は何も言わず、引き返した。

 この川は、まだ入口に過ぎない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
*読者のみなさま  この作品をお読みいただきありがとうございました。こちらの作品は1月10日12時をもって非公開とさせていただきます。 『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。 女神から与えられた使命は「魔王討伐」。 しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。 戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。 だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。 獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。

神様のせいで最強魔力持ちにされたけどコミュ障だから、森の奥で人外の弟子とひっそり暮らしたい

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
極度のコミュニケーション障害で、まともに人と話せない青年、相川静(あいかわ しずか)。 彼はある日、女神の手違いで異世界に転移させられてしまう。 お詫びとして与えられたのは、世界を滅ぼせるほどの規格外の魔力。 しかし、コミュ障のシズカにとって、そんな目立つ力はトラブルの元でしかない。 彼は人目を避けるように、魔物が住む広大な森の奥深くへと逃げ込んだ。 そこで出会ったのは、親を亡くした一匹の幼いドラゴン。 言葉が通じないはずのドラゴンになぜか懐かれ、なし崩し的に弟子(?)として面倒を見る羽目に。 シズカは強すぎる魔力で獲物を狩り、ドラゴンに食事を与え、魔法をジェスチャーで教える。人間相手には一言も話せないが、ドラゴン相手なら不思議と心が安らぐのだった。 これは、最強の力を持つコミュ障青年が、人間社会から完全に孤立し、人外の弟子とのんびり暮らそうと奮闘する物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

処理中です...