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第四章:「大陸統一戦争」
第51話:リアの覚醒
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戦の余韻は、まだ森に残っていた。
夜明けの光が差し込むたびに、折れた枝や焦げた地面が浮かび上がる。
空気に漂うのは血と鉄、そして――燃え残った“祈り”の匂い。
リアは一人、森の奥で剣を研いでいた。
両の腕に残る痛みは、昨日の激戦の証だ。
「……やっぱり、聖教の連中は容赦ねぇな」
呟いた声は低く、しかし震えてはいなかった。
狼の耳がわずかに動く。
森の奥――何かが“呼んでいる”。
風でも、獣でもない。もっと、根源的な“声”。
「リア」
背後から声をかけたのはセリナだった。
彼女はまだ白衣の裾を焦がしたまま、息を整えている。
「……森の精気が騒いでる。あなた、何か感じた?」
リアは剣を置き、少し考えるように眉を寄せた。
「声がした。森の奥のほうから。けど、あたしを呼んでるのかどうかは……」
「呼んでるわ」セリナは言い切った。「あなたの“血”をね」
リアは無意識に自分の胸を押さえた。
脈が速い。熱が走る。
何かが体の奥で目覚めようとしている――そんな感覚。
「……これが、“狼王の血”ってやつか?」
セリナは頷く。「封印が解けかけている。昨日の戦いで、あなたの魂が限界を超えたの」
「限界を……?」
「でも、それは恐れることじゃない。力は暴れるためじゃなく、“守るため”にある」
⸻
そのころ、蓮は再生陣の修復を続けていた。
破損した魔導炉の調整、折れた兵器の再構築。
夜通しの作業で疲労は限界に達していたが、手は止まらない。
「……休め、蓮」真司が呆れ顔で言う。「お前、寝てねぇだろ」
「寝てる暇があったら一つでも多く直す」
「そう言ってんの、昨日も聞いた」
蓮は苦笑した。「俺、口癖になってる?」
「いや、病気だな」
二人の間に軽い笑いが生まれる。
ふと、セリナが戻ってきた。
「蓮。リアが……」
「リアが?」
「呼ばれてる。森の奥、“獣神の祭壇”に」
蓮は眉をひそめた。「……あの場所は、封印領域のはずだ」
「そう。でも今は違う。“目覚め”の時が来てる」
真司が息を呑む。「まさか、リアが――」
「ええ。獣王フェンリルの後継として」セリナの声は静かだった。
⸻
リアは森の奥へと進んでいた。
木々の間を抜けるたび、空気が重くなる。
まるで森全体が彼女を試しているようだった。
――この先に行けば、戻れない。
そんな直感が何度も心に響く。
それでも足を止めることはなかった。
やがて、開けた空間に出た。
巨大な石碑。
その中央に、狼の姿を模した紋章が刻まれている。
「……ここが、フェンリルの祭壇」
足元の石が淡く光り始めた。
声が聞こえる。
『――我が血を継ぐ者よ』
低く響く、雄々しい声。
「誰だ……?」
『お前の中に流れるもの。それが、我だ』
リアの胸の奥で、何かが弾けた。
白い光がほとばしり、髪が風に舞う。
「ぐっ……ああああああッ!!」
体中の血が熱に変わる。
腕の毛並みが逆立ち、瞳が金色に輝く。
脳裏に、遠い記憶が流れ込んできた。
――獣人の祖。狼王フェンリル。
人と神に追われ、滅ぼされた一族の記憶。
怒り、悲しみ、そして誇り。
『問おう。我が後継者よ。お前は何を守る?』
リアは震える唇で答えた。
「仲間を……! 蓮を、セリナを、真司を……! 誰も捨てねぇ!」
『ならば、その意志を刻め。我が爪と牙を、お前に託す』
白光が爆発した。
地を這う根が揺れ、空に雷が走る。
リアの体が宙に浮き、背から黒銀の尾が伸びる。
「……これが……“獣神化”……!」
意識が遠のく中、リアは確かに感じていた。
力が暴れている。でも、蓮たちの顔がそれを押し留めてくれている。
「大丈夫……あたしは、壊さねぇ……!」
⸻
その瞬間、森全体が震えた。
蓮たちは拠点で異変を感じ、同時に視線を上げる。
「……これは」セリナが息を呑む。
「リアの魔力反応だ」蓮が言う。
「でも、こんなの……スケールが違う!」真司が叫ぶ。
森の奥から、巨大な狼の影が立ち上がった。
その目は金色に輝き、口元には炎と風の力が宿っている。
リアの声が森を渡った。
「――来るぞ、蓮!」
次の瞬間、上空に白い裂け目が生まれた。
聖教軍の第二陣――“神罰部隊”が空から降下してきたのだ。
女神の象徴たる紋章が、森を焦がす。
「リア!」
蓮が叫んだ瞬間、金光が走る。
狼神の影が咆哮を上げ、光の槍を弾き飛ばした。
衝撃波が森を駆け抜ける。
リアが地に降り立ち、振り向いた。
その姿はもう、ただの獣人ではなかった。
髪は銀に変わり、瞳は金の炎。
「蓮――行こう。今度は、あたしが前を切る番だ!」
蓮は頷いた。「ああ、頼む」
リアが笑った。その笑顔は、狼の牙よりも強かった。
⸻
夜明けの森に、再び光が満ちる。
リアは覚醒した。
フェンリルの血、その真なる力。
それは破壊ではなく、守護の象徴。
“誰も捨てない”という誓いが、血よりも深く刻まれていた。
――世界は、再び動き出す。
夜明けの光が差し込むたびに、折れた枝や焦げた地面が浮かび上がる。
空気に漂うのは血と鉄、そして――燃え残った“祈り”の匂い。
リアは一人、森の奥で剣を研いでいた。
両の腕に残る痛みは、昨日の激戦の証だ。
「……やっぱり、聖教の連中は容赦ねぇな」
呟いた声は低く、しかし震えてはいなかった。
狼の耳がわずかに動く。
森の奥――何かが“呼んでいる”。
風でも、獣でもない。もっと、根源的な“声”。
「リア」
背後から声をかけたのはセリナだった。
彼女はまだ白衣の裾を焦がしたまま、息を整えている。
「……森の精気が騒いでる。あなた、何か感じた?」
リアは剣を置き、少し考えるように眉を寄せた。
「声がした。森の奥のほうから。けど、あたしを呼んでるのかどうかは……」
「呼んでるわ」セリナは言い切った。「あなたの“血”をね」
リアは無意識に自分の胸を押さえた。
脈が速い。熱が走る。
何かが体の奥で目覚めようとしている――そんな感覚。
「……これが、“狼王の血”ってやつか?」
セリナは頷く。「封印が解けかけている。昨日の戦いで、あなたの魂が限界を超えたの」
「限界を……?」
「でも、それは恐れることじゃない。力は暴れるためじゃなく、“守るため”にある」
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そのころ、蓮は再生陣の修復を続けていた。
破損した魔導炉の調整、折れた兵器の再構築。
夜通しの作業で疲労は限界に達していたが、手は止まらない。
「……休め、蓮」真司が呆れ顔で言う。「お前、寝てねぇだろ」
「寝てる暇があったら一つでも多く直す」
「そう言ってんの、昨日も聞いた」
蓮は苦笑した。「俺、口癖になってる?」
「いや、病気だな」
二人の間に軽い笑いが生まれる。
ふと、セリナが戻ってきた。
「蓮。リアが……」
「リアが?」
「呼ばれてる。森の奥、“獣神の祭壇”に」
蓮は眉をひそめた。「……あの場所は、封印領域のはずだ」
「そう。でも今は違う。“目覚め”の時が来てる」
真司が息を呑む。「まさか、リアが――」
「ええ。獣王フェンリルの後継として」セリナの声は静かだった。
⸻
リアは森の奥へと進んでいた。
木々の間を抜けるたび、空気が重くなる。
まるで森全体が彼女を試しているようだった。
――この先に行けば、戻れない。
そんな直感が何度も心に響く。
それでも足を止めることはなかった。
やがて、開けた空間に出た。
巨大な石碑。
その中央に、狼の姿を模した紋章が刻まれている。
「……ここが、フェンリルの祭壇」
足元の石が淡く光り始めた。
声が聞こえる。
『――我が血を継ぐ者よ』
低く響く、雄々しい声。
「誰だ……?」
『お前の中に流れるもの。それが、我だ』
リアの胸の奥で、何かが弾けた。
白い光がほとばしり、髪が風に舞う。
「ぐっ……ああああああッ!!」
体中の血が熱に変わる。
腕の毛並みが逆立ち、瞳が金色に輝く。
脳裏に、遠い記憶が流れ込んできた。
――獣人の祖。狼王フェンリル。
人と神に追われ、滅ぼされた一族の記憶。
怒り、悲しみ、そして誇り。
『問おう。我が後継者よ。お前は何を守る?』
リアは震える唇で答えた。
「仲間を……! 蓮を、セリナを、真司を……! 誰も捨てねぇ!」
『ならば、その意志を刻め。我が爪と牙を、お前に託す』
白光が爆発した。
地を這う根が揺れ、空に雷が走る。
リアの体が宙に浮き、背から黒銀の尾が伸びる。
「……これが……“獣神化”……!」
意識が遠のく中、リアは確かに感じていた。
力が暴れている。でも、蓮たちの顔がそれを押し留めてくれている。
「大丈夫……あたしは、壊さねぇ……!」
⸻
その瞬間、森全体が震えた。
蓮たちは拠点で異変を感じ、同時に視線を上げる。
「……これは」セリナが息を呑む。
「リアの魔力反応だ」蓮が言う。
「でも、こんなの……スケールが違う!」真司が叫ぶ。
森の奥から、巨大な狼の影が立ち上がった。
その目は金色に輝き、口元には炎と風の力が宿っている。
リアの声が森を渡った。
「――来るぞ、蓮!」
次の瞬間、上空に白い裂け目が生まれた。
聖教軍の第二陣――“神罰部隊”が空から降下してきたのだ。
女神の象徴たる紋章が、森を焦がす。
「リア!」
蓮が叫んだ瞬間、金光が走る。
狼神の影が咆哮を上げ、光の槍を弾き飛ばした。
衝撃波が森を駆け抜ける。
リアが地に降り立ち、振り向いた。
その姿はもう、ただの獣人ではなかった。
髪は銀に変わり、瞳は金の炎。
「蓮――行こう。今度は、あたしが前を切る番だ!」
蓮は頷いた。「ああ、頼む」
リアが笑った。その笑顔は、狼の牙よりも強かった。
⸻
夜明けの森に、再び光が満ちる。
リアは覚醒した。
フェンリルの血、その真なる力。
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“誰も捨てない”という誓いが、血よりも深く刻まれていた。
――世界は、再び動き出す。
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