最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.

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第四章:「大陸統一戦争」

第50話:聖教の進軍

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 夜の森に、白い光が降っていた。
 それは月光ではない。天から放たれた聖印の光――女神教会の“加護の幕”だ。
 空を覆うように、白銀の紋章が広がっている。森全体を包み込む巨大な魔法陣。
 リアが唸る。「……やっぱ来やがったか」
 蓮は夜空を見上げたまま、呟くように言った。
 「聖教会、本隊だな。予想より早い」
 セリナが静かに頷く。「エルフの叛乱を鎮圧したって報告が届いた頃合い……動かない理由はないわ」

 森の外縁では、すでに灯が揺れていた。
 行軍の光だ。
 神聖な詠唱が、夜気を震わせる。
 「――女神の御名のもとに、浄めの刃を。異端を滅し、秩序を示せ」
 聖騎士団。白の鎧に金の紋章を刻み、規律の取れた動きで進軍してくる。
 その数、およそ二万。
 対する蓮たち、再生連合の兵力は五千にも満たない。

 リアが歯を食いしばる。「五倍……いや、それ以上か」
 「でも撤退はしない」
 蓮の声は静かだった。
 「この森は“もう一度、息をした”。ここで退けば、再び殺される」
 「だな」真司が肩を鳴らす。「炎も、焼かれるだけじゃつまらねぇ。燃やしてやるさ」
 セリナが笑う。「燃やすのは敵だけにしてね」
 「心得てる。蓮に怒鳴られるのはごめんだ」
 蓮が軽く息を吐いた。「……怒鳴らない。怒る時間がもったいないからな」



 再生都市メルディナからの援軍は間に合わない。
 廃都を中心に組織された《リサイクル連合》は、まだ新興勢力。物資も兵も、数に限りがあった。
 だが蓮たちは、奇跡を積み上げてきた。
 拾った武器で戦い、壊れた兵器を再利用し、絶望の中に希望を繋げてきた。

 「……蓮」セリナが口を開く。「“森の再生”で使った術式、応用できる?」
 「結界の反転式か?」
 「ええ。聖教の加護を、そのまま“森の守護陣”に変換できるかもしれない」
 リアが目を丸くする。「敵の術を、利用すんのか?」
 「そう。《リサイクル》の真骨頂よ」
 蓮が笑った。「いい案だ。上等だな」



 夜半。
 森の北端――《神聖街道》と呼ばれる古道。
 そこに、聖教軍第一陣が姿を現した。
 先頭には、白銀の鎧を纏った女騎士が立つ。
 聖教会直属の第一軍“清廉の矛”を率いる聖騎士長――エステル・アルメリア。
 彼女の瞳は淡い金色に光り、神の加護を宿す。
 「命をもって、女神の秩序を示す。異端は、滅すのみ」
 その声が響くたび、兵たちが一斉に剣を掲げた。

 対峙する蓮たちは、森の入り口に布陣していた。
 再生連合の旗――白と緑の双環が風に揺れる。
 リアが鼻を鳴らす。「派手にきやがって。あれが聖騎士長か?」
セリナが頷く。「教会の象徴よ。……実力も、相当」
 「つまり、倒す価値はあるってことだな」リアが剣を抜く。
 「殺すな」蓮がすかさず言う。
 「わかってる! 手加減の達人だぞ、あたしは!」

 「前線、準備完了!」真司の声が響く。
 蓮は深呼吸をひとつして、掌を地に当てた。
 「《リサイクル・吸環》――ここから先、森が俺たちを守る」
 淡い緑光が地中に走る。
 廃都から回収した魔導炉のエネルギーが循環を開始し、古代の防御結界と接続された。
 森全体が、呼吸するように波打つ。



 戦いの火蓋が切られた。
 聖教軍の詠唱が響く。
 「《聖光槍陣》、展開!」
 白い槍の雨が降り注ぐ。
 リアが前に出て、双剣を交差させた。「《獣王剣・裂風》!」
 刃から生じた風圧が、槍の軌道を逸らす。
 爆発音が連続し、森の地面が抉られた。
 「っ、威力高すぎ!」リアが歯を食いしばる。
 「耐えろ!」蓮が叫び、再生陣を展開する。「《リサイクル・装盾》!」
 倒れた木々、折れた矢、焼けた金属――そのすべてが光の粒となり、再構成された防壁を作り出す。

 聖騎士長エステルが前に進み出る。
 「異端の術だ。女神の理を穢す愚か者め」
 「愚かで結構」蓮が言い返す。「でも、“壊れたものを直す”ことの、どこが罪なんだ?」
 エステルの瞳に怒りが宿る。「“直す”とは、“神の御業”を冒涜すること!」
 「なら――俺は何度でも冒涜してやる」
 その瞬間、地が裂け、森の根が生き物のようにうねり出した。
 蓮のスキルが最大展開する。
 《リサイクル・反射循環》――攻撃を吸収し、再利用して放つ魔法陣。

 降り注いだ聖光が、森の結界に吸われ、次の瞬間には逆方向へ弾かれた。
 白光が夜空を裂き、聖教軍の陣形を崩す。
 「なっ……! 反射……? そんな術、あり得ぬ!」
 エステルの叫びを、リアの笑い声がかき消す。
 「ありがとよ、聖女サマ! お前らの光、使いやすくて助かる!」



 戦況は拮抗していた。
 数では劣る再生連合だが、地形とスキルの相性が完全に味方していた。
 セリナは後方で補助陣を張りながら、息を切らす。
 「蓮、出力限界が近い!」
 「あと五分……持たせる!」
 真司が炎をまとって飛び出す。「五分ありゃ十分だ!」
 彼の炎が森を焼かないよう、蓮の陣が即座に変換し、炎を熱線として敵陣へ導く。
 「こいつが《再利用連携》かよ、すげぇな!」真司が叫ぶ。
 「壊す力も、再生の一部だ」蓮の声は静かだが、確かな響きを持っていた。

 だが――敵はまだ本気を出していなかった。
 エステルが剣を掲げ、詠唱を開始する。
 「我が身を捧げ、光を媒介に――女神の御印を現せ。《聖印解放・天律ノ鎖》!」
 天から巨大な鎖が降り注ぐ。
 それは光で編まれた呪縛。森全体を封じるほどの範囲を持つ。
 蓮が歯を食いしばる。「っ、出力が……封じられる!」
 セリナが陣を支える。「魔力の流れが止まる! 結界が、壊れる!」
 リアが叫んだ。「蓮!」
 「まだだ――ここで止まるかよ!」

 蓮は地に手を突き、呼びかける。
 「森よ、もう一度、力を貸してくれ。俺たちは壊さない、繋ぐ!」
 足元から緑の光が走り、森中の木々が微かに震える。
 エステルの鎖に、無数の根が絡みつき、引き裂いた。
 「何……!? 神の鎖が……!?」
 「神でも、自然でも関係ない。奪う力は、直せばいい」

 再び緑光が爆ぜ、森全体が輝く。
 光に照らされる蓮の姿を見て、エステルはわずかに息を呑んだ。
 「その光……まるで、女神の加護……」
 「違う。これは“人の再生”だ」



 夜明け。
 聖教軍は撤退を開始した。
 損害は大きくないが、戦線の崩壊を防ぐため、再編を余儀なくされた。
 エステルは遠くから、再生連合の旗を見つめる。
 「……あれが、“リサイクルの力”」
 副官が問う。「追撃しますか?」
 「いいえ。今日は退く。だが――このままでは終わらせない。次は“神の代理”が出るわ」

 蓮は森の高台で、朝焼けを見つめていた。
 リアが背伸びをしながら言う。「勝った、ってことでいいんだよな?」
 「勝ち負けじゃない」蓮が静かに答える。「守れた、それだけだ」
 セリナが隣に立つ。「でも、それで十分。森も、私たちも生きてる」
 「……ああ。けど、まだ終わらない」
 蓮の視線の先、遠くの空に白い光が瞬いた。
 それは“神の代理”――教会の中枢が動き始めた予兆。

 リアが低く唸る。「来るな、次は本気のやつらが」
 「そうだな」蓮が答える。「ここからが本当の戦いだ」

 ――女神教会の本格侵攻。
 世界の秩序を名乗る光が、再生の森を呑み込もうとしていた。
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