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森の恵み
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10月第三週の水曜日。
家に帰るとリヴィングのテーブルに大量のドングリがあった。
「なんだ、これは?」
聞くと子どもたちで丹沢の訓練場に行き、小屋を建てたベースキャンプの場所に一杯置いてあったということだった。
「?」
俺がよく分からない顔をしていると、ルーが言った。
「ほら、タカさん! 前に山の主だって奴がいたじゃん」
「ああ、あのミノタウロスか」
「うん、あいつだと思う」
「ん?」
「ほら! あの時、美味しいドングリの場所教えますって言ってたじゃん!」
「そうか?」
覚えていない。
しかし、こいつらが「食べ物の約束」を間違えるはずもない。
信じた。
俺が物忘れの多いアホウだと思われたく無くて、話を合わせた。
「ああ、そうだったな! 確かに言ってたな!」
「うん!」
ハーがルーの腕を引っ張っていた。
「なーに、ハー?」
「それ、タカさんいなかったじゃん。亜紀ちゃんと一緒に行った時じゃん」
「あぁ!」
「……」
双子が俺を見ていた。
「ま、まあ、俺も知ってたよ!」
「「うん!」」
双子はややこしい話になる前に無かったことにしてくれた。
他の子どもたちも、ニコニコしている。
「それでね、これ、どうしようかって」
「一応、全部拾って来たの」
「そうかよ。でもなー」
俺は一つ摘まんでロボの前に投げた。
コンコンと床に響いて、ロボが追いかけて前足で遊びだした。
楽しそうに弾いては追い掛けて行く。
「一つ処分出来たな!」
「「アハハハハハ!」」
双子が笑った。
柳が一つかみ持って、ロボの前に投げた。
遊んでいたロボが、どれを追っていたのか分からなくなる。
バカにされたと思った。
天地流双雷破魔キックを柳に見舞った。
柳がぶっ飛ぶ。
「相変わらず空気が読めない奴だな」
ハーが「Ω軟膏」を取りに行った。
「タカさん、これ、食べられないかなー」
「そう思って持って来たのか」
「うん」
まあ、それ以外に理由は無いだろう。
美味いドングリだと聞いたからだ。
「俺が子どもの頃には煎って食べたりもしたけどな」
「やってみよう!」
水洗いし、殻を向いた。
「一晩あく抜きをしないと駄目だぞ」
「一応味見だよ!」
早く喰ってみたいらしい。
水気を取って、殻を剝いてからフライパンで乾煎りした。
蓋をしてパンパン跳ねる音がしてきた。
火を止めてバターを入れる。
いい匂いがしてきた。
軽く塩を振った。
みんなで試食する。
俺も食べたが、子どもの頃に食べた懐かしさがある。
でも、やはり美味いものでもない。
食べられなくはないのだが。
「あ! 美味しいよ!」
「森の恵みだね!」
「結構食べれるね!」
「僕、これ好きだな」
「素朴な味だね」
子どもたちは気に入ったような感想を口にしていた。
まあ、人間は自分がやったことは肯定したがるものだ。
「ドングリにはアコニック酸という、体内に蓄積された重金属と結びついて排せつと助けるとも言われている。
「そうなんだ!」
「それ以外にもいろんな栄養素もあるしな」
「やったぁー!」
その日は、翌日食べる分と言って、ザルに一杯くらいのドングリを水に漬けた。
大体2キロくらいか。
全部で20キロくらいあった。
しかし、四つ足の獣がどうやって運んだものか。
頑張ったな、山の主。
ルーとハーが中心になって、ドングリの調理法を調べた。
早速、翌日に作ったらしい。
昨日俺がやった煎るものも好きになってやったようだが、今日は「トトリムク」を作ったようだ。
あく抜きをしたドングリをフードプロセッサーで粉にし、ゼリーで固めたものだ。
「宮のタレ」を掛けている。
8時頃に帰った俺の夕飯にも出して来た。
「タカさん! 美味しかったですよ!」
食べてみた。
「おお! なかなかイケるな!」
「ね!」
ルーが嬉しそうに笑った。
「今ね、種類ごとに分けてるの」
「ほう」
「あく抜きをしないでもいいものもあるんだって」
「そうなのか」
「虫食いのものも除いてるのね」
「なるほどな」
「森の恵みってスゴイね!」
「ワハハハハハハ!」
俺がゼリーはシロップなどの甘いものでもいいのではないかと言った。
ルーが喜んで、明日試してみると言った。
翌日はシロップを掛けたものを作り、またクッキーにしてみたと言った。
俺にも味見させてくれた。
オカラとココナッツを一緒に練り込んだクッキーは、本当に美味かった。
そして土曜日。
双子が山の主にお礼を言いたいと言った。
「別にいいんじゃねぇか?」
「うん。でもこないだちょっとだけ酷いことをしちゃったじゃない」
「ああ」
ちょっとではない。
後からちゃんと聞いたら、自殺したいとまで言って泣いていたそうだ。
「まあ、じゃあ行くか」
「「うん!」」
亜紀ちゃんと柳も一緒に行くと言った。
皇紀は蓮花研究所に行っている。
ロボは留守番。
朝食後に「飛行」で出掛けた。
一言礼を言うつもりで、お返しに栗でもやろうと、最高級の栗1キロを亜紀ちゃんが出した。
いじめてしまったのに、礼を尽くそうとする姿勢が気に入ったと言っていた。
3分後に丹沢のベースキャンプに着いた。
丁度山の主がそこにいた。
あれからも、時々ドングリを運んでいたらしい。
俺たちが地上に降りると、ちょっと頭を下げて挨拶してきた。
「ゲッホォッ! ボッフェェー! ウゲェ! ゲロゲロ ハアハア……」
口の中から大量のドングリが吐き出された。
「ンッゴォー! ハアハア グッボォー! ゲロゲロ ハアハア……」
また出て来る。
肩で荒い息をしている。
「「「「「……」」」」」
何度か吐き出して、地面にドングリが山盛りになった。
胃液なのだろうが、全体にネトネトして光っている。
その前に持って来たものだろうが、そっちは乾いている。
「ハアハア……これは皆様。先日運んだものが無くなっていましたので、お気に召して頂けたかと」
「「「「「……」」」」」
「それで、またこうやって持って来ました」
「おう」
「どうぞ、お持ちください」
「「「「「……」」」」」
こうやって運んでいたのか。
「あのさ」
「はい?」
「もういいから」
「?」
山の主が首をかしげている。
「こないだのでもう十分だ。今日はお前にそれを言いたくてな」
「そうなんですか?」
「ああ、もう堪能した。後はお前が自分で食べてくれよ」
「そうですか。でも、またいつでも言って頂ければ」
「ああ、その時はな」
俺たちはそのまま帰った。
「亜紀ちゃん」
「はい」
「今日の夕飯は何だ?」
「えーと、一応ドングリご飯にしようかと話し合ってましたが」
「今日は栗ご飯にしてくれよ」
「あ、いいですね!」
亜紀ちゃんは山の主に渡さなかった最高級栗をキッチンに運んだ。
ドングリは近所の公園に、ルーとハーが捨てに行った。
後に、野生のリスがちょっと増えた。
家に帰るとリヴィングのテーブルに大量のドングリがあった。
「なんだ、これは?」
聞くと子どもたちで丹沢の訓練場に行き、小屋を建てたベースキャンプの場所に一杯置いてあったということだった。
「?」
俺がよく分からない顔をしていると、ルーが言った。
「ほら、タカさん! 前に山の主だって奴がいたじゃん」
「ああ、あのミノタウロスか」
「うん、あいつだと思う」
「ん?」
「ほら! あの時、美味しいドングリの場所教えますって言ってたじゃん!」
「そうか?」
覚えていない。
しかし、こいつらが「食べ物の約束」を間違えるはずもない。
信じた。
俺が物忘れの多いアホウだと思われたく無くて、話を合わせた。
「ああ、そうだったな! 確かに言ってたな!」
「うん!」
ハーがルーの腕を引っ張っていた。
「なーに、ハー?」
「それ、タカさんいなかったじゃん。亜紀ちゃんと一緒に行った時じゃん」
「あぁ!」
「……」
双子が俺を見ていた。
「ま、まあ、俺も知ってたよ!」
「「うん!」」
双子はややこしい話になる前に無かったことにしてくれた。
他の子どもたちも、ニコニコしている。
「それでね、これ、どうしようかって」
「一応、全部拾って来たの」
「そうかよ。でもなー」
俺は一つ摘まんでロボの前に投げた。
コンコンと床に響いて、ロボが追いかけて前足で遊びだした。
楽しそうに弾いては追い掛けて行く。
「一つ処分出来たな!」
「「アハハハハハ!」」
双子が笑った。
柳が一つかみ持って、ロボの前に投げた。
遊んでいたロボが、どれを追っていたのか分からなくなる。
バカにされたと思った。
天地流双雷破魔キックを柳に見舞った。
柳がぶっ飛ぶ。
「相変わらず空気が読めない奴だな」
ハーが「Ω軟膏」を取りに行った。
「タカさん、これ、食べられないかなー」
「そう思って持って来たのか」
「うん」
まあ、それ以外に理由は無いだろう。
美味いドングリだと聞いたからだ。
「俺が子どもの頃には煎って食べたりもしたけどな」
「やってみよう!」
水洗いし、殻を向いた。
「一晩あく抜きをしないと駄目だぞ」
「一応味見だよ!」
早く喰ってみたいらしい。
水気を取って、殻を剝いてからフライパンで乾煎りした。
蓋をしてパンパン跳ねる音がしてきた。
火を止めてバターを入れる。
いい匂いがしてきた。
軽く塩を振った。
みんなで試食する。
俺も食べたが、子どもの頃に食べた懐かしさがある。
でも、やはり美味いものでもない。
食べられなくはないのだが。
「あ! 美味しいよ!」
「森の恵みだね!」
「結構食べれるね!」
「僕、これ好きだな」
「素朴な味だね」
子どもたちは気に入ったような感想を口にしていた。
まあ、人間は自分がやったことは肯定したがるものだ。
「ドングリにはアコニック酸という、体内に蓄積された重金属と結びついて排せつと助けるとも言われている。
「そうなんだ!」
「それ以外にもいろんな栄養素もあるしな」
「やったぁー!」
その日は、翌日食べる分と言って、ザルに一杯くらいのドングリを水に漬けた。
大体2キロくらいか。
全部で20キロくらいあった。
しかし、四つ足の獣がどうやって運んだものか。
頑張ったな、山の主。
ルーとハーが中心になって、ドングリの調理法を調べた。
早速、翌日に作ったらしい。
昨日俺がやった煎るものも好きになってやったようだが、今日は「トトリムク」を作ったようだ。
あく抜きをしたドングリをフードプロセッサーで粉にし、ゼリーで固めたものだ。
「宮のタレ」を掛けている。
8時頃に帰った俺の夕飯にも出して来た。
「タカさん! 美味しかったですよ!」
食べてみた。
「おお! なかなかイケるな!」
「ね!」
ルーが嬉しそうに笑った。
「今ね、種類ごとに分けてるの」
「ほう」
「あく抜きをしないでもいいものもあるんだって」
「そうなのか」
「虫食いのものも除いてるのね」
「なるほどな」
「森の恵みってスゴイね!」
「ワハハハハハハ!」
俺がゼリーはシロップなどの甘いものでもいいのではないかと言った。
ルーが喜んで、明日試してみると言った。
翌日はシロップを掛けたものを作り、またクッキーにしてみたと言った。
俺にも味見させてくれた。
オカラとココナッツを一緒に練り込んだクッキーは、本当に美味かった。
そして土曜日。
双子が山の主にお礼を言いたいと言った。
「別にいいんじゃねぇか?」
「うん。でもこないだちょっとだけ酷いことをしちゃったじゃない」
「ああ」
ちょっとではない。
後からちゃんと聞いたら、自殺したいとまで言って泣いていたそうだ。
「まあ、じゃあ行くか」
「「うん!」」
亜紀ちゃんと柳も一緒に行くと言った。
皇紀は蓮花研究所に行っている。
ロボは留守番。
朝食後に「飛行」で出掛けた。
一言礼を言うつもりで、お返しに栗でもやろうと、最高級の栗1キロを亜紀ちゃんが出した。
いじめてしまったのに、礼を尽くそうとする姿勢が気に入ったと言っていた。
3分後に丹沢のベースキャンプに着いた。
丁度山の主がそこにいた。
あれからも、時々ドングリを運んでいたらしい。
俺たちが地上に降りると、ちょっと頭を下げて挨拶してきた。
「ゲッホォッ! ボッフェェー! ウゲェ! ゲロゲロ ハアハア……」
口の中から大量のドングリが吐き出された。
「ンッゴォー! ハアハア グッボォー! ゲロゲロ ハアハア……」
また出て来る。
肩で荒い息をしている。
「「「「「……」」」」」
何度か吐き出して、地面にドングリが山盛りになった。
胃液なのだろうが、全体にネトネトして光っている。
その前に持って来たものだろうが、そっちは乾いている。
「ハアハア……これは皆様。先日運んだものが無くなっていましたので、お気に召して頂けたかと」
「「「「「……」」」」」
「それで、またこうやって持って来ました」
「おう」
「どうぞ、お持ちください」
「「「「「……」」」」」
こうやって運んでいたのか。
「あのさ」
「はい?」
「もういいから」
「?」
山の主が首をかしげている。
「こないだのでもう十分だ。今日はお前にそれを言いたくてな」
「そうなんですか?」
「ああ、もう堪能した。後はお前が自分で食べてくれよ」
「そうですか。でも、またいつでも言って頂ければ」
「ああ、その時はな」
俺たちはそのまま帰った。
「亜紀ちゃん」
「はい」
「今日の夕飯は何だ?」
「えーと、一応ドングリご飯にしようかと話し合ってましたが」
「今日は栗ご飯にしてくれよ」
「あ、いいですね!」
亜紀ちゃんは山の主に渡さなかった最高級栗をキッチンに運んだ。
ドングリは近所の公園に、ルーとハーが捨てに行った。
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