36 / 276
第一部
36 エレナとツンデレ公爵令嬢と誓いのイヤリング
しおりを挟む
午後の講義が終わり、わたしはコーデリア様からお預かりしたイヤリングを持ち、王立学園内の殿下の執務室に向かう。
最近は夕方遅くまで殿下やお兄様達は話し合いをされている事が多いので、きっといらっしゃるはず。
「ご機嫌ようウェード。殿下とお兄様はいらして?」
愛想よく執務室の前にいる殿下の侍従のウェードに声をかける。
「申し訳ございませんが、この部屋に誰がいらっしゃるかは機密事項でございます。お答えをする事はできません」
ウェードはわたしを一瞥してピシャリと言い放った。
堅物のウェードは、残念ながらあまりエレナの事をよく思っていないように思う。
エレナの事自体というより、エレナが婚約者である事をよく思っていないというのが多分正しい。
エレナは社交界デビュー前で、かつ、お妃教育を受けていないという事を差し引いたとしても、まだまだ子供っぽい。
今日だって、約束もないのに殿下達の話し合いの邪魔をしに来ている、我儘なお嬢様にしか思えない振る舞いをしている。
まぁわたしがそんな行動をしているんだけど。
そりゃ、殿下の婚約者にはちっともふさわしくないと思われてても仕方ない。
それにね、王立学園に通い出して周りのご令嬢達が大人っぽくて驚いた。
エレナの見た目は可愛いけど幼い。
スタイルだっていいんだけど、いかんせん背が低いため子供にしか見えない。
なんならケープのついた制服は、エレナの胸の大きさが災いして小太りに見える。
なんだかそんな中身も見た目も幼いエレナと婚約する事になった殿下が、可哀想に思えてくる。
エレナに肩入れしているわたしがそう思うくらいだから、殿下が幼少のみぎりから仕えているウェードにしたら、殿下が不憫で仕方ないんだろうな。
「じゃあ、殿下にお会いできるように取り計らって! ウェードならできるでしょ?」
「申し訳ございません。できかねます」
「なぜ? 未来の王妃の命令よ!」
「未来の王妃になるおつもりがあるのであれば、今からそのような振る舞いは、お控えなさった方が賢明ですよ」
わざと大きめの声でウェードに注意を受けるような言い回しを選ぶ。
ますますウェードによく思われない事は分かっている。
悪役令嬢の道まっしぐらな気もするけれど、ツンデレ美女に頼られてしまったら助けてあげないわけにはいかない。
こうやって騒いでいれば、きっとお兄様か殿下が気がついてくださる。
ガチャリとノブを回す音が聞こえ、そっとドアが開く。
呆れた顔のお兄様と目が合う。
「やっぱり……」
「よかった! やっぱりお兄様いらっしゃったのね! 殿下はいらっしゃるかしら? わたし、皆様にお話ししたい事があってね、」
「おしゃべりが過ぎるよレディ」
お兄様は人差し指をわたしの唇に押し付け、わたしが話を続けようとするのを黙らせる。
お兄様の指で口を塞がれたわたしは、仕方なく上目遣いでじっと見つめる。
お兄様は観念したような顔でわたしの代わりにウェードに頭を下げ、部屋に招き入れてくれた。
「可愛いらしい小鳥のさえずりが聞こえたと思ったら、やっぱりエレナ嬢だったのだね。何か御用かな?」
部屋に入ると、殿下から甘いけれど心にも思ってもないような言葉をかけられ、気まずくて赤面する。
「お話し合いで忙しいのに申し訳ございません!」
とにかくお詫びをして周りを見渡すと、いつもの面々がいらっしゃる。
微笑んでいるのは殿下だけで、呆れ顔のお兄様に、蔑むようなオーウェン様の顔。それに相変わらず無表情なランス様、そして今日の目的であるダスティン様は訝しげな顔をしている。
「あの。ダスティン様に伺いたい事があるのですが」
「え。ダスティンに? 僕か殿下に用があるんじゃないの?」
お兄様が驚きの声をあげたけれど、多分他の皆も内心驚いているに違いない。
殿下の微笑みが少しだけ引き攣ったのが見えた。
最近は夕方遅くまで殿下やお兄様達は話し合いをされている事が多いので、きっといらっしゃるはず。
「ご機嫌ようウェード。殿下とお兄様はいらして?」
愛想よく執務室の前にいる殿下の侍従のウェードに声をかける。
「申し訳ございませんが、この部屋に誰がいらっしゃるかは機密事項でございます。お答えをする事はできません」
ウェードはわたしを一瞥してピシャリと言い放った。
堅物のウェードは、残念ながらあまりエレナの事をよく思っていないように思う。
エレナの事自体というより、エレナが婚約者である事をよく思っていないというのが多分正しい。
エレナは社交界デビュー前で、かつ、お妃教育を受けていないという事を差し引いたとしても、まだまだ子供っぽい。
今日だって、約束もないのに殿下達の話し合いの邪魔をしに来ている、我儘なお嬢様にしか思えない振る舞いをしている。
まぁわたしがそんな行動をしているんだけど。
そりゃ、殿下の婚約者にはちっともふさわしくないと思われてても仕方ない。
それにね、王立学園に通い出して周りのご令嬢達が大人っぽくて驚いた。
エレナの見た目は可愛いけど幼い。
スタイルだっていいんだけど、いかんせん背が低いため子供にしか見えない。
なんならケープのついた制服は、エレナの胸の大きさが災いして小太りに見える。
なんだかそんな中身も見た目も幼いエレナと婚約する事になった殿下が、可哀想に思えてくる。
エレナに肩入れしているわたしがそう思うくらいだから、殿下が幼少のみぎりから仕えているウェードにしたら、殿下が不憫で仕方ないんだろうな。
「じゃあ、殿下にお会いできるように取り計らって! ウェードならできるでしょ?」
「申し訳ございません。できかねます」
「なぜ? 未来の王妃の命令よ!」
「未来の王妃になるおつもりがあるのであれば、今からそのような振る舞いは、お控えなさった方が賢明ですよ」
わざと大きめの声でウェードに注意を受けるような言い回しを選ぶ。
ますますウェードによく思われない事は分かっている。
悪役令嬢の道まっしぐらな気もするけれど、ツンデレ美女に頼られてしまったら助けてあげないわけにはいかない。
こうやって騒いでいれば、きっとお兄様か殿下が気がついてくださる。
ガチャリとノブを回す音が聞こえ、そっとドアが開く。
呆れた顔のお兄様と目が合う。
「やっぱり……」
「よかった! やっぱりお兄様いらっしゃったのね! 殿下はいらっしゃるかしら? わたし、皆様にお話ししたい事があってね、」
「おしゃべりが過ぎるよレディ」
お兄様は人差し指をわたしの唇に押し付け、わたしが話を続けようとするのを黙らせる。
お兄様の指で口を塞がれたわたしは、仕方なく上目遣いでじっと見つめる。
お兄様は観念したような顔でわたしの代わりにウェードに頭を下げ、部屋に招き入れてくれた。
「可愛いらしい小鳥のさえずりが聞こえたと思ったら、やっぱりエレナ嬢だったのだね。何か御用かな?」
部屋に入ると、殿下から甘いけれど心にも思ってもないような言葉をかけられ、気まずくて赤面する。
「お話し合いで忙しいのに申し訳ございません!」
とにかくお詫びをして周りを見渡すと、いつもの面々がいらっしゃる。
微笑んでいるのは殿下だけで、呆れ顔のお兄様に、蔑むようなオーウェン様の顔。それに相変わらず無表情なランス様、そして今日の目的であるダスティン様は訝しげな顔をしている。
「あの。ダスティン様に伺いたい事があるのですが」
「え。ダスティンに? 僕か殿下に用があるんじゃないの?」
お兄様が驚きの声をあげたけれど、多分他の皆も内心驚いているに違いない。
殿下の微笑みが少しだけ引き攣ったのが見えた。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!
風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」
第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。
夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!
彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります!
/「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。
基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる