【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

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第一部

35 エレナとツンデレ公爵令嬢と誓いのイヤリング

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 今日も食堂は学生達が集まっていて賑やかだ。

 貴族の子女達が王宮の役人になった時に、給仕がいないと食事ができないのでお昼は一回屋敷に戻ります……なんて事になると、仕事にならないから、王立学園アカデミーには昼食用に食堂が用意されている。
 貴族としてのマナーに、役人としての心得と王立学園アカデミーで過ごす最初の一年は、お母様が言うように、確かに大したことは習わない。
 家庭教師を雇ってまで習うようなことは、今のところなにもない。
 気を失って目覚めた娘が、王立学園アカデミーに行けないなら家庭教師を雇ってと言い出したりしたら、お父様達も困って苦笑いするしかなかったのもよくわかる。

 最近はわたしに面と向かって意地悪をする方どころか、ひそひそと悪口を言う方もいらっしゃらない。
 だから、むやみに目立つお兄様達とお昼を過ごす時間は減らし、お友達になってくれたスピカさんと仲良くお昼ご飯を食べている。

 残念ながらクラスの他のご令嬢達からは距離をとられたままで、なかなか打ち解けられないけれど……
 それでもお友達がいるのは心強い。

「エレナ様にお話があるんだけれどよろしいかしら?」

 スピカさんと食堂でランチを終えて、たわいもないおしゃべりに興じていたら、コーデリア様に声をかけられる。

 周りの視線が一斉に集まるのを感じる。
 王太子殿下の元婚約者有力候補と現婚約者が対峙してるなんてみんな興味あるに決まってる。

「もちろん。かまいませんわ」

 わたしは優雅にニッコリと笑う。
 視線の端に、コーデリア様に対して緊張して怯えるスピカさんが目に入る。

「スピカさん。大丈夫よ。コーデリア様はとてもお優しい方だから、そんなに緊張する必要ないわ」
「はっはい!」
「座ってもよろしいかしら?」

 質問の返事は聞かずに当たり前のように空いている席に腰を下ろす。

「コーデリア様。こちらわたくしの友人のスピカさんです。スピカさん。こちらはシーワード公爵令嬢のコーデリア様です」

 コーデリア様とスピカさんにお互いを紹介する。

「はじめまして。スピカさん」
「はっ、はじめまして……」

 変な沈黙が訪れる。
 ここはわたしが話を切りださないといけないわよね?

「コーデリア様、話したいことというのは何のことでしょう」

 シーワード子爵の不正について子細をお伝えしてから数日経ち、刻一刻と王室主催のパーティーの日が近づいている。
 時間がないのに、未だにコーデリア様はシーワード子爵への糾弾について難色を示されている。
 一瞬そのお返事かと思ったけど、それであればわたしではなく、殿下にお話になるだろう。

 わざわざ、わたしに話したいって事はきっとダスティン様の事。
 予測してつい口元がニヤニヤしてしまいそうになって気を引き締める。

「これを見てくださらない?」

 そういうと、コーデリア様は制服のポケットから、大事そうにハンカチを取り出す。
 ハンカチを広げると青と透明の石がついたイヤリングが出てきた。

「わぁ。綺麗! これっていま街で流行ってるやつですよね!」

 さっきまでオドオドしていたスピカさんが歓声をあげる。

 そう。多分その街で流行っているイヤリング。
 石自体は高級品は使ってないのだけど、可愛いデザインとメッセージ性が受けている。

「あの。もしかしてダスティン様がこれを?」
「えぇ。街の流行り物を婚約者に贈るくらいの気を利かせることが出来ないのかと尋ねたら、これを贈ってきましたの」

 コーデリア様が苦々しく呟く。
 このイヤリングが流行った理由は、恋人に自分の瞳と髪色の石がついたイヤリングを、いつも貴女のそばにいると誓って送る。
 というロマンチックなメッセージ性がうけているから。
 王立学園アカデミーでも、婚約者や恋人に贈ってもらったと自慢げに話すご令嬢達がたくさんいる。

 黒髪に黒い瞳のダスティン様であれば黒い石のイヤリングをお贈りすべきはずが、青と透明の石が付いたイヤリングを送ってきたのでコーデリア様が憤慨している。

 そりゃ憤慨するよね。

 だって、この色の取り合わせって、殿下の瞳と髪の色にしか見えない……

 もしかして、ダスティン様ったら、こないだコーデリア様が殿下と婚約することになってもいいのかなんておっしゃっていたのを、真に受けていらっしゃるとか……

「こんなもの受け取れないわ。あの朴念仁にどういうつもりなのか確認して、突っ返していただけないかしら⁈」

 えっ。巻き込まれたくない。

 と咄嗟に思った。
 思ったけど、唇を噛み締めて涙目になりながら強がっているコーデリア様を見たら、胸がつまって助けてあげる事にした。
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