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24 いいわけ①
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「……そんなの言い訳になるのかよ」
「行高?」
私は何を言い出すんだと慌ててしまった。
それに、なんていうか、行高が完全に戦闘態勢……喧嘩モードに入ったようにも思えたから。
「俺だったら、そんな脅しをされても絶対に断る。その一年二人だって、煙草を誰かが見えるところで吸うなんてそれなりの覚悟あってしたことだろう。確かにそんな女が言った写真なら、合成の可能性もある。けど、部活のことだって鷹羽のせいじゃない。そこで言いなりになったら、あの女の言いなりになるしかない」
「それは……」
行高がこうした脅しというテロには、最初から屈さないという確固とした意志を見せる必要があると言えば、鷹羽くんは言い返そうとしても、何も言えなかったのかもしれない。
「俺だったら、自分から告白しといて、絶対に澪を置いて帰ったりしない」
鷹羽くんは言葉もないように黙り込んでしまった。私も行高の勢いに飲まれて、何も言うことが出来ない。
確かにそうなのかもしれないけど、鷹羽くんだって苦しい決断だったはずだ。
「鷹羽は何したいか、わからない。澪のことが好きだったら、澪を最優先にするのが当たり前だろ、俺だったら絶対そうする」
批難すると行高は鷹羽くんをぐっと力を込めて睨みつけた。ただ聞いているしかなかった私は、流石にこれ以上はいけないと我に返って慌てて言った。
「行高、そんなこと……」
「いや、確かにそうだ……突然のことに動揺してしまったとは言え、何もわからないままの有馬を置いて帰ってしまったのは本当のことだ」
鷹羽くんはあの時のことを悔いるように、言葉を震わせて言った。私もあの時訳が分からないままだったけど、それはきっと鷹羽くんだって同じことで。
「鷹羽くん、仕方ないよ。私だっていきなりそんなことになれば、向こうの言うことを聞いてしまうと思う……お願いだから行高は黙っていてくれる? ただ居るだけならって言ったけど、これは流石に言い過ぎだから」
「澪……」
ぴしゃりといった私の言葉に行高は反省をしたのか黙り込んだ。
「ね。鷹羽くん。これからは私も協力するから、その写真の件、なんとかならないかな?」
「……え?」
鷹羽くんは言われた言葉が理解できないというようにして、パッと顔を上げる。
「夕凪さんは、鷹羽くんを後輩の写真で脅しているよね? 鷹羽くんは県大会は終わるまでは我慢していたかもしれないけど、次の弱みを握られたらまた言うことを聞くことになるよ? だから、写真をばらまかれる前に偽物だと証明してしまうか……それか、夕凪さんの弱みを握って脅し返すとか。」
「有馬?」
鷹羽くんは言われたことが理解できない、というように口をぱくぱくさせた。
そうだよね。私って見た目だけなら、クラスでもそういうこと言いそうにないタイプなのかも。でも、それはあくまで向こうが持っているイメージだ。
クラスの隅で大人しくしているモブだって、色々と考えるんだよ?
だから、私がもしそういう立場になったら多分そうするという事を伝えたかった。
「行高?」
私は何を言い出すんだと慌ててしまった。
それに、なんていうか、行高が完全に戦闘態勢……喧嘩モードに入ったようにも思えたから。
「俺だったら、そんな脅しをされても絶対に断る。その一年二人だって、煙草を誰かが見えるところで吸うなんてそれなりの覚悟あってしたことだろう。確かにそんな女が言った写真なら、合成の可能性もある。けど、部活のことだって鷹羽のせいじゃない。そこで言いなりになったら、あの女の言いなりになるしかない」
「それは……」
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「俺だったら、自分から告白しといて、絶対に澪を置いて帰ったりしない」
鷹羽くんは言葉もないように黙り込んでしまった。私も行高の勢いに飲まれて、何も言うことが出来ない。
確かにそうなのかもしれないけど、鷹羽くんだって苦しい決断だったはずだ。
「鷹羽は何したいか、わからない。澪のことが好きだったら、澪を最優先にするのが当たり前だろ、俺だったら絶対そうする」
批難すると行高は鷹羽くんをぐっと力を込めて睨みつけた。ただ聞いているしかなかった私は、流石にこれ以上はいけないと我に返って慌てて言った。
「行高、そんなこと……」
「いや、確かにそうだ……突然のことに動揺してしまったとは言え、何もわからないままの有馬を置いて帰ってしまったのは本当のことだ」
鷹羽くんはあの時のことを悔いるように、言葉を震わせて言った。私もあの時訳が分からないままだったけど、それはきっと鷹羽くんだって同じことで。
「鷹羽くん、仕方ないよ。私だっていきなりそんなことになれば、向こうの言うことを聞いてしまうと思う……お願いだから行高は黙っていてくれる? ただ居るだけならって言ったけど、これは流石に言い過ぎだから」
「澪……」
ぴしゃりといった私の言葉に行高は反省をしたのか黙り込んだ。
「ね。鷹羽くん。これからは私も協力するから、その写真の件、なんとかならないかな?」
「……え?」
鷹羽くんは言われた言葉が理解できないというようにして、パッと顔を上げる。
「夕凪さんは、鷹羽くんを後輩の写真で脅しているよね? 鷹羽くんは県大会は終わるまでは我慢していたかもしれないけど、次の弱みを握られたらまた言うことを聞くことになるよ? だから、写真をばらまかれる前に偽物だと証明してしまうか……それか、夕凪さんの弱みを握って脅し返すとか。」
「有馬?」
鷹羽くんは言われたことが理解できない、というように口をぱくぱくさせた。
そうだよね。私って見た目だけなら、クラスでもそういうこと言いそうにないタイプなのかも。でも、それはあくまで向こうが持っているイメージだ。
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だから、私がもしそういう立場になったら多分そうするという事を伝えたかった。
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