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44 優しい音色
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何度か泣いていたことがあったので、彼にその時に見られてしまったのかもしれない。夜の庭園はまったく人気がないので、誰にも見られていないと思っていた。
「……そうか! そうだったのか。俺は近寄ることは出来なかったが、実は月琴を弾いたんだ。けど、隠れて演奏していたので、君が笑っていた顔を見ることが出来なかった。だから、ローレンを笑わせようとしていた……君から見れば、俺は良く変なことをしていたと思う……すまない」
確かに今思えばギャレット様は、ある時を境に態度が激変した時があった。あの優しい音色の月琴も覚えている。彼が泣いている私を慰めるために弾いてくれていたんだ。
私に絵を描く趣味があると知って、月琴を弾くことを明かしてくれたギャレット様は恥ずかしそうだ。この国では女性が弾く楽器という先入観がある楽器ではあった。
「あの私……実は、私の肌、金に弱いんです。だから、王太子妃が代々受け継ぐというあのネックレスは、常には付けていられなくて……ごめんなさい」
彼が秘密を明かしてくれた流れで私がそういえば、ギャレット様は嬉しそうに笑って言った。
「そうか……! 悪かった。すぐに代わりの物を作らせよう。俺は何も知らない。ローレン。君から教えて欲しい……もしかしたら、心配しているのかもしれないが、別に国を治めるのが仕事の王族だからとて、俺にも個人資産がない訳ではない。だから、君の借金も言ってくれれば、すぐに俺が工面しただろう」
「え? ……ギャレット様って、個人的にお金持ちなんですか?」
ギャレット様は、一国の主となる王太子様だ。けれど、代々伝わる宝飾品や国宝は国有の資産になるだろうし、彼の勝手に動かせるものではないだろう。
「実は俺は若い頃、冒険者の真似事をしたことがあってな。懸賞金のかかった悪い竜も、何匹か退治したことがある」
「……え?」
彼が剣の達人であることは、皆が知る通りだ。だから、それも聞けば納得出来る……出来るけど……命の危険があるのに、王太子が自ら竜退治したの?
「それって、怒られませんでした?」
くすくすと笑って私が言えば、ギャレット様はため息をついて頷いた。
「……怒られた。だから、もうやらない。けど、お金は大丈夫だ。ミズヴェア王国も豊かで俺と結婚しても、借金で苦しむことはない。安心してくれ。ローレン」
「お父様も、お母様が亡くなるまでは、普通だったんですが……」
きっと両親のことを知り、私を安心させてくれるために言ってくれたんだと知り、心が温かくなった。
「そうか……今はメートランド侯爵は、どうなさっている? 俺も出来れば、ご挨拶がしたいんだが……」
現在表向きは病気で伏せっていることになっているお父様は、仕事を投げ出し貴族院にも出入りせず、私が婚約者になった時も登城して挨拶することはなかった。
「今は借金も返し終わり、お父様には専用の使用人を何人か付けています。お酒も以前に比べると減ってきていて……以前は庭師を雇う余裕すらありませんでしたが、邸も以前通りに調えば、お父様も気持ちが晴れるかも知れません」
お父様は私がとある仕事の報酬に借金を返したという事実を知り、それもまた泣いていた。それでも、私はクインのようには彼を嫌えないのだ。お母様も生きていた頃の、優しく穏やかだった父を知っているから。
「……俺も、君を喪えば、どうにかなってしまうのかもしれない。それは……その時になってみないと、わからないけど」
ギャレット様は、宙を見てそう言った。確かに、その通りだ。
未来はどうなるかなんて、今生きている誰にも見通せるはずがない。
「……そうか! そうだったのか。俺は近寄ることは出来なかったが、実は月琴を弾いたんだ。けど、隠れて演奏していたので、君が笑っていた顔を見ることが出来なかった。だから、ローレンを笑わせようとしていた……君から見れば、俺は良く変なことをしていたと思う……すまない」
確かに今思えばギャレット様は、ある時を境に態度が激変した時があった。あの優しい音色の月琴も覚えている。彼が泣いている私を慰めるために弾いてくれていたんだ。
私に絵を描く趣味があると知って、月琴を弾くことを明かしてくれたギャレット様は恥ずかしそうだ。この国では女性が弾く楽器という先入観がある楽器ではあった。
「あの私……実は、私の肌、金に弱いんです。だから、王太子妃が代々受け継ぐというあのネックレスは、常には付けていられなくて……ごめんなさい」
彼が秘密を明かしてくれた流れで私がそういえば、ギャレット様は嬉しそうに笑って言った。
「そうか……! 悪かった。すぐに代わりの物を作らせよう。俺は何も知らない。ローレン。君から教えて欲しい……もしかしたら、心配しているのかもしれないが、別に国を治めるのが仕事の王族だからとて、俺にも個人資産がない訳ではない。だから、君の借金も言ってくれれば、すぐに俺が工面しただろう」
「え? ……ギャレット様って、個人的にお金持ちなんですか?」
ギャレット様は、一国の主となる王太子様だ。けれど、代々伝わる宝飾品や国宝は国有の資産になるだろうし、彼の勝手に動かせるものではないだろう。
「実は俺は若い頃、冒険者の真似事をしたことがあってな。懸賞金のかかった悪い竜も、何匹か退治したことがある」
「……え?」
彼が剣の達人であることは、皆が知る通りだ。だから、それも聞けば納得出来る……出来るけど……命の危険があるのに、王太子が自ら竜退治したの?
「それって、怒られませんでした?」
くすくすと笑って私が言えば、ギャレット様はため息をついて頷いた。
「……怒られた。だから、もうやらない。けど、お金は大丈夫だ。ミズヴェア王国も豊かで俺と結婚しても、借金で苦しむことはない。安心してくれ。ローレン」
「お父様も、お母様が亡くなるまでは、普通だったんですが……」
きっと両親のことを知り、私を安心させてくれるために言ってくれたんだと知り、心が温かくなった。
「そうか……今はメートランド侯爵は、どうなさっている? 俺も出来れば、ご挨拶がしたいんだが……」
現在表向きは病気で伏せっていることになっているお父様は、仕事を投げ出し貴族院にも出入りせず、私が婚約者になった時も登城して挨拶することはなかった。
「今は借金も返し終わり、お父様には専用の使用人を何人か付けています。お酒も以前に比べると減ってきていて……以前は庭師を雇う余裕すらありませんでしたが、邸も以前通りに調えば、お父様も気持ちが晴れるかも知れません」
お父様は私がとある仕事の報酬に借金を返したという事実を知り、それもまた泣いていた。それでも、私はクインのようには彼を嫌えないのだ。お母様も生きていた頃の、優しく穏やかだった父を知っているから。
「……俺も、君を喪えば、どうにかなってしまうのかもしれない。それは……その時になってみないと、わからないけど」
ギャレット様は、宙を見てそう言った。確かに、その通りだ。
未来はどうなるかなんて、今生きている誰にも見通せるはずがない。
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