秋月の鬼

凪子

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四、

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夕霧が太夫になったばかりの頃、客に真田塾出身であるという若い侍がいた。

文武両道、理に聡く道をよく知り、武芸を極め、心身ともに鍛練することを怠らない立派な武士であった。

その学び舎から輩出された者はことごとく城へ召し上げられ、家臣となり重用され、秋月の政を援ける柱、国を支える一助となっている。

それがなぜ、暮里村などという忘れ去られた寒村に――。

「それで、あんたの父様は?」

常盤は物寂しげに目を伏せる。

「とうに亡くなりました。都の学者だったのですが、故郷の跡取りだった伯父が流行り病でこの世を去り、暮里村に戻って農業と行商をしておりました。しかし、六年前の戦に取られ、それきり」

「そうだったのかい。悪いことを聞いたね」

「いいえ」

話し込んでいる二人を尻目に、隣では質素な身なりをした素朴な顔立ちの少女が恐れかしこまっている。

容花ようか様……」

弱々しい声に振り向いた美少女を見つめ、常盤ははっと口をつぐんだ。

それはかの、城門にて邂逅した、世にも冷たく美しい姫君だったので。

気高く凛と研ぎ澄まされた、水晶のように澄んだ面持ちを傾け、容花は侍女らしき少女を見つめる。

「本当にこのような場所でよろしいのですか。あなた様が有象無象の中で雑魚寝など、とても」

侍女を制するように容花姫は首を振り、

真覚まさめ

呼ばれた侍女はびくりと肩を跳ね上げる。

仰々しく手をついて平伏したまま、絞り出すような声で、

「何でございましょう」

「構わぬ。それが京次郎様のお考えなら従うまでよ」

驚いたように夕霧の眉がぴくりと動く。
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