秋月の鬼

凪子

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七、

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「もしそれが本当なのだとしたら、昨晩死んだ遊女は食われて死体も残らなかったはず。あれは明らかに人の手のなせる業です」

常盤の言に、清子は眉をひそめた。

「そうかもしれませんが、残りの候補者はもう三十足らずです。殆どの姫たちは、我が身かわいさに逃げ出しました。無理のないことです。これが本当に嫁探しなのだとしたら、若様は残虐なことをなさると思われませんか」

面長の青白い顔には、くっきりと怒りが宿っている。

数日前、夕霧が常盤に見せた顔と同じだ。

誰もがお上に不満を抱いている。そうでありながら正室を目指している。

この、大それた矛盾。

常盤は凄絶な笑みを浮かべた。

「さあ。どうでございましょう」

清子の表情が歪む。

「はぐらかすおつもりですか」

「本当のことを申したまでです。わたくしなど下々の者には、お上のお考えはよく分かりませんから」

「よう分かっておるではないか」

振り向くと、容花が腕を組み、傲然と笑っていた。

「鬼に喰われぬよう用心するのじゃな。殺されたのは身の程知らずの下賤の遊女だと聞く。鬼も喰う獲物を選ぶというわけじゃ。次に狙われるのはそなたじゃろうて」

容花の辛辣な一撃をそよ風のごとく受け流し、常盤は嫣然と微笑んだ。

返す刀で、

「ならばわたくしは、秋月に巣食う鬼を退治いたしましょう。そしてこの城に平和と安寧を取り戻す一助となりましょう」

「できるのか?そなたごときに」

挑発的な視線で容花は揶揄する。

常盤は胸に手を当て、毅然と言い返した。

「それが上様のお望みならば」






































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