"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria

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強制連行されてます。

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神獣との対面に備えて、女官達に風呂で磨かれその後は飾り付けられ…えらい目にあった。

いや、引き続き、現在進行形でえらい目にあっている。

「と言うわけで、番様。これから神獣様の住まう洞穴に向かいますがその前に、段取りを説明させていただきます。」

向かいに座る宰相を、ジロリと睨む。

宰相は私の視線などお構いなしに説明を始めた。

「神獣様は日中は洞穴の奥に籠っておられます。到着する頃には日も落ちて、神獣様が丁度出てくる頃合いです。ですので、到着しましたら、番様は洞穴の前に跪き、祈りを捧げます。」

「祈るも何も、こう縛られていたら何もできないんですけど?」

「それはお前が逃げようとするからだろ」

宰相の隣から真顔でツッコミを入れる阿呆は無視だ、無視。

女官たちに”準備”されている間、途中何度か逃げ出そうしたら、最終的に縄で拘束されてしまった。

そして縄で縛られたまま、馬車に乗せられ、今に至る。

馬車は緩やかな山道を登っているようだ。

気を取り直したように、宰相が再び説明を始める。

「神獣様が出てこられた後ですが、番であれば、神獣様は人の姿となりまして、番様の名を尋ねます。なのでその際に御名をお伝えくださ・・おぉ、そうでした!御名の確認がまだでした!私としたことが・・!」

急に焦り出した宰相を、私はジトっと睨んだ。

この人にとっては番かどうかが重要なのであって、私自身には1ミリも興味ないに違いない。

どんな丁寧な言葉遣いされたって、敬われたって、そういうとこだよ。信用できないのは。

「どうぞ御名をお聞かせください!番様!」

「…名乗れっていうなら、まずはそっちから名乗るのが礼儀じゃないですか?」

「こ、これは大変失礼いたしました。私は胡 魯伯こ ろはく、この阿の国の宰相をしております。」

憮然としながら「私は藤野・・」と言いかけた瞬間。

「通り名ではなく、真名だぞ、真名。隠し立てするなよ?」

またもや阿呆が話に入ってくる。

「すみませんけど、イラついて話す気なくなるんで黙ってもらっていいですか」

「どうせ大した名前でもないくせに勿体つけるからだ。」

「陛下、おやめください!御名が把握できないと番契約に支障が出まする!」

宰相が阿王を嗜める中、契約、という言葉が気になった。

こんなわけのわからない世界で、これから契約させられるらしい。

「さ、どうぞ陛下のことは気になさらず、番様の御名をお聞かせください。」

取り繕った笑みを向ける宰相。

私は一瞬、名乗るのを躊躇った。

「番様?」

「名前は・・藤野カナ、です」

「フジノ カナ様、でお間違い無いですな??」

「・・はい。」

宰相は手元の紙に書き込むと、安堵したように私に笑いかけた。

「ありがとうございます、カナ様。良き響きですな!」

「…どうも。」

「カナ、だけ?お前、名が二文字しかないのか?ハッ、なんとも締まらない名だな。呼びにくそうだ」

呼ばんでいい。

「それでは御名の確認も済んだことですし、先ほどの続きをお伝えします。神獣様に名を尋ねられましたら、御名をお答えください。恐らくその後、神獣様は番様に自らの名付けを望まれます。」

「名付け??」

「ええ、神獣様は元々名を持ちませんので、人の姿になったらまず、番様に名をつけてもらうようです」

「へぇ・・」

名付け、ねぇ。

神獣に名付けるなんて、ちょっと罰当たりな気がしてしまうけれども。そのまんまシンジュウって名前でもいいのでは?

「おい、碌でも無い名前を考えるなよ?万が一にもお前が番だった場合には、神獣は黎明レイメイと名付けろ」

阿王が何か言ってきた。

「は?何?レイメイって?」

「俺の世に神獣が現れたら、授けようと思っていた名だ。良い名であろう。夜明けを表す名だぞ。万が一にもその機会があるなら、必ず黎明と名付けろよ?」

なんだ、ただの中二病か。

「中二病は黙っててくれますか」

「あ?チュウニビョウ?何だ?チュウニビョウとは…おい!」

何か喚いている阿王をそのままに、私は再び窓の外に目を向けた。

森の闇は進むごとに徐々に深まっていく。

募る不安をそのまま表しているようで、しばらく目を離せなかった。

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