"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria

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名付けのセンスを期待されても困ります

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そして目が覚めた今、目の前には紫色の目を持つ麗しい顔。

「ふぇ‥は?」

あまりの驚きに、ビクッ!と体が跳ねた。

美形は私を横抱きにしたまま、ふわりと微笑んだ。

「我が愛しき番、名は何と言う?名を教えておくれ」

あ、縄も猿轡も外されてる。

寝ている間に、宮に戻っていたらしい。

体を起こすと、そこは大きな広間で、一段高くなった壇上の下には、阿王も宰相も含めて、国の重鎮らしき少なくない人数が控えていた。

と、再び抱き込まれて目線を美形に戻される。

「カナ?教えておくれ」

いや、カナってもう知ってるじゃん。

「愛らしいカナの口から直接聞きたい」

私は半目になって答えた。

「藤野‥カナです」

「フジノ カナ、というのか。我が番は。」

そうやっていちいち抱き着くの、やめてほしいんですが。

「それではカナ。愛しい番よ、我に名をつけてくれ」

テンプレ通りだ・・!

私は改めて、神獣をまじまじ見つめた。

生まれてこの方、ペットも飼ったことがないので、実は名付けるのは初体験だったりする。

白い虎耳と、私の左足に巻き付く白く長い虎柄のしっぽを交互に見て考える。

うーん。

考えれば考えるほど、この名前しか思いつかない。

うん。やっぱこれかな。

「じゃあ・・タマ?」

「バッカお前バカ!」

烈火の如く怒りながら阿王が走りこんできた。

彼がもし陸上選手だったら、スプリント系をやっていたに違いない。

「ふざけるな!黎明だよ!言っただろうが!」

言い返そうと体を起こしたのに、タマ(仮)のたもとで顔を隠されてしまった。阿呆が見えない。

「遵景、誰が我が番に直接声をかけていいと言った?」

美形の冷え冷えとした声に続いて、「申し訳ございません!」と宰相の声が響く。

「陛下、神獣様の独占欲を逆撫でするような行為は厳禁ですぞ!番とわかった時点で宮の奥深くに囲い込み、一生出さない神獣様も居るくらいなのですから!番様の名を呼ぶことも、直接声をかけることも、許可なしに姿を見ることも危険です。お気をつけください!」

なんだって?

宰相は声を顰めたつもりのようだけれど、私の耳にしっかり入ってきた。

いつの間にか、私は取り扱い注意の超危険物になっていたらしい。

更に体を起こして、向こう側を覗こうとするのに袂を更に高く掲げられてしまった。

コホン、と阿王の咳払いが聞こえた。

「・・失礼しました。神獣様、せっかくの番様からの名付けではありますが・・やはり別世界から来たばかりですし、番様の感性は別世界仕様なのでしょう。その名前ではあまりにも・・飼い猫のようで!」

いや、私の元の世界でも飼い猫の名前だけどね。

「飼い猫、とな?」

眉を顰めた美形を見上げて、私は袂をチョイチョイと引っ張った。

「ちょっと。これ退けて?話したい。」

途端に蕩けそうな笑顔で「我が番は甘え上手が過ぎる」と言いながら、美形が袂をほんの少ーしだけ下げた。

腰に回された尻尾が緩まないので、目だけしか出ないけど仕方ない。

「ちょっと!センスないみたいに言わないでくれる?私に名付けて欲しいって言われたんだし、タマでいいじゃない!」

「そんな猫みたいな名前の神獣がいてたまるか!」

「‥神獣だかなんだか知らないけど、そんな大層な名前要らないでしょ。”黎明”なんて」

その瞬間、私を抱いたまま、スッと神獣が立ち上がった。

「我が愛しの番より授けられし名は黎明!」

「・・ん?」

「我が名は黎明だ!」

「「「黎明様、おめでとうございます!」」」

「ちが・・!タマ」

「皆のもの、我が名は黎明ぞ!」」

わぁー!と割れんばかりの拍手と歓声に私の声は掻き消された。

くっ・・!

晴々とした顔で、タマ(仮)改め黎明が阿王を振り返る。

「よし、遵景、其方の願いを今、叶えてやろう。番から良き名を得て、我は気分が良い!」

黎明の紫眼が淡く発光する。

その顔を天に向けた瞬間。

バリバリバリッ!ドーン!

耳をつんざくような雷鳴に、その場がどよめいた。

一拍遅れて、ドドドドドと形容していいほどの轟音が辺りに響く。

「陛下!陛下ー!」

広間に走り込んできた兵が阿王に跪いた。

「お、恐れながら!雨が・・雨が降ってきました!滝のような雨が・・!!!」

「これは雨の音か!」

そう言って、阿王を含めた何人かが、雨を見に出ていく。

広間に残った人々からは、自然発生的に「黎明様、番様、万歳!!」の声が沸き起こった。


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