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第281話 アシナへのプレゼント
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「すっかり健康を取り戻したナガタキ様は、ダンジョンの中でじっとしていられなくなったようでして」
「たった1時間だろ?」
「だって遊び盛りだったもの」
「そうよね。私だってその年齢のころならじっとしてなんかいられないわ」
「スクナもそういう子だったのか。俺はじっとしていたぞ。むしろ、動けとか外で遊んでこいとか言われるほうが嫌だったな」
「それで、こんな貧弱なユウが誕生したノだ」
「うるさいわ。このユウは俺じゃないぞ」
「いや、同じだぞ? 前のユウもずっとひとりでいたがる子だったし、体力もなかった」
「そういえばハルミは幼なじみだったっけ。そこまで俺と同じなのか?」
「性質まで同じだからこそ、無事にお主をこっちに呼べたのだヨ」
「ミノウの発言にはとても危険なものを感じるのだが」
「け、け、結果オーライヨ」
「ナガタキ様には、私はもちろん最低でも4名の親衛隊が一緒にダンジョンに入っています。ここには弱いとはいえ、魔物がいますからね」
「親衛隊だと? それって、ペンライトとか持っておかしな踊りを踊ったり紙テープを投げたりする連中のことだろ?」
「なによそれ? 私専用の近衛兵のことに決まってんじゃない。ユウさんにはいないの?」
「あ、そっちか!?」
「そっちって、他になにがあるんですか。この方はハクサン家の領主様なのですから、身辺警護はヒダ国にとって最重要事項です」
「うむ、そうか。ついあっちの話で、アイドルの親衛隊と同じかと思ってしまってな」
「紙吹雪はときどき飛ばしますけど」
「それ、あっちだから!」
「太守様のくせに、親衛隊のひとつも持ってないの?」
「俺にもボディーガードならいる……ような全然役に立っていないような」
確かにユウコさんは、ボディガードとして役に立ったことは……なかったなぁ。
「いまは私がボディーガードだぞ、役に立たないとは失礼な!」
「ハルミ。お前もあまり役に立ったとは言い難い」
「ええっ?!」
「それでナガタキ様は元気になると、親衛隊のメンバーとダンジョンで追いかけっこをするようになったのです」
「元気のよろしいことで」
「そのときです。親衛隊のひとりが、偶然あの水晶を見つけたのです」
「ダンジョンの中にあの水晶が? あっ、そういえばあったな。あれは確か」
「あれはボクの作品だモん。手でこうなでなでしているとだんだん丸くなるんだモん。それが面白くてちょくちょくやっているモん」
「ネコウサは魔力が弱いのでしょう。触っても丸くすることしかできなかったようです。ところがそれをナガタキ様が持った瞬間、白の半透明だった水晶が、美しい紫色に変わったのです」
「色が変わった?!」
「はい。これもあとから分かったことですが、あの水晶は魔力を与えることで、色だけでなく形も変えられるのです」
「変幻自在なのか」
「そこまではいきません。いや、魔力次第ではなるのかも知れませんが、私たちの中で、魔力があるのはこのナガタキ様ぐらいですから試せませんでした。でも、玉を棒状にするぐらいのことはできています」
「形も色も変わるというのは面白いな。ちょっとミノウ。この水晶を持ってみろ」
ユウさんは足下に落ちていた大きめの歪んだ水晶の玉をミノウに渡した。どんな色に変わるのかしら。わくわくどきどき。
「ほいヨ」
あれ、なんともならないね?
「魔王様は、魔力をコントロールする力がおありですから、無意識のうちに遮断しているのですよ。あのころのナガタキ様は、魔力垂れ流し状態でした。玉に魔力を流し込んでみてください」
「あ、そうか。じゃ、ほいヨ……ヨ? ヨヨ。ヨヨヨヨっ。なんじゃこりゃぁぁぁ!?」
ミノウが魔力を流し込んだ水晶は、形状を細長い棒に変えた。その片方の先端には美しい紅色の玉がつき、持ち手の部分には滑り止めの螺旋細工まで施されていた。
まるで魔法の杖……ちょっと待て! それはミノウがずっと欲しがっていたアレじゃないの!?
「おぉぉっ!! これは魔王の杖なのだヨ」
「いや、魔法の杖だろ」
「いやいやいや。ここまで見事なものなら、魔王の杖で良いヨ」
「ちょっと見せてくれ」
「ぴゅっ」
「なんで隠す?」
「わ、わ、我からこれを取り上げるつもりであろう。誤魔化そうとしてもそうは問屋がおろ」
「取り上げるつもりだよ?」
「きゅぅぅぅぅぅぅぅ」
「誤魔化してないだろ? さっさと寄こせ」
「きゅぅぅぅぅ。返すのだヨ。ご無体ヨ。無慈悲ヨ。ご愛敬ヨ。天変地異ヨヨヨヨ」
「やかましい! なにが天変地異だ。ふむ。これは全体がガラス細工のようだ。しかし俺でも普通に持てるほど軽い。ガラスの比重とは思えんな。柄の部分は銀色で持ち手はまるで樫の木の肌触り。それで先端には紅水晶がついている」
紅? 水晶? あれ、どこかで聞いたような話。なんだっけ?
「そうなのだヨ。美しいであろう? 我に我に返すのだヨ」
「ほい。大事にしろよ」
「どうして返してくれな……あれ?」
「返したっての。それはお前が作ったのだからお前のものだ。ただし、それ1本だけだぞ」
「ユウゥゥゥゥゥ。お前ってやつはお前ってやつはお前ってやつなのだヨヨヨヨ」
「だ、だから。スキンシップで喜びを表現するな、暑苦しいだろが!」
「「「ユウ。分かっているとは思うノだゾヨ」」」
「分かってるよ。ほれ、イズナはこれな。で、オウミはこれだ。作り方はミノウに聞けよ」
「あの、それ、ボクの生成物だモん?」
「魔王が欲しているのに、お前が文句をつけられるのか?」
「イッコウ」
「それでよろしい。それでシロトリ、話の続きだが」
「あの、ユウ?」
「なんだハルミ? お前にはないぞ」
「ああ、魔法の杖など私には不要だ。ニホン刀とミノウオウハルの2本持っているし、私は剣士だからな」
「よく分かっているじゃないか。それじゃ、なんだ?」
「このアシナが欲しがっているのだ。ユウはアシナにプレゼントするという約束をしていたのではないか?」
「いまになってその伏線を回収すんのか?! しかし、アシナは魔法使いじゃないだろ」
「魔法使いじゃないとダメなのか?」
「ダメなようだな。これに魔力を流し込む、とかいうややこしいことをしないといけないようだ。アシナにそれはできんだろ」
「じゃあ、ユウが代わりにやればいいだろ」
「俺にできるわけがないだろ」
「なにを言っている。お前はががががががが」
「なんだって?」
(ハルミはもう忘れたのかヨ。それは秘密だと言ったであろう)
(そ、そうでした。すみません)
「な、なに、なにを言っている。お前がダメなら私がいるだろ」
「そういえばハルミは識の魔法が使えるんだったな。どうなるのか分からんがやってみるか?」
「いいのですか、ハルミさん!」
「ああ、いいとも。ここまで来てなんの収穫もなしに帰るのは辛いだろう。アシナはなにが欲しい?」
「私は剣士ですから、強くなれるものが欲しいです。ニホン刀とか」
「すまんがそれは無理だ。あれはトヨタ家のエースが独占購入している。あと半年は誰にも売れない。それに1本120万もするものを、俺の権限でもやるとは言い難い」
「ユウさん、そうでしたね……。それじゃハルミさんにお任せします」
「よし、ともかくアシナが強くなれるものだな。その想いをこの水晶に込めてみよう。ユウ、ひとつ選んでくれ」
「じゃあ、これでいいだろ。小さいがかなり真球に近い玉だ」
「◎、××■△○◇」
「あ、それは私のだって妹が言ってるモん」
「えいっ!!」
「◎●、◇××■◎△◎◇◇!!」
「ああ、持って行かれたぁぁ!! って妹が言ってるモん」
かけ声がいるのかどうか知らないけど、ハルミさんがその水晶を手に持ち魔力をそそぐと、それは透き通った1本の棒になった。
棒? かな。それにしてはでこぼこしているような? それに柔らかそう。むしろ紐に近いような。
「オウミ、これ。どういうものか分かるか?」
「おぉ。これは素晴らしいノだ。これはリングだ。アシナ、これを手に巻いてみるノだ」
「手に巻く? のですか。折れたりしませんか?」
「大丈夫。やってみるノだ」
「はい……じゃあ、左手首に巻いて……意外と柔らかいですね。あっ。これ棒のように見えますが小さな玉が連なっているのですね。長さはぴったりですが、このままだと落ちちゃいます」
「ミノウ、ちょっと抑えてて欲しいノだ」
「分かった。この辺だな。ふいっとヨ」
「ほにょこにょこほんほーん」
またおかしなこと言い出しやがった。まさかそれも呪文じゃないだろな。
「マッチング呪文ノだ」
「呪文かよ! なんの役に立つんだ?」
「人と無機物とをマッチングさせる呪文なノだ」
「なんだそれ?」
「無機物を身体の一部のように馴染ませることができるのだヨ。中級魔法だヨ」
うぅむ。聞いたこともない魔法だ。他の異世界では絶対に出てこないだろうな(個人の感想です)。
でもそのブレスレットに、ちょっと引っかけるところがついていればそれで済む話のような気もするが。
「そ、そ、それ、それを言ってはいけないヨ」
「よし。これで完成なノだ」
「オウミ様、ミノウ様、ありがとうございます。でもこれはどういうものなのでしょう?」
「ハルミはお主が強くなれるように願ったつもりが、お主を守る気持ちのほうが強かったようだヨ」
「だからこのブレスレットができたノだ。アシナ。プロフスキルで自分のステータスを見てみるノだ」
「はい。……えっと。ああっ! すごい防御力が2倍近くになってます!」
「それだけじゃないヨ。自然治癒力も大幅に上がっているはずだヨ」
「それはステータスには出てこないから分からないノだ。だけど、これをつけている限り、お主には常にヒーリング効果がもたらされるノだ」
継続回復魔法ってことか。
「そんなものができたのか。私はただアシナのことを願ってうおっ!」
「ハルミさん、ありがとう!! 私、すっごく嬉しい。これ大事にする。いつも身につけているから。ハルミさん、ほんとにありがとう!!」
「あ、ああ。こちらこそ。アシナの望みとは違ってしまって済まなかった」
「うぅん。これでいい。これなら私の体力が上がったのと同じことだもん。強くなったのと同じことだもん。ハルミさんのおかげです。ありがとう!!」
あの、作らせたの俺なんだけど……喜んでくれてるのならいいや。
「いや、あれはボクの妹のだモん」
「じゃあ、お礼に妹さんにはいいものをあげよう」
「○×?」
「イズナ。イテコマシ、持ってるだろ?」
「ゾヨ?!」
「一番小さいの1セット出してくれ」
「なんでお主はそんなことまで知ってるゾヨゾヨゾヨ」
「お前がいつでも遊べるように、持ち歩いているの知ってんだよ。さっさと出せ。それは商売ものだぞ」
「ゾヨゾヨ。しぶしぶしぶ。もっこりした男だゾヨ」
「最近はもっこりしてねぇよ。ほらこれ。イテコマシっていうんだ。この盤の上では、こうしてこのコマを回すと、くるりんぱっ」
「×××!!! ○▼□◎×△▲◇◎」
「面白いだろ?」
「◎◎! くるりんぱっ!」
あ、もう呪文を覚えた。
「ひとりじゃ遊べないから、お前の両親にもコマをあげよう。これを一斉に回して、最初に中央の穴に入れたコマの勝ちだ」
「××!!! ○▼□◎×△▲◎」
「××!!! ○▼□◎×△▲◎」
「××!!! ○▼□◎×◇▲◎」
「わぁこれは面白い楽しい大好き」
「全員が同じセリフ言ったノか?」
「それはいいけど、ナガタキは待ちくたびれて寝てしまったゾヨ」
「しまった。脇道に逸れ過ぎちゃったか?!」
「たった1時間だろ?」
「だって遊び盛りだったもの」
「そうよね。私だってその年齢のころならじっとしてなんかいられないわ」
「スクナもそういう子だったのか。俺はじっとしていたぞ。むしろ、動けとか外で遊んでこいとか言われるほうが嫌だったな」
「それで、こんな貧弱なユウが誕生したノだ」
「うるさいわ。このユウは俺じゃないぞ」
「いや、同じだぞ? 前のユウもずっとひとりでいたがる子だったし、体力もなかった」
「そういえばハルミは幼なじみだったっけ。そこまで俺と同じなのか?」
「性質まで同じだからこそ、無事にお主をこっちに呼べたのだヨ」
「ミノウの発言にはとても危険なものを感じるのだが」
「け、け、結果オーライヨ」
「ナガタキ様には、私はもちろん最低でも4名の親衛隊が一緒にダンジョンに入っています。ここには弱いとはいえ、魔物がいますからね」
「親衛隊だと? それって、ペンライトとか持っておかしな踊りを踊ったり紙テープを投げたりする連中のことだろ?」
「なによそれ? 私専用の近衛兵のことに決まってんじゃない。ユウさんにはいないの?」
「あ、そっちか!?」
「そっちって、他になにがあるんですか。この方はハクサン家の領主様なのですから、身辺警護はヒダ国にとって最重要事項です」
「うむ、そうか。ついあっちの話で、アイドルの親衛隊と同じかと思ってしまってな」
「紙吹雪はときどき飛ばしますけど」
「それ、あっちだから!」
「太守様のくせに、親衛隊のひとつも持ってないの?」
「俺にもボディーガードならいる……ような全然役に立っていないような」
確かにユウコさんは、ボディガードとして役に立ったことは……なかったなぁ。
「いまは私がボディーガードだぞ、役に立たないとは失礼な!」
「ハルミ。お前もあまり役に立ったとは言い難い」
「ええっ?!」
「それでナガタキ様は元気になると、親衛隊のメンバーとダンジョンで追いかけっこをするようになったのです」
「元気のよろしいことで」
「そのときです。親衛隊のひとりが、偶然あの水晶を見つけたのです」
「ダンジョンの中にあの水晶が? あっ、そういえばあったな。あれは確か」
「あれはボクの作品だモん。手でこうなでなでしているとだんだん丸くなるんだモん。それが面白くてちょくちょくやっているモん」
「ネコウサは魔力が弱いのでしょう。触っても丸くすることしかできなかったようです。ところがそれをナガタキ様が持った瞬間、白の半透明だった水晶が、美しい紫色に変わったのです」
「色が変わった?!」
「はい。これもあとから分かったことですが、あの水晶は魔力を与えることで、色だけでなく形も変えられるのです」
「変幻自在なのか」
「そこまではいきません。いや、魔力次第ではなるのかも知れませんが、私たちの中で、魔力があるのはこのナガタキ様ぐらいですから試せませんでした。でも、玉を棒状にするぐらいのことはできています」
「形も色も変わるというのは面白いな。ちょっとミノウ。この水晶を持ってみろ」
ユウさんは足下に落ちていた大きめの歪んだ水晶の玉をミノウに渡した。どんな色に変わるのかしら。わくわくどきどき。
「ほいヨ」
あれ、なんともならないね?
「魔王様は、魔力をコントロールする力がおありですから、無意識のうちに遮断しているのですよ。あのころのナガタキ様は、魔力垂れ流し状態でした。玉に魔力を流し込んでみてください」
「あ、そうか。じゃ、ほいヨ……ヨ? ヨヨ。ヨヨヨヨっ。なんじゃこりゃぁぁぁ!?」
ミノウが魔力を流し込んだ水晶は、形状を細長い棒に変えた。その片方の先端には美しい紅色の玉がつき、持ち手の部分には滑り止めの螺旋細工まで施されていた。
まるで魔法の杖……ちょっと待て! それはミノウがずっと欲しがっていたアレじゃないの!?
「おぉぉっ!! これは魔王の杖なのだヨ」
「いや、魔法の杖だろ」
「いやいやいや。ここまで見事なものなら、魔王の杖で良いヨ」
「ちょっと見せてくれ」
「ぴゅっ」
「なんで隠す?」
「わ、わ、我からこれを取り上げるつもりであろう。誤魔化そうとしてもそうは問屋がおろ」
「取り上げるつもりだよ?」
「きゅぅぅぅぅぅぅぅ」
「誤魔化してないだろ? さっさと寄こせ」
「きゅぅぅぅぅ。返すのだヨ。ご無体ヨ。無慈悲ヨ。ご愛敬ヨ。天変地異ヨヨヨヨ」
「やかましい! なにが天変地異だ。ふむ。これは全体がガラス細工のようだ。しかし俺でも普通に持てるほど軽い。ガラスの比重とは思えんな。柄の部分は銀色で持ち手はまるで樫の木の肌触り。それで先端には紅水晶がついている」
紅? 水晶? あれ、どこかで聞いたような話。なんだっけ?
「そうなのだヨ。美しいであろう? 我に我に返すのだヨ」
「ほい。大事にしろよ」
「どうして返してくれな……あれ?」
「返したっての。それはお前が作ったのだからお前のものだ。ただし、それ1本だけだぞ」
「ユウゥゥゥゥゥ。お前ってやつはお前ってやつはお前ってやつなのだヨヨヨヨ」
「だ、だから。スキンシップで喜びを表現するな、暑苦しいだろが!」
「「「ユウ。分かっているとは思うノだゾヨ」」」
「分かってるよ。ほれ、イズナはこれな。で、オウミはこれだ。作り方はミノウに聞けよ」
「あの、それ、ボクの生成物だモん?」
「魔王が欲しているのに、お前が文句をつけられるのか?」
「イッコウ」
「それでよろしい。それでシロトリ、話の続きだが」
「あの、ユウ?」
「なんだハルミ? お前にはないぞ」
「ああ、魔法の杖など私には不要だ。ニホン刀とミノウオウハルの2本持っているし、私は剣士だからな」
「よく分かっているじゃないか。それじゃ、なんだ?」
「このアシナが欲しがっているのだ。ユウはアシナにプレゼントするという約束をしていたのではないか?」
「いまになってその伏線を回収すんのか?! しかし、アシナは魔法使いじゃないだろ」
「魔法使いじゃないとダメなのか?」
「ダメなようだな。これに魔力を流し込む、とかいうややこしいことをしないといけないようだ。アシナにそれはできんだろ」
「じゃあ、ユウが代わりにやればいいだろ」
「俺にできるわけがないだろ」
「なにを言っている。お前はががががががが」
「なんだって?」
(ハルミはもう忘れたのかヨ。それは秘密だと言ったであろう)
(そ、そうでした。すみません)
「な、なに、なにを言っている。お前がダメなら私がいるだろ」
「そういえばハルミは識の魔法が使えるんだったな。どうなるのか分からんがやってみるか?」
「いいのですか、ハルミさん!」
「ああ、いいとも。ここまで来てなんの収穫もなしに帰るのは辛いだろう。アシナはなにが欲しい?」
「私は剣士ですから、強くなれるものが欲しいです。ニホン刀とか」
「すまんがそれは無理だ。あれはトヨタ家のエースが独占購入している。あと半年は誰にも売れない。それに1本120万もするものを、俺の権限でもやるとは言い難い」
「ユウさん、そうでしたね……。それじゃハルミさんにお任せします」
「よし、ともかくアシナが強くなれるものだな。その想いをこの水晶に込めてみよう。ユウ、ひとつ選んでくれ」
「じゃあ、これでいいだろ。小さいがかなり真球に近い玉だ」
「◎、××■△○◇」
「あ、それは私のだって妹が言ってるモん」
「えいっ!!」
「◎●、◇××■◎△◎◇◇!!」
「ああ、持って行かれたぁぁ!! って妹が言ってるモん」
かけ声がいるのかどうか知らないけど、ハルミさんがその水晶を手に持ち魔力をそそぐと、それは透き通った1本の棒になった。
棒? かな。それにしてはでこぼこしているような? それに柔らかそう。むしろ紐に近いような。
「オウミ、これ。どういうものか分かるか?」
「おぉ。これは素晴らしいノだ。これはリングだ。アシナ、これを手に巻いてみるノだ」
「手に巻く? のですか。折れたりしませんか?」
「大丈夫。やってみるノだ」
「はい……じゃあ、左手首に巻いて……意外と柔らかいですね。あっ。これ棒のように見えますが小さな玉が連なっているのですね。長さはぴったりですが、このままだと落ちちゃいます」
「ミノウ、ちょっと抑えてて欲しいノだ」
「分かった。この辺だな。ふいっとヨ」
「ほにょこにょこほんほーん」
またおかしなこと言い出しやがった。まさかそれも呪文じゃないだろな。
「マッチング呪文ノだ」
「呪文かよ! なんの役に立つんだ?」
「人と無機物とをマッチングさせる呪文なノだ」
「なんだそれ?」
「無機物を身体の一部のように馴染ませることができるのだヨ。中級魔法だヨ」
うぅむ。聞いたこともない魔法だ。他の異世界では絶対に出てこないだろうな(個人の感想です)。
でもそのブレスレットに、ちょっと引っかけるところがついていればそれで済む話のような気もするが。
「そ、そ、それ、それを言ってはいけないヨ」
「よし。これで完成なノだ」
「オウミ様、ミノウ様、ありがとうございます。でもこれはどういうものなのでしょう?」
「ハルミはお主が強くなれるように願ったつもりが、お主を守る気持ちのほうが強かったようだヨ」
「だからこのブレスレットができたノだ。アシナ。プロフスキルで自分のステータスを見てみるノだ」
「はい。……えっと。ああっ! すごい防御力が2倍近くになってます!」
「それだけじゃないヨ。自然治癒力も大幅に上がっているはずだヨ」
「それはステータスには出てこないから分からないノだ。だけど、これをつけている限り、お主には常にヒーリング効果がもたらされるノだ」
継続回復魔法ってことか。
「そんなものができたのか。私はただアシナのことを願ってうおっ!」
「ハルミさん、ありがとう!! 私、すっごく嬉しい。これ大事にする。いつも身につけているから。ハルミさん、ほんとにありがとう!!」
「あ、ああ。こちらこそ。アシナの望みとは違ってしまって済まなかった」
「うぅん。これでいい。これなら私の体力が上がったのと同じことだもん。強くなったのと同じことだもん。ハルミさんのおかげです。ありがとう!!」
あの、作らせたの俺なんだけど……喜んでくれてるのならいいや。
「いや、あれはボクの妹のだモん」
「じゃあ、お礼に妹さんにはいいものをあげよう」
「○×?」
「イズナ。イテコマシ、持ってるだろ?」
「ゾヨ?!」
「一番小さいの1セット出してくれ」
「なんでお主はそんなことまで知ってるゾヨゾヨゾヨ」
「お前がいつでも遊べるように、持ち歩いているの知ってんだよ。さっさと出せ。それは商売ものだぞ」
「ゾヨゾヨ。しぶしぶしぶ。もっこりした男だゾヨ」
「最近はもっこりしてねぇよ。ほらこれ。イテコマシっていうんだ。この盤の上では、こうしてこのコマを回すと、くるりんぱっ」
「×××!!! ○▼□◎×△▲◇◎」
「面白いだろ?」
「◎◎! くるりんぱっ!」
あ、もう呪文を覚えた。
「ひとりじゃ遊べないから、お前の両親にもコマをあげよう。これを一斉に回して、最初に中央の穴に入れたコマの勝ちだ」
「××!!! ○▼□◎×△▲◎」
「××!!! ○▼□◎×△▲◎」
「××!!! ○▼□◎×◇▲◎」
「わぁこれは面白い楽しい大好き」
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