異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第282話 元凶はイリヒメ?

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「この状況で良く眠れるものだな!」

 あなたがそれを言いますか?

「まあ、いいや。シロトリ。話の続きだ」
「はい。えっと。ぽりぽりぽり」

「なんだ、どこまでいったか忘れたか? 確か親衛隊のひとりが水晶を見つけたところまでだったぞ」
「私も魔法の杖が欲しいなって」
「魔法を使えないやつがそんなものを欲しがるな!! 少しはハルミを見習え」

「あれ、私、褒められてるのか? それならご褒美を ごぉぉぉん。痛たたたたた、なにをするんだ!」
「名付けて水晶玉つぶて」

「そんな固いものぶつけるな!! 痛たたたた。あぁ、コブの上にまたコブがぁぁぁ」
「ハルミとどっちが固いかなと思ってな。我ながら良いコントロールであった」
「良いコントロールだ、じゃないぞ。私のおでこは柱とは良い勝負ができても水晶玉には勝てんのだ!」

 は、柱とは良い勝負できるの?!

「いいからそこでアシナといちゃいちゃしてろ。もうボケはいいから続きだ続き。それで、見つけた水晶玉を拾ってナガタキに渡した。そしたら色が変わった。そこまでは合ってるな?」

「はい、その通りです。ですが」
「ん?」
「ここから先は有料情報となってわぁぁぁぁ、わぁぁぁかりました、言います言います。だから水晶つぶてを持って構えないで!」

 ほんと、この世界の人ってこんなのばっかりなんだから。ユウさん、がんば!

「ん? なんか地味に応援されたような? もう俺から答えを言ってやろう。その水晶をイリヒメにお礼と言って渡した。そうじゃないか?」
「え? どうしてそれが分かるのですか?」

「それが自然の流れだ。ところがイリヒメはそれだけでは満足しなかった。つまり、もっと寄こせと言った。私は命の恩人よ。いまある水晶に魔力を注いで全部持ってきなさい。持って来ないのなら、あのダンジョンは閉鎖するわよ、とか言ってお前らを脅した」
「あ、いや。それは」

「イリヒメが魔水晶をなにに使ったのかは分からんが、おそらく金に換えたんだろうな。お前らは仕方なくそれに従った。健康になったとはいっても、ナガタキは定期的にここで治療する必要があったからだ。しかし、魔水晶作りには限度というものがある。簡単に魔力を注ぐというが、魔王とてそのざまだ」

「ほいにゃらほーい。なんか脱力感ノだ。飲み過ぎた日の朝に迎え酒を飲み過ぎた気分と同じなノだほにょにょー」

「ひゃれほれひれ。我は我で我なのだヨォ。あぁ、世界がぐるぐる回っているヨ。タダで乗れるメリーゴーりゃんそヨぐるぐる」

「ユウ、ワシは別になんともないゾヨ?」
「イズナ。それ岩だから。岩に向かってしゃべっても説得力がないぞ。俺はこっち」

「あれ。おかしいゾヨ。ユウの声はすれども姿は岩だ。お主は変身の魔法まで見にひゅけきょひゃのきゃぁゾヨ」

 1個だけって言われたのに、5つも6つもやるから……。だけどそれでもたった5つ程度で、魔王がああなっちゃうほど魔力を吸われるのね。恐るべしネコウサの魔水晶。

「あ、我は30個ぐらいやったノだひょひょひょ」
「我なんか50個ヨヨヨんのヨ」
「我はもう忘れたゾヨ」

「お前ら知らんまに勝手なことしてんじゃねぇ!! あと、イズナ、自分のしっぽに向かってしゃべるな、キモチワルイ」

 あらあらあら。

「私は平気だぞ?」
「ハルミさんは1個しか作ってないでしょう。それに識の魔法使いなら精霊の魔力を使えます。ほとんど無尽蔵じゃないですか」
「そうか。便利だな、これ」

 ちょっとうらやましい。私にもあの特性があればいいけどなぁ。

「ボクもたいしたものだモん?」
「そ、そうね。ある意味たいしたものね」
「ふっふーん♪ ボクのうんこ大人気」
「生 成 物 !」
「生成物ダモン」

「続けるぞ。ナガタキは病弱ではなくなったとはいえ、しょせんは子供だ。そんなに魔力があるわけでもないだろう。しかし他に魔法使いはいない。だからお前らは代替え品を用意する必要があった」
「いえ、それはその」

「それがイッコウだ。イッコウが毎年きっちり1割減るというのが俺は不思議でならなかった。ここではたいして増えてないのに、毎年かかさず1割減るなんて不自然だ」
「そ、それは……」

(あっ。なんだろう、これ? すごく嫌な感じ)
(どうした、スクナ?)
(ハタ坊は、魔力を吸われてないのね)
(あたしは魔法の杖なんかに興味はないからな。水晶は1個ガメたけど。それよりどうかしたか?)

(やることはやってるのね。あのね、誰か来たような気がしたの。ハタ坊は分からなかった?)
(いや。誰も来てないと思うが)
(私の勘違いかなぁ。ねぇ、ハタ坊。念のために、隠れていてくれない? 魔王があの調子だから)

(取り越し苦労だろ。まあ、いいけど。3バカ魔王が役立たずってのは確かだしな。ユウの中に隠れているとしよう)
(お願い。なんだかすごく不安な気持ちなの)

「水晶の代わりに、イッコウを上納していたんじゃないのか。イッコウだってそうとう高価だからな。しかしそうすると決算に穴が開く。合法な取り引きならそのまま書けばいいのだろうが、これは非合法だ。仮にも1国の太守が、自分の都合のために国費を使うのだからな」

「その穴を隠すために、集団脱走――実際には繁殖のためだったが――を利用した。本当はほとんど帰って来ているのに、1割だけなぜか帰ってこないということにした。その1割をイリヒメへの支払いにあてた。そうすると、今度はどうして脱走を止めないのかと問われることになる」
「あの……」

「そこで目を付けたのが、サルトラヘビの伝説だ。その上に一揆なんていう物騒な言葉を乗せた。ヒダは一向一揆の歴史が根深く残る土地だ。その言葉には説得力があっただろう。毎年起こるイッコウ一揆は、籠脱けしたイッコウが先導したことにして、逃げた先は恐ろしい魔物・サルトラヘビがいるダンジョンだ。そうなれば、おいそれと取り返せなくても仕方ないという言い訳が立つ」
「えっと、その」

「しかし、今年に関してはなぜか脱走をさせたないようにした。それでも逃げられていたけどな。その理由はミノウ紙だ。あれのせいでずっと誤魔化してきた決算の不正が明るみにでる」
「あの、その」

「この問題の本質は、スクナが言ったような「収入の過小報告」などではない。ヒダの決算はずっと赤字だったんだろ? 累積債務もかなり溜まっているはずだ」

「ええっ、そうなの? 私の推測ってまるで見当違いだったのね……」
「まったくではない。不正行為があることを見つけたまで合っている。方向が違っていただけだ。こいつらのウソの決算書に騙されたんだよ」

「経常黒字から私腹を肥やすために不正を行ったのではなく、そもそも赤字だったんだろ? それを誤魔化すことが不正だったんだ。不正の発覚を恐れたお前らは、その赤字を埋めることを考えた。そのひとつがイッコウ補填だったのだろう。イッコウの1割は大きいからな。しかしそうするとイリヒメへの上納分がなくなる。だから交渉しようとした」
「えぇと」

「ところがちょうどそのとき、ハルミのアホがグジョウからミナミ村に道を繋げてしまった。そのために、ヤサカの里は取り引き相手を失って困窮していた。イリヒメにしてみれば、その上にイッコウの上納まで減らされるという話になる。すんなり受け入れるはずはない。交渉は決裂した」
「えっと、その」

「決算が遅れたのは、イリヒメとの交渉がまとまらなかったからだろう。それをイッコウ一揆のせいにして誤魔化そうとした。しかし、そのあとどうするつもりだったんだ? 俺が来なくてもいずれは発覚する話じゃないのか。それともアホのオオクニなら誤魔化せると思ったのか」

 そうだったのか。良くそんなややこしい話を考えたわね、私は感心しちゃった。

(作者がない頭で必死で考えたノだ)
(やかましいわ)

「あの、私の話も聞いていただけますか」
「はぁはぁ。だいたい話のつじつまは合わせたぞ、ひぃひぃ。疲れた。なんだシロトリ」

「最初から間違ってますよ?」
「はぁぁぁぁ!?」

「イリヒメ様の名誉のために言います。イリヒメ様は、こちらを困窮させてまで私欲に走るようなお方ではありません」

「「「じー」」」

「あ、いや、その。あれぇ? おかしいな。あれれ? みんなそんな。。。ウソだろ?」
「本当です」
「お前らのいう本当なんてあてになるか!」

「イリヒメを悪く言ったら私が怒るわよ!」
「ナガタキはどっちにしても演技ができるだろうが! お前らなんか信用できんと言ってんだ!」

「ユウさん。私はそれは真実だと思う」
「ほにゃぁ?」
「脅されていたのなら、ナガタキ様がイリヒメをかばう理由なんてないのでは?」

「あれ?」

 …… ……

「じゃ、じゃあ。俺の組み立てたこのストーリーって」
「「「じーーーーーー」」」

「そんな尊敬のまなざしで俺を見るな!」
「「「見てねぇよ!!」」」

 お、俺、俺のいままでの努力はいったい?!
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