異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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35 後始末

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「なあ、シルヴィア」

「はい」

「ここから出るか?」

「はい」

 何の躊躇もなく頷かれたので、かえってこっちが驚いてしまった。

「いいのか?」

「わたしがここに留まることが火種になるのは避けたいから」

「ごめん。もっと上手いやり方があったよな」

「謝らないで。わたしのために怒ってくれたこと、すごく嬉しかったから」

 胸に手を当てて、シルヴィアはそう言ってくれた。

「ちょっと怖かったけど」

「はは…昔、ヤンチャしてた頃の名残が出ちまった」

 ああいうのは卒業したつもりだったんだけど……

「実を言うとね、ここを出ていくのは少し前から考えていたの」

「そうなのか?」

「今日の話を聞いててわかったと思うけど、アンジェリーナの結婚相手が次代の国王になるのは決まってるの。それは、わたしが結婚できないことを前提に決められたんだけど、コータローが来てくれて、話が、と言うか前提が変わったの」

 言葉を切ったシルヴィアが、俺がちゃんとついてきてるか確認する目で見てきたので、小さく頷いて見せた。

「もしも長女であるわたしが結婚したら、わたしの夫になる人が次期国王になる取り決めなの。でも、そこまでの重荷を背負わせるわけにはいかないと思ったから、出て行くことを考えたの。お料理を始めたのは、その一環。これからは全部自分でやらなきゃいけなくなるから」

「そういうことか」

「それとも、国王やってみる?」

「…勘弁してくれ」

 国が滅びる未来しか想像できん……

「コータローなら案外上手くやりそうな気もするけど」

「絶対無理。器じゃねえよ」

 何万、何十万の人間の生活に責任を負うなんて、考えただけで逃げ出したくなる。シルヴィアに対する責任だけならいくらでも負うが、そこが俺の限界だ。

 「第一、そんなことになっちまったら、シルヴィアとの時間がなくなっちまうじゃんか」

「それは困るわね」

「贅沢は難しいと思うけど、ついてきてくれ」

「はい」

 シルヴィアはしっかりと頷いてくれた。それだけでなく、嬉しい一言を添えてくれる。

「わたしには、コータローがいてくれることーーそれが一番の贅沢だよ」

 そんなことを言われたら、全力以上に頑張ってしまうじゃないか。

「絶対に幸せにする」

「してもらうのもいいけど、一緒に幸せになりたいな」

 …どんだけ可愛いんだよ、シルヴィア。

 条件反射的に抱きしめようとした時、扉がノックされた。
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