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34 俺の目ぇ見て、でっけぇ声で言ってみろ!
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ようやく料理の味がわかるようになったが、今度は料理をまずくするバカが現れた。
「たとえ君が王位継承権を狙っていたとしても、最終的にはダメだったと思うんだよ。なぜなら、僕の方がずっと王にふさわしいからね」
何を言い出すんだ、こいつ?
終わった話を波風立てる方向へ蒸し返すって、頭沸いてんじゃねえのか?
「ちょっと、やめてよ」
婚約者のアンジェリーナが制止するが、アホなお坊っちゃまはおかまいなしだ。
「君のような素性もわからないような人間が王位に就いたりしたら、国の品位が疑われてしまう」
国の品位より先に、俺は今おまえの品位を疑ってるけどな。
「今は殊勝なことを言っているが、いつ野心を持つかわからんからな、先に釘を刺しておくぞ」
「あのさ、さっきから言ってるけど、王位とか興味ないから」
「それが信じられないと言っているんだよ。継承権目当てでなければ、何であんな化け物と結婚するなんて話になるんだ」
「!?」
耳を疑った。
こいつ、今何て言った?
聞き間違えたわけではなさそうだ。ウェインを除いた全員が呆然としている。
「ありえないだろう。どこをどうしたらあんなーー」
ダメだ。こいつにこれ以上喋らせたら。
そう思った時には、両手でテーブルを思いっきり叩いていた。
一堂息をのみ、ウェインの腐った口が止まる。
「てめえ、今何て言った?」
立ち上がり、テーブルの反対側のウェインに向かってゆっくりと歩み寄る。
自分ではどんな表情をしていたのかわからないが、俺を見た女性陣が本気で怯えているので、ヤバいのかもしれない。
自分でも自制が利かなくなっているのが自覚できた。片隅に冷静な部分もあるのだが、そこがゴーサインを出していれば、止まるわけがない。
「…あ、あ……」
逃げるつもりか、席を立とうとしたウェインが椅子に蹴つまづいて派手に転倒した。
「おいおい、どこに行こうってんだ。人の女にケチつけて、そのままバックレられると思ってんのか」
一歩一歩プレッシャーをかけるように間を詰める。
ウェインは俺を鬼でもあるかのように見た。
「シルヴィアに文句があるなら俺が聞いてやるーー俺の目ぇ見て、でっけぇ声で言ってみろ!」
顔を間近に寄せて凄むと、ウェインはみっともなく泣き出した。
「…あぅ…あ……」
「どうしたよ。いろいろ述べてくれてたじゃねえか」
「…う、あ…あ……」
へたりこんだウェインの足の間の床に液体が広がっていく。恐怖に負けて失禁したらしい。
だが、この程度で許す気はさらさらない。
「俺はな、自分の女を貶されてヘラヘラ笑ってられるほど人間ができてねえんだよ。おまえはそこに触れたんだ。相応の覚悟はしてもらうぜ」
ウェインは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら首を振った。
「恨むなら、てめえの考えなしの暴言を恨め」
とりあえず、しばらく口をきけない程度に痛めつけようかと思ったのだが、外野から待ったがかかった。
「待ってくれ、コータロー」
沈痛な顔の王様。
「…こいつをかばうんですか?」
「そうではない。ただ、そなたの手を、こんなバカを殴るのではなく、娘を癒すのに使って欲しいと思うのだ」
言われて、はっとした。
そうだ。まずは傷ついたはずのシルヴィアのケアを最優先にすべきだった。頭にきすぎて我を忘れちまった。
シルヴィアは俯き、身を縮こまらせている。
「シルヴィア……」
歩み寄り、肩を抱く。小さな震えが伝わってきた。
「ごめん」
あんなことを言わせてしまった、それを詫びると、シルヴィアは俺の肩に顔を埋めるようにしながら首を振った。
膝まづき、身体全体を包み込む。背中と後頭部に手を当て、あやすように優しくさする。
少しそうしていると、震えも治まってきた。
「行こうか」
頷き、立ち上がったシルヴィアの肩を抱き、部屋を出る。扉を閉める時に見ると、王族の四人が揃って頭を下げていた。この人たちにとっても想定外だったんだと思いたい。
お互いのためにも。
「たとえ君が王位継承権を狙っていたとしても、最終的にはダメだったと思うんだよ。なぜなら、僕の方がずっと王にふさわしいからね」
何を言い出すんだ、こいつ?
終わった話を波風立てる方向へ蒸し返すって、頭沸いてんじゃねえのか?
「ちょっと、やめてよ」
婚約者のアンジェリーナが制止するが、アホなお坊っちゃまはおかまいなしだ。
「君のような素性もわからないような人間が王位に就いたりしたら、国の品位が疑われてしまう」
国の品位より先に、俺は今おまえの品位を疑ってるけどな。
「今は殊勝なことを言っているが、いつ野心を持つかわからんからな、先に釘を刺しておくぞ」
「あのさ、さっきから言ってるけど、王位とか興味ないから」
「それが信じられないと言っているんだよ。継承権目当てでなければ、何であんな化け物と結婚するなんて話になるんだ」
「!?」
耳を疑った。
こいつ、今何て言った?
聞き間違えたわけではなさそうだ。ウェインを除いた全員が呆然としている。
「ありえないだろう。どこをどうしたらあんなーー」
ダメだ。こいつにこれ以上喋らせたら。
そう思った時には、両手でテーブルを思いっきり叩いていた。
一堂息をのみ、ウェインの腐った口が止まる。
「てめえ、今何て言った?」
立ち上がり、テーブルの反対側のウェインに向かってゆっくりと歩み寄る。
自分ではどんな表情をしていたのかわからないが、俺を見た女性陣が本気で怯えているので、ヤバいのかもしれない。
自分でも自制が利かなくなっているのが自覚できた。片隅に冷静な部分もあるのだが、そこがゴーサインを出していれば、止まるわけがない。
「…あ、あ……」
逃げるつもりか、席を立とうとしたウェインが椅子に蹴つまづいて派手に転倒した。
「おいおい、どこに行こうってんだ。人の女にケチつけて、そのままバックレられると思ってんのか」
一歩一歩プレッシャーをかけるように間を詰める。
ウェインは俺を鬼でもあるかのように見た。
「シルヴィアに文句があるなら俺が聞いてやるーー俺の目ぇ見て、でっけぇ声で言ってみろ!」
顔を間近に寄せて凄むと、ウェインはみっともなく泣き出した。
「…あぅ…あ……」
「どうしたよ。いろいろ述べてくれてたじゃねえか」
「…う、あ…あ……」
へたりこんだウェインの足の間の床に液体が広がっていく。恐怖に負けて失禁したらしい。
だが、この程度で許す気はさらさらない。
「俺はな、自分の女を貶されてヘラヘラ笑ってられるほど人間ができてねえんだよ。おまえはそこに触れたんだ。相応の覚悟はしてもらうぜ」
ウェインは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら首を振った。
「恨むなら、てめえの考えなしの暴言を恨め」
とりあえず、しばらく口をきけない程度に痛めつけようかと思ったのだが、外野から待ったがかかった。
「待ってくれ、コータロー」
沈痛な顔の王様。
「…こいつをかばうんですか?」
「そうではない。ただ、そなたの手を、こんなバカを殴るのではなく、娘を癒すのに使って欲しいと思うのだ」
言われて、はっとした。
そうだ。まずは傷ついたはずのシルヴィアのケアを最優先にすべきだった。頭にきすぎて我を忘れちまった。
シルヴィアは俯き、身を縮こまらせている。
「シルヴィア……」
歩み寄り、肩を抱く。小さな震えが伝わってきた。
「ごめん」
あんなことを言わせてしまった、それを詫びると、シルヴィアは俺の肩に顔を埋めるようにしながら首を振った。
膝まづき、身体全体を包み込む。背中と後頭部に手を当て、あやすように優しくさする。
少しそうしていると、震えも治まってきた。
「行こうか」
頷き、立ち上がったシルヴィアの肩を抱き、部屋を出る。扉を閉める時に見ると、王族の四人が揃って頭を下げていた。この人たちにとっても想定外だったんだと思いたい。
お互いのためにも。
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