異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

文字の大きさ
47 / 179

47 kiss

しおりを挟む
 シルヴィアの手を取り、ステージの最前列に立つ。

「改めまして、本日はありがとうございました。こんなに大勢の方に立会人になっていただけて、とても嬉しく思います」

 揃って頭を下げる。

「ご存知のかたもいらっしゃるかと思いますが、私はこの世界の人間ではありません。所謂召喚勇者というものです」

 一旦言葉を切って、反応を窺う。とりあえず静かに聞いてくれているようだ。

「ちょっと長くなるかもしれないけど、聞いてください」



 召喚勇者として喚ばれたんですが、私は普通の召喚勇者とは違う目的で喚ばれました。まず最初に王様から言われたのが、シルヴィアと結婚してくれってことでした。

 正直、何だそりゃって思いました。で、話を聞けば、ブサイク過ぎて嫁の貰い手がないっていうじゃないですか。ダッシュで逃げようかと思いました。どこにも逃げる場所なんてないのにね。

 この時、王様からは話を断ってもいいと言われました。王様、フェアですよね。

 選択肢を示されたので、選ばなきゃいけません。逃げるか、結婚するか。実際に会ってから、あなたはブサイクなんで結婚できないなんて、そんな失礼なこと言えるわけないじゃないですか。だから、この時点で実質二択でした。

 普通なら逃げますよね。でも、会いました。

 え、何でか、って?

 感じたからですーー運命を。

 この決断をした自分を褒めてやりたいと思います。

 で、会いに行ったら、そこには女神がいました。

 皆さんの目にシルヴィアがどれだけすごい姿に見えているかはわかりません。きっととんでもない、知らない方が幸せってレベルのような気がするので、追及はしません。

 でもね、シルヴィアはマジで綺麗なんですよ。さっき女神って言ったけど、正直それでも言葉が足りないと思う。

 シルヴィアがブサイクに見えるのは呪いのせいらしいんです。

 あ、皆さんに謝らなきゃいけない。さっき言った《心の鏡》ってのはデタラメです。シルヴィアがブサイクに見えるのは、単純にそういう呪いのせいであって、皆さんの心が汚いとかって話ではないです。式の最中に茶々入れられたくなかったのででまかせ言いました。すみませんでした。

 私の願いは、皆さんにもシルヴィアの本当の姿を知ってもらいたい。それだけです。

 時間はかかるかもしれない。でも、必ずやり遂げます。今日の結婚式は、決意表明です。



 誰か一人が手を叩いてくれた。

 すぐに拍手は伝播し、割れんばかりの喝采になった。

「ありがとうございます」

 もう一度頭を下げる。

「最後にもうひとつだけ儀式を行いたいと思います。これは私の元いた世界の風習です。夫婦になる二人がお互い相手のための指輪を用意して交換し、永遠の愛を誓います」

 シルヴィアの左手を取り、その薬指に指輪を嵌める。

「愛してる。ずっと俺の隣にいてくれ」

「はい、喜んで」

 今度はシルヴィアが俺の左手を取り、薬指に指輪を嵌めた。

「愛しています。この想いは一生変わることはありません」

 本来は、これで終わる予定だった。

 が、そうしなければならない、という思いが胸中で急速に膨れ上がり、内なる声に従う形で、指輪を嵌めた左手をシルヴィアの頬に伸ばした。

 シルヴィアは一瞬だけ「え、ここで?」という顔を見せたが、俺が顔を近づけていくと、素直に目を閉じた。

 そっと唇を重ねる。

 その瞬間ーー



 パリンッ



 高く、澄んだ音が響き渡った。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...