異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

文字の大きさ
59 / 179

59 斜め上に突っ走ります

しおりを挟む
「いくぞ、おらあああぁっ!」

 ビビる気持ちに鞭打って、虚勢の咆哮を張り上げる。

『待ちなさい。異世界のヒトの子よ』

 突然頭の中に厳かな声が響いた。

「え……?」

 何だ、今の声……

『わたしにはあなたと争うつもりはありません』

「え、え?」

 幻聴?   俺、狂った?

『信じられないかもしれませんが、わたしがあなたに話しかけています』

「わたしって…あなた……?」

 ほっぺたをつねりながら、蛇に向かって訊く。

 すると、蛇はもたげた鎌首をこくんと頷かせた。

 …マジか……

 この世界に来て、一番ファンタジーを感じた瞬間だったかもしれない。

「もしかして…魔物じゃ、ない?」

『違いますよ。人からは、神獣と呼ばれています』

「神獣!?」

 それって、かなりの大物ってことだよな……って言うか、大物過ぎて実際どのレベルなのかよくわからん……

「その神獣さんがどうしてこんなところに?」

『この奥がわたしのねぐらなので』

 蛇ーー神獣は笑いを含んだ調子で言った。

『ここのところずっとざわついた不穏な空気を感じていたんです。どうしたものかと思っていたところに面白そうな気配がやって来たので、二百年ぶりに人前に出てみました』

「そ、そうっすか……」

『あなたは本当に面白い存在ですね』

「面白い、ですか……?」

 それは褒められているのか、それともけなされているのだろうか?

『もちろん褒めていますよ』

「あれ?   もしかして、心、読めます?」

『いいえ。ただあなたがわかりやすいだけです』

「…さようでございますか……」

 ふふっ、と笑いの波動が伝わってきた。

『名前を教えてくれますか?』

「あ、はい。高杉孝太郎です」

『コータローですね。覚えました』

「…えっと、俺は何て呼べばいいですか?」

『つけてください』

「へ?」

『名前、つけてください』

「な、何で……?」

 そんな畏れ多い……

『あまりに昔過ぎて、名前、忘れちゃいました。だから、新しく名前つけてください』

「いやいやいや、忘れるってことはないでしょう」

『ダメ、ですか……?』

 ちょっと待って、何その上目づかい。蛇なのに可愛いんですけど!?   

 って言うか、仕草がめちゃくちゃ人間臭くなってるよ!?

『お願いします』

 そんな目で見られたら断れないよ……

「言っとくけど、俺、センスないよ?」

『コータローがつけてくれたなら、それで満足です』

 むむ……

 そう言われると、かえってプレッシャーだな……

「…そうだな…そのつぶらな瞳にやられたわけだからーーツブラ、でどうかな?」

『ツブラ、ですね。ありがとうございます。とても気に入りました』

 本気で嬉しそうだったので、胸を撫で下ろした。

『神獣に名前をつけたので、コータローはわたしをいつでも召喚できるようになりました』

「へ?」

 今さらっととんでもねえこと言わなかったか?

「召喚?」

『はい。喚んでくれれば、いつでもお側に参ります』

 いや、参ります、って言われても……

『わたし、こう見えても強いですよ』

 強そうにしか見えないっす。

『きっと役に立ちますよ』

 ってか、召喚した時点でオーバーキル確定ですよね?

『…必要、ありませんか……?』

「よろしくお願いします」

 そう言うしかないじゃんか!

 …何だかすごいことになっちゃったな……
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

処理中です...