異世界召喚 ~依頼されたのは魔王討伐ではなく……~

オフィス景

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112 たまには二人で

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 ミネルヴァ的には不本意な話かも知れないが、あの一件以降、ミネルヴァに対する求婚話はぱったりとなくなった。

 それ自体はいいことだったのだが、代償として「クイーン・ミネルヴァ伝説」が開幕してしまった。俺はたまたま小耳に挟んだんだが、水面下で語られているため、本人の耳には届いていない。多分聞いたら泣くだろうから、なるべくなら届かずにいて欲しいものだ。あの輝く笑顔を曇らせたくはない。

「余計なことしてヤブヘビは避けたいもんな」

「何の話?」

 シルヴィアが小首を傾げて訊いてきた。

「ミネルヴァの噂の話」

「ああ、あれ」

 シルヴィアが苦笑した。

「よくあそこまで無茶苦茶言えるわよね。九割方作り話じゃない」

「…何聞いた?」

「言い寄ってきた男の人のモノを片っ端から潰しまくってるって」

「うわあ……」

 思わず内股になってしまいそうな噂だな……

「本人には聞かせたくないな」

「そうだね。まあ、わたしたちがしっかりフォローしてあげなきゃね」

「この告知期間ってどうにかなんねえのかな。これがなければ明日にでも式挙げたっていいのに」

 そう言うと、シルヴィアは苦笑いした。

「やっつけ仕事みたいに言わないの。ミネルヴァにとっては一生一度のことなんだから、素敵な思い出にしてあげてねーーわたしの時みたいに」

 笑顔でそう言われると嬉しくなるな。シルヴィアとの結婚式は、俺にとっても最高に幸せな時間だったから。

「あの時は気合入ってたんだよな」

 毎日が濃すぎたせいで、随分時間が経ったように感じるが、シルヴィアとの結婚式からまだ半年くらいしか経っていないんだな……

「…何だか信じらんねえな」

「何が?」

「一年前は、俺たちお互いのこと知らなかったんだよな」

「そう言われればそうね」

 シルヴィアは感心したように頷いた。

 しばし、二人それぞれ追憶にふける。

 色々あった…ってか、ありすぎたな。マジで。こんな体験できるヤツなんてそうはいないだろう。この世界に召喚された人たちの中でもダントツに強烈な日々を過ごしてきた自信がある。

 元の世界で過ごした十八年よりもこっちでの一年足らずの方が濃密なんだもんな。

 それもこれも全部この可愛いシルヴィアのおかげなんだけどな。

「ーーねえ、コータロー」

「ん?」

「わたし、あなたに逢えて、ホントによかった」

 最高の笑顔でそんな風に言われたら、完全にヤラれてしまう。

 思わずきつく抱きしめた。

「きゃっ」

「俺も同じ気持ちだ。シルヴィアと逢えて、本当によかったよ」

「嬉しい」

 顔を胸板にすりつけられると、もう止まらなくなってしまう。

 シルヴィアも同じ気持ちのようだ。目がとろんと蕩けている。

「…ミネルヴァは?」

「皆と買い物に出かけてる。夕方まで帰って来ないよ」

「…まだ昼間だよ?」

「たまにはいいさ。こうやって二人っきりっての、最近なかったし」

 シルヴィアはこくんと頷いた。

「シルヴィアが欲しい」

「…うん」

 柔らかなシルヴィアを抱き上げて、可能な限り優しくベッドへと運んだ。

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