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111 今の、演技だからね?
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初陣としては上々ーーと言うか予想を遥かに超えた戦果を挙げて、城へ戻ってきた。
「あの破壊力、ハンパねえな」
「びっくりしたわ、ホント」
「まさか鞭があんなに使える武器だとは」
感嘆の声には少なからぬ畏れが混じっていた。
まあ、まかり間違ってあの鞭が自分に向けられたらと思ってしまったら、平静を保てないのも無理はない。かく言う俺も、模擬戦の時にミネルヴァが力加減を誤っていたら俺もあのオークみたいになっていたのかと思うと、何がとは言わないが、縮み上がる。
「貴様ら、何をしているか!」
いきなり怒号を浴びせられた。見れば、先日喧嘩を売ってきた侯爵とやらがいきり立っている。
「ミネルヴァ様を戦場に連れ出すなど言語道断! 万が一のことがあったら、どうするつもりか」
「ブライト王子がいたぞ」
何の役にも立ってなかったけどな。
「貴様らのことを言ってるんだ。ミネルヴァ様に何かあったらどう責任を取るつもりだったのか、言ってみろ」
うるせえな、この粘着質。
「俺の嫁なんだ。何が何でも守るに決まってんじゃねえか」
「嫁呼ばわりはまだ早い。わしは認めておらん」
「あんたの許可なんざ求めてないぜ」
「やかましい。これ以上貴様と話すことはない」
侯爵はミネルヴァに向き直った。
「姫様、今日は姫様に相応しい家柄の者を連れて参りました。私の甥にあたる男でーー」
「お断りします」
最後まで言わせることなく、ミネルヴァはぶった斬った。
「姫様!?」
「この方にはお見合いを断られたことがあるんですが、今更何ですか?」
うお、ミネルヴァ、その目怖ぇぞ。
虫けらを見るような目は限りなく冷たかった。
「ミネルヴァ、あの時の僕はまだ若かったんだ。今なら君のことを受け止めてあげられると思うんだ」
うわー、こいついい度胸してんなあ。今のミネルヴァに話しかけるなんて絶対できねえぞ。チャレンジャーなのか、単なる馬鹿なのかーー多分馬鹿だな。
しかも、言ってることがクソすぎる。
バシイッ!
無言のまま振るわれた鞭が、地面を深く抉った。
反射的に背筋が伸びた。
真剣にイラついてる。これ以上怒らせたらヤバい。マジでヤバい。さすがの馬鹿も言葉を失っている。
「消えて」
声に温度があったら、絶対耳が凍ってる。それくらい冷たい声だった。
キレたミネルヴァに、馬鹿は固まってしまった。
「消えてって言ったけど?」
もう一度振るわれた鞭が馬鹿の足元に炸裂した。
「ひいっ」
馬鹿は悲鳴をあげて尻もちをついた。
「もう一度だけ言うよ。消えて。消えてくれなきゃーー刻むわよ」
「す、すみませんでしたあっ!」
脱兎のごとく逃げていく馬鹿。
「あ、お、おいっ」
侯爵も慌てて後を追っていく。
その後ろ姿が見えなくなった後、ミネルヴァが俺を振り返った。その顔は今にも泣き出しそうに歪んでいた。
「こ、怖かったあ……」
…俺も怖かったよ……
俺の視線に何か感じるところがあったのか、ミネルヴァは上目遣いで俺を見た。
「…今の、演技だからね?」
「モチロンワカッテオリマストモ」
カタコトになってしまったのは、仕方のないことだと思って欲しい。
「あの破壊力、ハンパねえな」
「びっくりしたわ、ホント」
「まさか鞭があんなに使える武器だとは」
感嘆の声には少なからぬ畏れが混じっていた。
まあ、まかり間違ってあの鞭が自分に向けられたらと思ってしまったら、平静を保てないのも無理はない。かく言う俺も、模擬戦の時にミネルヴァが力加減を誤っていたら俺もあのオークみたいになっていたのかと思うと、何がとは言わないが、縮み上がる。
「貴様ら、何をしているか!」
いきなり怒号を浴びせられた。見れば、先日喧嘩を売ってきた侯爵とやらがいきり立っている。
「ミネルヴァ様を戦場に連れ出すなど言語道断! 万が一のことがあったら、どうするつもりか」
「ブライト王子がいたぞ」
何の役にも立ってなかったけどな。
「貴様らのことを言ってるんだ。ミネルヴァ様に何かあったらどう責任を取るつもりだったのか、言ってみろ」
うるせえな、この粘着質。
「俺の嫁なんだ。何が何でも守るに決まってんじゃねえか」
「嫁呼ばわりはまだ早い。わしは認めておらん」
「あんたの許可なんざ求めてないぜ」
「やかましい。これ以上貴様と話すことはない」
侯爵はミネルヴァに向き直った。
「姫様、今日は姫様に相応しい家柄の者を連れて参りました。私の甥にあたる男でーー」
「お断りします」
最後まで言わせることなく、ミネルヴァはぶった斬った。
「姫様!?」
「この方にはお見合いを断られたことがあるんですが、今更何ですか?」
うお、ミネルヴァ、その目怖ぇぞ。
虫けらを見るような目は限りなく冷たかった。
「ミネルヴァ、あの時の僕はまだ若かったんだ。今なら君のことを受け止めてあげられると思うんだ」
うわー、こいついい度胸してんなあ。今のミネルヴァに話しかけるなんて絶対できねえぞ。チャレンジャーなのか、単なる馬鹿なのかーー多分馬鹿だな。
しかも、言ってることがクソすぎる。
バシイッ!
無言のまま振るわれた鞭が、地面を深く抉った。
反射的に背筋が伸びた。
真剣にイラついてる。これ以上怒らせたらヤバい。マジでヤバい。さすがの馬鹿も言葉を失っている。
「消えて」
声に温度があったら、絶対耳が凍ってる。それくらい冷たい声だった。
キレたミネルヴァに、馬鹿は固まってしまった。
「消えてって言ったけど?」
もう一度振るわれた鞭が馬鹿の足元に炸裂した。
「ひいっ」
馬鹿は悲鳴をあげて尻もちをついた。
「もう一度だけ言うよ。消えて。消えてくれなきゃーー刻むわよ」
「す、すみませんでしたあっ!」
脱兎のごとく逃げていく馬鹿。
「あ、お、おいっ」
侯爵も慌てて後を追っていく。
その後ろ姿が見えなくなった後、ミネルヴァが俺を振り返った。その顔は今にも泣き出しそうに歪んでいた。
「こ、怖かったあ……」
…俺も怖かったよ……
俺の視線に何か感じるところがあったのか、ミネルヴァは上目遣いで俺を見た。
「…今の、演技だからね?」
「モチロンワカッテオリマストモ」
カタコトになってしまったのは、仕方のないことだと思って欲しい。
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