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第6話「元夫婦、刃を交える宿命の地で」
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新生ヴァンデルーク王国の独立宣言は、大陸中に衝撃を与えた。
セシリアは激昂し、「魔女アリシアとその傀儡である偽皇帝クロードを討伐せよ」との勅命を皇国全軍に下した。ノースガルドを覆う光の結界の外には、レヴァント皇国の大軍が布陣し、今や遅しと攻撃の機会を窺っている。
「本当に、私と戦うことになるぞ」
城壁の上から眼下に広がる皇国軍を見下ろしながら、隣に立つクロードがつぶやいた。
「ええ。ですが、これは必要な戦いです。私たちが真に戦うべき相手が誰なのかを、皆に知らしめるために」
私は迷いなく答えた。
セシリアは、クロードに瓜二つの影武者を立て、彼が軍を率いているように見せかけていた。そして、魔術で兵士たちの敵愾心を煽り、正常な判断力を奪っている。彼らを正気に戻すには、圧倒的な力でセシリアの魔術を打ち破るしかない。
「作戦通り、私が前線で敵を引きつけます。カイ、エリオット、リナリア、皆のことは任せました」
「アリシア様、ご武運を」
仲間たちに見送られ、私は一人、城門を開いて敵軍の前に立った。たった一人で現れた私を見て、皇国軍は一瞬どよめいたが、すぐに鬨の声を上げて殺到してきた。
「愚かな魔女め!」
先陣を切って突進してきたのは、セシリア派の筆頭である将軍だった。私は冷静に彼の剣を受け流し、古代魔法で強化した体術で一瞬にして組み伏せる。
「星の光よ、彼の心の闇を払え!」
私の掌から放たれた浄化の光が将軍を包むと、彼の瞳から狂信的な光が消え、正気を取り戻した。
「なっ…私は、一体何を…?」
これを皮切りに、私は戦場を駆け巡った。魔法で兵士たちの洗脳を解き、武器を奪い、しかし命までは奪わない。私の目的は、彼らを殺すことではないからだ。
だが、その時。皇国軍の本陣から、凄まじい威圧感を放つ一人の騎士が姿を現した。クロードと寸分違わぬ姿をした、影武者だ。彼の体からは、セシリアの邪悪な魔力が黒いオーラとなって立ち上っている。
「アリシア…よくも我が軍を混乱させてくれたな。ここで、お前を討つ」
影武者は、クロードと全く同じ声で、しかし感情のない冷たい口調で言った。
私は剣を構え、彼と対峙する。元夫(の偽物)と、再び刃を交えることになるとはなんという宿命だろう。
影武者の剣は、凄まじいの一言だった。セシリアの魔力で強化されているのか、一撃一撃が異常なほど重い。私は古代魔法を駆使して防御と反撃を繰り返すが、徐々に追い詰められていく。
「アリシア!」
城壁の上から、本物のクロードの焦った声が聞こえる。
(大丈夫…まだよ!)
私は一瞬の隙を突き、影武者との距離を取る。そして、これまでで最大の魔力を集中させた。
「これが、私の答えよ!――星天の裁き(ジャッジメント・オブ・ヘブン)!」
天から降り注いだ神々しい光の柱が、影武者を直撃する。凄まじい衝撃波が戦場を吹き抜け、兵士たちは皆、地に伏せた。
光が晴れた時、そこに立っていたのは黒焦げの人形だった。セシリアの魔力が消え、影武者はその役目を終えて崩れ落ちる。
戦場に、静寂が訪れた。
洗脳から完全に解き放たれた皇国の兵士たちは、何が起こったのか分からず呆然と私を見つめている。
私は剣を鞘に納め、彼らに向かって堂々と宣言した。
「聞きなさい、レヴァント皇国の兵士たち!あなた方を操っていたのは、偽りの聖女セシリアです!彼女こそが、皇国を、そしてこの大陸を戦乱に陥れた元凶なのです!」
その時だった。私の背後、城壁の上に立つクロードが、魔法で増幅させた声で叫んだ。
「私が、本物のクロード・レヴァントだ!諸君らは、魔女セシリアに騙されていた!真の敵はアリシア・ヴァンデルークではない!王都にいる、セシリアただ一人だ!」
本物の皇帝の登場に、兵士たちは大きくどよめいた。
これで、勝負は決した。
***
だが、王都のセシリアは、まだ諦めてはいなかった。遠く離れたこの戦場の様子を水晶玉で見ていた彼女の顔が、怒りと屈辱に歪む。
「こうなったら……もう、おしまいにしてあげるわ」
彼女は不気味に微笑むと、地下に隠していた禁断の儀式を開始した。
「アリシア、見てみろ!」
クロードが空を指さす。王都の方角の空が、不吉な暗黒に染まっていく。そこから、大陸全土を覆い尽くすほどの邪悪で巨大な気配が感じられた。
「おのれ、セシリアめ…!一体、何をしようと…!」
セシリアの正体は、クロードが考えていたような狡猾な転生者などではなかった。彼女の目的は、この世界を支配することですらない。
その正体は、異世界から送り込まれた、すべてを無に帰すための「破壊の魔女」。
宿命の戦いは、まだ終わっていなかった。それは、これから始まる世界を懸けた戦いの序章に過ぎなかったのだ。
セシリアは激昂し、「魔女アリシアとその傀儡である偽皇帝クロードを討伐せよ」との勅命を皇国全軍に下した。ノースガルドを覆う光の結界の外には、レヴァント皇国の大軍が布陣し、今や遅しと攻撃の機会を窺っている。
「本当に、私と戦うことになるぞ」
城壁の上から眼下に広がる皇国軍を見下ろしながら、隣に立つクロードがつぶやいた。
「ええ。ですが、これは必要な戦いです。私たちが真に戦うべき相手が誰なのかを、皆に知らしめるために」
私は迷いなく答えた。
セシリアは、クロードに瓜二つの影武者を立て、彼が軍を率いているように見せかけていた。そして、魔術で兵士たちの敵愾心を煽り、正常な判断力を奪っている。彼らを正気に戻すには、圧倒的な力でセシリアの魔術を打ち破るしかない。
「作戦通り、私が前線で敵を引きつけます。カイ、エリオット、リナリア、皆のことは任せました」
「アリシア様、ご武運を」
仲間たちに見送られ、私は一人、城門を開いて敵軍の前に立った。たった一人で現れた私を見て、皇国軍は一瞬どよめいたが、すぐに鬨の声を上げて殺到してきた。
「愚かな魔女め!」
先陣を切って突進してきたのは、セシリア派の筆頭である将軍だった。私は冷静に彼の剣を受け流し、古代魔法で強化した体術で一瞬にして組み伏せる。
「星の光よ、彼の心の闇を払え!」
私の掌から放たれた浄化の光が将軍を包むと、彼の瞳から狂信的な光が消え、正気を取り戻した。
「なっ…私は、一体何を…?」
これを皮切りに、私は戦場を駆け巡った。魔法で兵士たちの洗脳を解き、武器を奪い、しかし命までは奪わない。私の目的は、彼らを殺すことではないからだ。
だが、その時。皇国軍の本陣から、凄まじい威圧感を放つ一人の騎士が姿を現した。クロードと寸分違わぬ姿をした、影武者だ。彼の体からは、セシリアの邪悪な魔力が黒いオーラとなって立ち上っている。
「アリシア…よくも我が軍を混乱させてくれたな。ここで、お前を討つ」
影武者は、クロードと全く同じ声で、しかし感情のない冷たい口調で言った。
私は剣を構え、彼と対峙する。元夫(の偽物)と、再び刃を交えることになるとはなんという宿命だろう。
影武者の剣は、凄まじいの一言だった。セシリアの魔力で強化されているのか、一撃一撃が異常なほど重い。私は古代魔法を駆使して防御と反撃を繰り返すが、徐々に追い詰められていく。
「アリシア!」
城壁の上から、本物のクロードの焦った声が聞こえる。
(大丈夫…まだよ!)
私は一瞬の隙を突き、影武者との距離を取る。そして、これまでで最大の魔力を集中させた。
「これが、私の答えよ!――星天の裁き(ジャッジメント・オブ・ヘブン)!」
天から降り注いだ神々しい光の柱が、影武者を直撃する。凄まじい衝撃波が戦場を吹き抜け、兵士たちは皆、地に伏せた。
光が晴れた時、そこに立っていたのは黒焦げの人形だった。セシリアの魔力が消え、影武者はその役目を終えて崩れ落ちる。
戦場に、静寂が訪れた。
洗脳から完全に解き放たれた皇国の兵士たちは、何が起こったのか分からず呆然と私を見つめている。
私は剣を鞘に納め、彼らに向かって堂々と宣言した。
「聞きなさい、レヴァント皇国の兵士たち!あなた方を操っていたのは、偽りの聖女セシリアです!彼女こそが、皇国を、そしてこの大陸を戦乱に陥れた元凶なのです!」
その時だった。私の背後、城壁の上に立つクロードが、魔法で増幅させた声で叫んだ。
「私が、本物のクロード・レヴァントだ!諸君らは、魔女セシリアに騙されていた!真の敵はアリシア・ヴァンデルークではない!王都にいる、セシリアただ一人だ!」
本物の皇帝の登場に、兵士たちは大きくどよめいた。
これで、勝負は決した。
***
だが、王都のセシリアは、まだ諦めてはいなかった。遠く離れたこの戦場の様子を水晶玉で見ていた彼女の顔が、怒りと屈辱に歪む。
「こうなったら……もう、おしまいにしてあげるわ」
彼女は不気味に微笑むと、地下に隠していた禁断の儀式を開始した。
「アリシア、見てみろ!」
クロードが空を指さす。王都の方角の空が、不吉な暗黒に染まっていく。そこから、大陸全土を覆い尽くすほどの邪悪で巨大な気配が感じられた。
「おのれ、セシリアめ…!一体、何をしようと…!」
セシリアの正体は、クロードが考えていたような狡猾な転生者などではなかった。彼女の目的は、この世界を支配することですらない。
その正体は、異世界から送り込まれた、すべてを無に帰すための「破壊の魔女」。
宿命の戦いは、まだ終わっていなかった。それは、これから始まる世界を懸けた戦いの序章に過ぎなかったのだ。
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