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第9話「最終決戦―魔女討伐」
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「よく来たわね、アリシア。そして、私の可愛い操り人形だったクロード」
王城のバルコニーから響くセシリアの声は魔法で増幅され、平原全体に響き渡った。その声にはもはや聖女の欠片もなく、底知れない悪意と侮蔑が込められている。
「二人揃って、私の計画をめちゃくちゃにしてくれて。でも、もう遅いの。この世界は、今日でおしまいなんだから!」
セシリアが両手を天に掲げると、王城の背後の空が禍々しい紫色の渦に包まれた。大地が激しく揺れ、空間そのものが引き裂かれるようなおぞましい音が響く。
「いでよ、終焉の使者!我が絶望を糧に、このちっぽけな世界を喰らい尽くせ!黒き竜(ブラックドラゴン)!」
空間の裂け目から、巨大な黒い影が這い出してきた。それは、伝説に語られる存在さえ超越する、絶望の化身だった。山のように巨大な体躯、あらゆる光を吸収する漆黒の鱗、そしてその咆哮は聞く者の魂を直接凍てつかせる。
黒き竜が口から放った暗黒のブレスの一撃で、平原の一部がえぐり取られ虚無に帰した。連合軍も皇国軍も、その圧倒的な力の前に恐怖で動きを止めてしまう。
「だめ…あれは、私たちの手に負える相手じゃない…」
リナリアが絶望の声を上げる。
だが、私は諦めなかった。この時のために、私は古文書を解読し続けてきたのだ。
「クロード!あなたは兵を率いて、セシリアを!」
「アリシア、お前はどうするんだ!?」
「私にしか、できないことがあるの!」
私は馬を駆り、単身、黒き竜へと向かっていく。
「カイ!エリオット!皆の指揮を!」
「アリシア様!」
仲間たちの悲痛な叫びを背に受けながら、私は竜の眼前に立った。
「…ごめんなさい、ギルバート。最後まで、わがままな主で」
心の中で、いつも私を支えてくれた老執事に別れを告げる。これから私がやろうとしていることは、命の保証がない危険な賭けだった。
私は杖を天に突き上げ、最後の詠唱を始める。それは、ヴァンデルークの血にのみ許された命を燃やす大魔法。
「星々の源流、生命の始祖よ!我が魂を捧げ、その血を楔と成す!この地に現れし厄災を、原初の揺り籠へ還したまえ!――王家の封印(ロイヤル・シール)!」
私の体から、眩いほどの黄金の光が溢れ出した。それは私の生命力そのもの。光は無数の鎖となり、黒き竜の巨体を縛り上げていく。
『グオオオオオォォッ!』
黒き竜が苦しみ、暴れ狂う。だが、王家の血を宿した封印の鎖は決して解けることはない。
「今よ!クロード!」
私の最後の力を振り絞った叫びを聞き、クロードは我に返った。
「全軍、私に続け!目的はセシリアただ一人!撃てぇっ!」
クロードの号令一下、無数の矢と魔法が王城のバルコニーに立つセシリアへと殺到した。
「くっ…!この、出来損ないの末裔がぁっ!」
セシリアは魔力障壁で攻撃を防ぐが、集中が乱れたことで竜への魔力供給が途切れる。
その一瞬の隙を、クロードは見逃さなかった。
彼は自ら城壁を駆け上がり、稲妻のような速さでセシリアの懐に飛び込むと聖銀で作られた剣を、彼女の心臓めがけて突き立てた。
「が…はっ…!」
セシリアの体から、黒い瘴気が霧のように噴き出す。
「なぜ…なぜ、この私が…ただの人間ごときに…」
彼女は、信じられないといった表情で胸に突き刺さる剣とクロードの顔を交互に見た。
「お前の負けだ、セシリア」
クロードが冷たく言い放つ。
黒き竜は、主からの魔力供給を完全に断たれ私の封印術によって光の粒子となって霧散していく。
役目を終えた私は、その場に崩れ落ちた。意識が、遠のいていく…。
倒れゆくセシリアは、最後の力を振り絞り狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「…ふふ、ふふふ。これで終わりだと思うな。この世界だけじゃない…お前たちのいる全ての物語(せかい)は…いつか必ず、私のような“破壊者”によって滅びる運命なのよ…」
それが、偽りの聖女であり異世界の魔女であったセシリアの、最期の言葉だった。
彼女の体は塵となって崩れ、風に攫われて消えていった。
邪悪な気配が完全に消え去った平原に、静寂が戻る。そして、誰からともなく歓声が上がった。それはやがて、大陸を揺るがすほどの大きなうねりとなった。
薄れゆく意識の中、私は誰かが私の名を呼びながら駆け寄ってくるのを感じていた。
その声は、かつて私を絶望の淵に突き落とした夫の声によく似ていた。
王城のバルコニーから響くセシリアの声は魔法で増幅され、平原全体に響き渡った。その声にはもはや聖女の欠片もなく、底知れない悪意と侮蔑が込められている。
「二人揃って、私の計画をめちゃくちゃにしてくれて。でも、もう遅いの。この世界は、今日でおしまいなんだから!」
セシリアが両手を天に掲げると、王城の背後の空が禍々しい紫色の渦に包まれた。大地が激しく揺れ、空間そのものが引き裂かれるようなおぞましい音が響く。
「いでよ、終焉の使者!我が絶望を糧に、このちっぽけな世界を喰らい尽くせ!黒き竜(ブラックドラゴン)!」
空間の裂け目から、巨大な黒い影が這い出してきた。それは、伝説に語られる存在さえ超越する、絶望の化身だった。山のように巨大な体躯、あらゆる光を吸収する漆黒の鱗、そしてその咆哮は聞く者の魂を直接凍てつかせる。
黒き竜が口から放った暗黒のブレスの一撃で、平原の一部がえぐり取られ虚無に帰した。連合軍も皇国軍も、その圧倒的な力の前に恐怖で動きを止めてしまう。
「だめ…あれは、私たちの手に負える相手じゃない…」
リナリアが絶望の声を上げる。
だが、私は諦めなかった。この時のために、私は古文書を解読し続けてきたのだ。
「クロード!あなたは兵を率いて、セシリアを!」
「アリシア、お前はどうするんだ!?」
「私にしか、できないことがあるの!」
私は馬を駆り、単身、黒き竜へと向かっていく。
「カイ!エリオット!皆の指揮を!」
「アリシア様!」
仲間たちの悲痛な叫びを背に受けながら、私は竜の眼前に立った。
「…ごめんなさい、ギルバート。最後まで、わがままな主で」
心の中で、いつも私を支えてくれた老執事に別れを告げる。これから私がやろうとしていることは、命の保証がない危険な賭けだった。
私は杖を天に突き上げ、最後の詠唱を始める。それは、ヴァンデルークの血にのみ許された命を燃やす大魔法。
「星々の源流、生命の始祖よ!我が魂を捧げ、その血を楔と成す!この地に現れし厄災を、原初の揺り籠へ還したまえ!――王家の封印(ロイヤル・シール)!」
私の体から、眩いほどの黄金の光が溢れ出した。それは私の生命力そのもの。光は無数の鎖となり、黒き竜の巨体を縛り上げていく。
『グオオオオオォォッ!』
黒き竜が苦しみ、暴れ狂う。だが、王家の血を宿した封印の鎖は決して解けることはない。
「今よ!クロード!」
私の最後の力を振り絞った叫びを聞き、クロードは我に返った。
「全軍、私に続け!目的はセシリアただ一人!撃てぇっ!」
クロードの号令一下、無数の矢と魔法が王城のバルコニーに立つセシリアへと殺到した。
「くっ…!この、出来損ないの末裔がぁっ!」
セシリアは魔力障壁で攻撃を防ぐが、集中が乱れたことで竜への魔力供給が途切れる。
その一瞬の隙を、クロードは見逃さなかった。
彼は自ら城壁を駆け上がり、稲妻のような速さでセシリアの懐に飛び込むと聖銀で作られた剣を、彼女の心臓めがけて突き立てた。
「が…はっ…!」
セシリアの体から、黒い瘴気が霧のように噴き出す。
「なぜ…なぜ、この私が…ただの人間ごときに…」
彼女は、信じられないといった表情で胸に突き刺さる剣とクロードの顔を交互に見た。
「お前の負けだ、セシリア」
クロードが冷たく言い放つ。
黒き竜は、主からの魔力供給を完全に断たれ私の封印術によって光の粒子となって霧散していく。
役目を終えた私は、その場に崩れ落ちた。意識が、遠のいていく…。
倒れゆくセシリアは、最後の力を振り絞り狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「…ふふ、ふふふ。これで終わりだと思うな。この世界だけじゃない…お前たちのいる全ての物語(せかい)は…いつか必ず、私のような“破壊者”によって滅びる運命なのよ…」
それが、偽りの聖女であり異世界の魔女であったセシリアの、最期の言葉だった。
彼女の体は塵となって崩れ、風に攫われて消えていった。
邪悪な気配が完全に消え去った平原に、静寂が戻る。そして、誰からともなく歓声が上がった。それはやがて、大陸を揺るがすほどの大きなうねりとなった。
薄れゆく意識の中、私は誰かが私の名を呼びながら駆け寄ってくるのを感じていた。
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