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第10話「瓦礫の上に咲く、二つの国の誓い」
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私が次に目を覚ました時、そこは見慣れたノースガルドの領主の館…いや、今や王城となった館の自室のベッドの上だった。
窓から差し込む陽光は暖かく、小鳥のさえずりが聞こえる。悪夢のような戦いが、本当に終わったのだと実感した。
「お気づきになりましたか、アリシア様」
傍らでずっと付き添ってくれていたのだろう。ギルバートが、涙で濡れた顔をほころばせた。
「ギルバート…私、どのくらい…」
「三日三晩、お眠りになっておられました。しかし、ご無事で…本当によかった…」
命を懸けた大魔法の代償は大きく、体中の魔力がほとんど空になっていたらしい。リナリアが付きっきりで治療してくれたおかげで、一命は取り留めたのだという。
体の自由が利くようになると、私はすぐに戦後処理に取り掛かった。
大陸中の国の代表者を、このノースガルド…新生ヴァンデルーク王国に招き、戦後初の国際会議を開いた。
会議の場で、私はヴァンデルーク王国の正式な建国を宣言し女王として立つことを表明した。セシリアの脅威から世界を救った英雄として、私の言葉に異を唱える者は誰もいなかった。
会議の最終日。レヴァント皇国の皇帝として出席していたクロードが、全ての代表者の前で立ち上がった。
「諸国の代表の方々。そして、アリシア女王陛下。この場をお借りして、我がレヴァント皇国の過去の過ちを公式に謝罪したい」
彼の言葉に、場が静まり返る。
クロードは、セシリアという名の魔女に国がたぶらかされ、無実の公爵令嬢アリシア・ヴァンデルークを「悪役令嬢」に仕立て上げ、非道な追放処分を下したことの全てを包み隠さず語った。
そして、彼は玉座に座る私の前に進み出て、深く、深く頭を下げた。
「アリシア…いや、女王陛下。私の愚かな判断が、あなたに計り知れない苦痛を与えた。皇帝として、そして一人の男として心から謝罪する。誠に、申し訳なかった」
その誠実な謝罪は、私の凍てついていた心に温かな光を灯すようだった。
「顔を上げなさい、クロード皇帝。過去は水に流しましょう。私たちは、未来を見なければなりません」
私は、静かにそう告げた。
その後、クロードは皇国からの賠償金とヴァンデルーク王国との恒久的な平和条約、そして強固な同盟関係の締結を申し出た。私もそれを受諾し、二つの国はかつてないほど固い絆で結ばれることになった。
こうして、大陸にはようやく平和が訪れた。
会議が終わり、各国の代表が帰途についた後。クロードが、一人で私の執務室を訪れた。
「これで、少しは償いになっただろうか」
彼は、どこか寂しげな表情で尋ねた。
「ええ。十分すぎるほどです」
「そうか…」
しばらくの沈黙が、二人の間に流れる。それは気まずいものではなく、多くのことを乗り越えてきた者同士だけが共有できる穏やかな時間だった。
「私たちは、二度と戦うことはない」
クロードが、窓の外を見ながらつぶやいた。
「ええ、誓いましょう。この平和を、永遠に」
私も、同じように答えた。
私たちは、確かに新しい関係を築いた。信頼できる同盟国の元首同士として。だが、その胸の内にはまだ言葉にできない複雑な感情が渦巻いていた。
元夫婦という過去。彼が私を捨て、私が彼を打ち負かしたという事実。そして、命を懸けて互いを守った最後の戦いの記憶。
それらの感情に、どう名前をつければいいのか私たちはまだ分からずにいた。
クロードは、「皇国の復興が待っている」と言い残し王都へと帰っていった。
彼の後ろ姿を見送りながら、私は思う。私たちの物語は、まだ終わっていない。これから、私たちはこの瓦礫の上にどんな未来の花を咲かせていくのだろうか、と。
女王としての私の道は、まだ始まったばかりなのだ。
窓から差し込む陽光は暖かく、小鳥のさえずりが聞こえる。悪夢のような戦いが、本当に終わったのだと実感した。
「お気づきになりましたか、アリシア様」
傍らでずっと付き添ってくれていたのだろう。ギルバートが、涙で濡れた顔をほころばせた。
「ギルバート…私、どのくらい…」
「三日三晩、お眠りになっておられました。しかし、ご無事で…本当によかった…」
命を懸けた大魔法の代償は大きく、体中の魔力がほとんど空になっていたらしい。リナリアが付きっきりで治療してくれたおかげで、一命は取り留めたのだという。
体の自由が利くようになると、私はすぐに戦後処理に取り掛かった。
大陸中の国の代表者を、このノースガルド…新生ヴァンデルーク王国に招き、戦後初の国際会議を開いた。
会議の場で、私はヴァンデルーク王国の正式な建国を宣言し女王として立つことを表明した。セシリアの脅威から世界を救った英雄として、私の言葉に異を唱える者は誰もいなかった。
会議の最終日。レヴァント皇国の皇帝として出席していたクロードが、全ての代表者の前で立ち上がった。
「諸国の代表の方々。そして、アリシア女王陛下。この場をお借りして、我がレヴァント皇国の過去の過ちを公式に謝罪したい」
彼の言葉に、場が静まり返る。
クロードは、セシリアという名の魔女に国がたぶらかされ、無実の公爵令嬢アリシア・ヴァンデルークを「悪役令嬢」に仕立て上げ、非道な追放処分を下したことの全てを包み隠さず語った。
そして、彼は玉座に座る私の前に進み出て、深く、深く頭を下げた。
「アリシア…いや、女王陛下。私の愚かな判断が、あなたに計り知れない苦痛を与えた。皇帝として、そして一人の男として心から謝罪する。誠に、申し訳なかった」
その誠実な謝罪は、私の凍てついていた心に温かな光を灯すようだった。
「顔を上げなさい、クロード皇帝。過去は水に流しましょう。私たちは、未来を見なければなりません」
私は、静かにそう告げた。
その後、クロードは皇国からの賠償金とヴァンデルーク王国との恒久的な平和条約、そして強固な同盟関係の締結を申し出た。私もそれを受諾し、二つの国はかつてないほど固い絆で結ばれることになった。
こうして、大陸にはようやく平和が訪れた。
会議が終わり、各国の代表が帰途についた後。クロードが、一人で私の執務室を訪れた。
「これで、少しは償いになっただろうか」
彼は、どこか寂しげな表情で尋ねた。
「ええ。十分すぎるほどです」
「そうか…」
しばらくの沈黙が、二人の間に流れる。それは気まずいものではなく、多くのことを乗り越えてきた者同士だけが共有できる穏やかな時間だった。
「私たちは、二度と戦うことはない」
クロードが、窓の外を見ながらつぶやいた。
「ええ、誓いましょう。この平和を、永遠に」
私も、同じように答えた。
私たちは、確かに新しい関係を築いた。信頼できる同盟国の元首同士として。だが、その胸の内にはまだ言葉にできない複雑な感情が渦巻いていた。
元夫婦という過去。彼が私を捨て、私が彼を打ち負かしたという事実。そして、命を懸けて互いを守った最後の戦いの記憶。
それらの感情に、どう名前をつければいいのか私たちはまだ分からずにいた。
クロードは、「皇国の復興が待っている」と言い残し王都へと帰っていった。
彼の後ろ姿を見送りながら、私は思う。私たちの物語は、まだ終わっていない。これから、私たちはこの瓦礫の上にどんな未来の花を咲かせていくのだろうか、と。
女王としての私の道は、まだ始まったばかりなのだ。
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