20 / 22
第19話「真の決着」
しおりを挟む
四天王ゴルザを捕らえたことで、王都は守られた。俺は王からの謁見の要請も断り、捕らえたゴルザから魔王城の場所を聞き出すと、すぐさま仲間たちと共に魔王城へと向かった。世界の根本原因を断たなければ、アティスの平和も守れないからだ。
魔王城は、邪悪な瘴気が渦巻く、禍々しい城だった。
しかし、俺たちの進軍を阻むものは、もはや何もなかった。
シルヴィアの魔道具が城の結界を破壊し、フレアの武具が待ち受ける上級デーモンを薙ぎ払い、ルナの神聖な力が瘴気を浄化していく。
そして、俺の【解析眼】が、全ての罠と敵の配置を完璧に看破していた。
玉座の間。そこに、魔王はいた。
想像していたような、筋骨隆々の恐ろしい姿ではなかった。玉座に座っていたのは、ひどくやつれ、深い孤独の影を宿した、一人の青年だった。ただ、その身から放たれる魔力の量は、ゴルザなど比較にもならないほど強大だ。
「よく来たな、新たな勇者よ」
魔王は、静かに俺を見つめて言った。
俺は彼に【解析眼】を向けた。そして、その正体を知り、息をのんだ。
【対象:魔王アビス】
【本質:古代に世界を救ったが、その強大すぎる力を恐れた人々によって裏切られ、絶望の深淵に封印された『初代勇者』の成れの果て。】
【力の源:世界そのものへの復讐心。人間に裏切られた深い孤独と憎悪が、彼の魔力の根源となっている。】
【呪い:世界への憎悪が、彼自身を蝕む呪いと化している。このままでは、いずれ世界もろとも自壊する。】
……そうか。こいつも、俺と同じだったのか。
世界のために戦い、そして世界に裏切られた者。
だが、彼の絶望は、俺のそれとは比べ物にならないほど、深く、永い。
「お前も俺を力でねじ伏せ、新たな英雄譚を紡ぐつもりか?」
魔王が、自嘲気味に笑う。
俺は、静かに首を振った。そして、腰の剣を鞘に納めた。
「あんたを倒しに来たんじゃない」
俺の言葉に、魔王だけでなく、後ろに控えていたリリアたちも驚いた顔をした。
「俺は、あんたを解放しに来た」
俺は魔王に歩み寄り、まっすぐに彼の瞳を見つめた。
「あんたの気持ちは、少しだけ分かる。信じた者に裏切られる辛さも、孤独の痛みも。だから、あんたは世界を憎んだ。だが、その憎しみが、今あんた自身を一番苦しめているんじゃないか?」
【解析眼】は、彼の力の根源である「呪い」の構造も解き明かしていた。それは、複雑に絡み合った、悲しみのエネルギーの塊だった。
「その呪い、俺なら解けるかもしれない。あんたを、その永い復讐心と孤独から解放してやれる」
俺は、魔王の胸にそっと手を当てた。
そして、【解析眼】で視た呪いの核に、俺自身の魔力を静かに流し込んでいく。憎悪の鎖を断ち切るのではなく、その絡まりを一つ一つ、丁寧に解きほぐしていくように。
力でねじ伏せるのではない。本質を理解し、その根源を癒す。
それが、俺の【解析眼】が見出した、本当の解決策だった。
「……あ……あたたかい……」
魔王の体から、黒い瘴気が浄化されていく。彼の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。何百年という、永い孤独の末に流した涙だった。
やがて、全ての瘴気が消え去り、そこにはただの、穏やかな顔つきの青年が残った。
「……ありがとう。君が、俺の本当の呪いを解いてくれた……」
戦意を失い、自ら力を封じた元・魔王。
世界は、新たな血を流すことなく、本当の意味で救われた。
こうして、魔王の侵攻は終わった。
歴史に残る英雄譚でも、壮絶な死闘でもない。
ただ一人の青年が、もう一人の孤独な青年の心を救った、静かで、優しい決着だった。
魔王城は、邪悪な瘴気が渦巻く、禍々しい城だった。
しかし、俺たちの進軍を阻むものは、もはや何もなかった。
シルヴィアの魔道具が城の結界を破壊し、フレアの武具が待ち受ける上級デーモンを薙ぎ払い、ルナの神聖な力が瘴気を浄化していく。
そして、俺の【解析眼】が、全ての罠と敵の配置を完璧に看破していた。
玉座の間。そこに、魔王はいた。
想像していたような、筋骨隆々の恐ろしい姿ではなかった。玉座に座っていたのは、ひどくやつれ、深い孤独の影を宿した、一人の青年だった。ただ、その身から放たれる魔力の量は、ゴルザなど比較にもならないほど強大だ。
「よく来たな、新たな勇者よ」
魔王は、静かに俺を見つめて言った。
俺は彼に【解析眼】を向けた。そして、その正体を知り、息をのんだ。
【対象:魔王アビス】
【本質:古代に世界を救ったが、その強大すぎる力を恐れた人々によって裏切られ、絶望の深淵に封印された『初代勇者』の成れの果て。】
【力の源:世界そのものへの復讐心。人間に裏切られた深い孤独と憎悪が、彼の魔力の根源となっている。】
【呪い:世界への憎悪が、彼自身を蝕む呪いと化している。このままでは、いずれ世界もろとも自壊する。】
……そうか。こいつも、俺と同じだったのか。
世界のために戦い、そして世界に裏切られた者。
だが、彼の絶望は、俺のそれとは比べ物にならないほど、深く、永い。
「お前も俺を力でねじ伏せ、新たな英雄譚を紡ぐつもりか?」
魔王が、自嘲気味に笑う。
俺は、静かに首を振った。そして、腰の剣を鞘に納めた。
「あんたを倒しに来たんじゃない」
俺の言葉に、魔王だけでなく、後ろに控えていたリリアたちも驚いた顔をした。
「俺は、あんたを解放しに来た」
俺は魔王に歩み寄り、まっすぐに彼の瞳を見つめた。
「あんたの気持ちは、少しだけ分かる。信じた者に裏切られる辛さも、孤独の痛みも。だから、あんたは世界を憎んだ。だが、その憎しみが、今あんた自身を一番苦しめているんじゃないか?」
【解析眼】は、彼の力の根源である「呪い」の構造も解き明かしていた。それは、複雑に絡み合った、悲しみのエネルギーの塊だった。
「その呪い、俺なら解けるかもしれない。あんたを、その永い復讐心と孤独から解放してやれる」
俺は、魔王の胸にそっと手を当てた。
そして、【解析眼】で視た呪いの核に、俺自身の魔力を静かに流し込んでいく。憎悪の鎖を断ち切るのではなく、その絡まりを一つ一つ、丁寧に解きほぐしていくように。
力でねじ伏せるのではない。本質を理解し、その根源を癒す。
それが、俺の【解析眼】が見出した、本当の解決策だった。
「……あ……あたたかい……」
魔王の体から、黒い瘴気が浄化されていく。彼の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。何百年という、永い孤独の末に流した涙だった。
やがて、全ての瘴気が消え去り、そこにはただの、穏やかな顔つきの青年が残った。
「……ありがとう。君が、俺の本当の呪いを解いてくれた……」
戦意を失い、自ら力を封じた元・魔王。
世界は、新たな血を流すことなく、本当の意味で救われた。
こうして、魔王の侵攻は終わった。
歴史に残る英雄譚でも、壮絶な死闘でもない。
ただ一人の青年が、もう一人の孤独な青年の心を救った、静かで、優しい決着だった。
58
あなたにおすすめの小説
追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!
黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。
そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。
「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」
これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。
追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される
黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」
無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!?
自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。
窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!
婚約破棄された悪役令嬢の私、前世の記憶を頼りに辺境で農業始めます。~美味しい野菜で国を救ったら聖女と呼ばれました~
黒崎隼人
ファンタジー
王太子アルベルトから「悪役令嬢」の濡れ衣を着せられ、辺境へ追放された公爵令嬢エリザベート。しかし彼女は動じない。なぜなら彼女には、前世で日本の農業研究者だった記憶があったから!
痩せた土地、疲弊した人々――「ならば私が、この地を楽園に変えてみせる!」
持ち前の知識と行動力で、次々と農業改革を成功させていくエリザベート。やがて彼女の噂は王都にも届き、離婚を告げたはずの王太子が、後悔と疑問を胸に辺境を訪れる。
「離婚した元夫婦」が、王国を揺るがす大きな運命の歯車を回し始める――。これは、復縁しない二人が、最高のパートナーとして未来を築く、新しい関係の物語。
ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。
森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。
一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。
これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。
離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる!
前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。
「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。
一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……?
これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~
黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。
待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金!
チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。
「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない!
輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる!
元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる