『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第2話 前提となる話 ~【オレ】の生い立ち~

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 オレは知っていた。
 母が、壊れていく音を、毎日聞いていた。
 それは、怒りでも憎しみでもない。
 世間に押し潰された人間が、最後に出す悲鳴だった。

 父が死んだとき、母はまだ若かった。
 妊娠を知った直後だった。
「最後の稼ぎに行ってくる」
 そう言って、父は潜った。
 そして、帰らなかった。

 遺族年金は出なかった。
 資格がなかった。
 すべて、父の両親のものになった。
 彼らは、オレを「知らない」と言った。

 母は、働いた。
 昼も夜も。
 でも、ダンジョン産業が広がる中で、『普通の仕事』は価値を失っていった。
「子供を育てるだけで偉い」
 なんて言葉は、誰も口にしなかった。

 オレは、スキルが弱かった。
 補助系ばかり。
 荷物持ち。
 それが限界だった。

 母は、笑った。
「役立たず」と言って。
 でも、その笑いは、自分自身に向けた刃だった。

 ある夜、喉が渇いて台所に行った。
 冷蔵庫の明かりの中で、母が膝を抱えていた。
 声は出さず、肩だけが震えていた。

 その姿は、誰にも助けられなかった人間の、最後の形だった。

 翌朝、母は笑っていた。
「役立たず」と、いつも通りに。
 でも、あの夜の光景は、胸の奥に沈んでいる。

 母は、オレを捨てなかった。
 でも、守ることもできなかった。
 だから、壊れた。
 壊れることで、守ったふりをした。

 オレには、学校があった。
 母には、家しかなかった。
 だから、泣けなかった。

 小学校に入れば、何かが変わると思っていた。
 でも、変わらなかった。

 運動会では、全体競技だけ。
 学園祭では、準備だけ。
 本番では、いなかったことにされた。

 中学に入っても、変わらなかった。
 教師にすら、無視されるようになった。

 中学に入っても芽が出ない者は、もう終わりだ。
 そういう空気が、あった。

 オレは、机だった。
 椅子だった。
 黒板だった。
 壊れたら、取り替えればいいだけの存在。

 高校に入っても、変わらなかった。
 座学は中の下。
 実技は評価すらされない。
 寝ていても、全力でやっても、同じだった。

 だから、オレは──クラスメイトの雑用をこなす『道具』だった。
 使い捨ての、ね。

 ・・・これが、オレの前提。
 だから、捨てられたとき、何も言えなかった。

 でも、今は違う。

「役立たず」
 それは、母がカルマに向けて言った言葉。
 でも、あの夜、冷蔵庫の明かりの中で震えていた母の背中は、まるで自分自身に向かって、そう言っているようだった。

 カルマはその言葉をずっと抱えてきた。
 でも今、最下層に落ちたことで、ようやく気づき始めてる。

 オレは、役立たずだった。
 でも、役に立つ『道具』にはなれた。
 だから、捨てられた。
 使い潰されることになった。

 でも──それは変わった。
 オレは、誰にも使われない。
 誰にも命令されない。

 オレは、オレのために動く。
 それが、『役立たず』の反逆だ。

 あの夜、母が見ていた壁の向こうに、今、オレは立っている。

 そのとき、あいつらをどうするかって? 
 さぁ?
 ―――君ならどうする?

「一人ずつ、静かに処理をする・・・・他にあるか?」

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