『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第20話 末路③ ~出会ってしまう~

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   ◇双子、一度やってみたかった◇
 
 「たくっ、どこまで行ったんだ?」
 「いないねぇ」
 剣士を探して、奥へと入っていく双子。

 太い通路に出た。
 直後。

 「へぶ!」
 「ぶへ!」
 二人の姿も消えた。

 「ひっ!」
 「ウソっ!」
 後ろをついていっていた回復役と魔法使いが、足を止めて壁に縋りついた。

 そこにあったのは焦げ茶色の大きな『球』。
 後ろ足で支えている体長2メートルの虫もいた。
 それも番い——カップルだ。

 迷宮名物『転がる巨石』の虫バージョン。
 探索者が『成して埋め棄てたモノ』——フンを固め集めたモノを転がしてフンコロガシさん(58階層ボス)が登場したのだった。

 「や、やだ」
 「くっさ!」
 二人ともが顔を背け、ついで全力ダッシュで逃げに入った。

 無駄なことだ。
 フンコロガシさんは、脇道に逸れてまで二人を追おうとはしない。
 大事な、大事な『糞球』を運ばなくてはならないのだから。
 
 ちょっと、余計なものがくっついちゃったけどね。
 
 双子を轢き倒してしまったのだ。
 二人を大切な『糞球』に埋め込ませてしまった。

 ゴロリ。
 フンコロガシさんが、ゆっくりと動く。
 半回転させて、下になっていた二人が外に出るようにした。

「ご、ゴベェェェェ!」
「ゲホ。ゲロロロロロ!」
 二人は、転がる球に巻き込まれ、泥のような塊にまみれた。

 泥のような塊──。
 だが、泥ではなかった。

 湿っていて、粘り気があり、鼻を刺すような刺激臭。

 それは、探索者たちが残していった『成果』だった。

 息もできず、視界も奪われ、ただ苦しみの中で呻いた。
 それが何であるかを考える余裕すらなかった。
 ただ、臭いと、生理的に吐き気を催す『味』だけが残る。

 ゴロ!
 糞球が再び転がる。

 べちゃ!

 二人のせいで湿った土に顔が押し付けられる。
 吐き出した糞が、再び顔に当たりくっついたようだ。
 転がる球が再び動き、双子の顔が泥のような塊に押し付けられた。
 何が付着しているかを考え、楽しむことは、さすがの双子にもできない。

 付着したモノのおかげで『異物感』が薄らいだのだろう。
 気を取り直したように糞球を転がして、フンコロガシさんはダンジョンの奥へと消えていった。


 後日。
 二人は発見される。
 球の中に埋もれ、頭だけを出した姿で。

 かつては、男子の寝袋に潜り込むのが得意だった双子。
 今は、迷宮の『寝床』に潜り込まされていた。

   ◇遠のく意識◇

 「ひっ、ひぃっ・・・」
 わき目も振らず走った回復役。
 気が付くと一人で、細い通路を歩いていた。

 グサ!

「カハッ!」
 細い体が、宙に浮いた。
 右肩から何か、突起が突き出ている。

 針だ。
 少し湾曲した針。
 先端から、とろりとした液体が滴っている。
 そのはりが、肩を貫通していた。

 ガン!
 突起の生えた体が、持ち上げられて天井に激突した。
 脳天が見事に天井に当たり、衝撃で星が飛んでいる。

「な、に?」
 無意識にだろう。
 自分に『ヒール』を使いながら振り返った。

「そ、んな・・・」
 絶望の呟きが漏れる。

 振り返った先にいたのは紅い甲殻類。
 しかも大きさが2メートル越えの、サソリだった。

「ぐッ、ぎぃぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
 ここで、ようやく毒が回ったらしい。
 全身を電流が走るような感覚にのたうった。

 幸運と言っていいのだろうか?
 のたうったことが功を奏して、毒針から抜け出せた。
 地面に落ちて、這おうとしている。

「ふ、ふぐっ・・・」
 毒に犯されながらも、何とか動こうと必死だ。
 でも、そうはいかない。
 今度はしびれが来たらしく、その場で動けなくなった。

「や、やぁだぁ!」
 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を歪めて、いやいやと首を振る。

 その足元にはナメクジがいた。
 15センチくらいのが無数にだ。
 ふと見れば、体長が3メートルにはなりそうな大ナメクジがいて、背中から続々と小さなナメクジが下りて向かってきている。

 ナメクジたちは、足元から這い上がってきた。
 ぬるり、ぬるり。
 冷たく、湿った感触が、肌を這う。

「ひっ・・・ひんっ・・・や、やだ・・・・・・っ」

 毒のせいで、現実がぼやける。
 触れられているのに、感覚が曖昧で、どこを這われているのかもわからない。

 ただ、何かが確かに『自分の中』に入り込んでくるような錯覚。
 それが、恐怖なのか、嫌悪なのか、もう判断もつかない。

「や・・・やめて・・・・・・やめてぇ・・・・・・」

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を、ナメクジが這う。
 ぬめりが唇に触れ、思わず息を呑む。

 その瞬間、自分の体が、自分のものではなくなったような感覚に襲われた。

『動けない。声も出ない。でも、何かが、確かに自分の中で動いている──。』

 そのまま、彼女は静かに意識を手放した。
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