『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第24話 往路から末路へ ◇とある四人パーティの話◇ ① 前編

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     (回想シーン)

 それは、深層へと向かう往路でのこと。
 カルマは、低レベルパーティと行動を共にしていた。

 そもそも戦闘力がほぼないカルマだ。
 前線に出ることは最終決戦でもないとありえない。
 今はモンスターを駆逐し終わった後の通路で、採取物を根こそぎ集める作業に従事させられている。

 「あははは、いいカッコウね!」

 パーティの紅一点。
 プリーストの女が、喉の奥からくすぐるような笑い声を漏らす。

「……」

 カルマは、声もなかった。
 声を出すことすら、許されていないような空気。

 落としたイアリングを探してと言われ、四つん這いで這い回っていた。
 その背中に、無言で荷物が積まれた。
 一つ、また一つ。
 まるで、黙っていればいくらでも積めるとでも言うように。

 重さで潰れそうになりながらも、腕に力を込めて持ち直す。
 その瞬間、首元に何かが巻かれた。
 キュッ、と音を立てて締まる感触。

「汚らしい使い魔みたいね」

 プリーストの女子A——アイコが、わざとらしく鼻をつまみながら笑う。
 その笑いは、楽しんでいる者のそれだった。

 最近、魔職の女子たちの間で流行っている『遊び』。
 不本意な接触を強いられた腹いせに、カルマを『おもちゃ』にすることでバランスを取っている。

「こんなのに『馬』をつけるなんて、センスのない母親ね!」

 母親まで侮辱の対象にされる。
 だが、カルマの心は動かない。
 痛みを感じるには、『心』が必要だ。

「あ、でもあれかしら? 『駄馬』って書こうとして間違えて『駆馬』になったとか?」

「ありそう!」手を叩いて笑う。
 その手のひらが、まるで鞭のように響いた。

「駆け出しそうにもありませんね。這うのがやっとだ」

 男子A——アオキが調子を合わせる。
 笑い声が、通路に反響する。

 リードを引かれ、グルグルと歩かされる。
 荷物の重さに腕が震え、膝が崩れそうになる。
 だが、崩れ落ちる前に──

「【ヒール】」

 アイコの魔法が飛ぶ。
 絶妙なタイミング。
 苦しみは消えるが、屈辱は残る。

「大丈夫かな? 頑張ってね。心から応援してるよ」

 男子B——イケダが、わざとらしい声で囁く。
 その声は、優しさの仮面をかぶった刃だった。

「はぁ~、面倒くさいなぁ」

 アイコが、わざとらしくため息をつく。
 そして、杖を軽く振る。

「【サンダーボルト】」

 バチッ!
 軽い雷撃が、カルマの足元を走る。
 荷物には影響がないよう、完璧に調整されていた。

「燃えないなら、フレア系も試したいんだけどなぁ」

 魔法の練習。
 的は、カルマ。

 魔法が撃ち込まれ、ダメージが蓄積される。
 そして回復。
 その繰り返しが、彼を『資源』に変えていく。

 痛みは、もう感じない。
 けれど、誰かの笑い声だけが、耳にこびりついて離れなかった。

「じゃあ、補充お願いね」

 アイコが手を差し出す。
 魔力が流れ出す。
 カルマの中から、彼女の体へ。

 空になっていく。
 でも、完全には空にならない。

 どこかに、まだ何かがいた。
 声にならない声が、胸の奥で泡のように弾けていた。

 それは、怒りでも悲しみでもなかった。
 ただ、『自分』がまだいると伝える声だった。

 それは、数日前のことだった。
 迷宮がまだ、カルマのものではなかった頃。
 カルマが、ただ『使われるだけの存在』だった頃。

 今、カルマは誰かの痛みを数えている。
 でも、かつては自分の痛みすら、誰にも数えてもらえなかった。

「汚らしい使い魔みたいね」「駆け出しそうにもありませんね。這うのがやっとだ」

 その言葉は、もう耳に残っていない。
 でも、笑い声だけは、まだ消えない。

 それが、カルマの始まりだった。
『声なき者』としての、最初の記録。
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