『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第53話 最前線攻略者たち ① ~英雄譚の崩壊~ 後編

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 その結果、彼らは同じミスをした。
 逆になっていると思い込んで戦闘に入り、初手でダメージを負う者が出た。

 フォローに入る者、回復に入る者。
 それぞれが自分の役目を果たそうと動いた・・・つもりだった。

 メンバーが二人減り、魔職女の一人がいまだ立ち直れていない。
 通常の動きでは足りない。
 フォローが効かない状態なのに、普段通りにしか動けていなかった。

 連携が滞る、途切れる。
 対応は後手後手に回った。
 一人、また一人と倒れていく。

「そんな、こんなことって・・・」
 最期の一人。
 サブリーダーは自分を庇って死んだリーダーに縋りついたまま、力なく首を振った。
 仲間の全滅に心を折られた彼女が、自分の足で立つことは二度となさそうだった。

 だから、彼女は仲間とともに移動した。
 体は生きていても、心は仲間とともに死んでいたのだ。


 こうして、先駆けパーティが一つ、潰えた。
 当然のことだが、今回は他のパーティに連絡することもなく。
 しわ寄せは、中盤に入ってからは先頭に立つはずだったB班にのしかかった。

     ◇

 A班が前にいる。
 そのつもりで進んでいた彼らは、来るはずのない正面からの急襲に対応できなかった。

「な!? 真正面からの接敵だと?!」
「前にいるやつらは何してんのよ!」
 予想外の方角からの敵に慌てさせられながらも、しのぐことはできた。

 彼等はモンスターの属性に関するデータを端から信じていなかった。
 自分たちで手に入れた情報以外は否定するタイプの者たちだったのだ。
 おかげで混乱しないで済んだのである。

「A班は何してるのよ!」
 B班のリーダーはダンジョンの壁を蹴りながら、スマホを取り出した。
 チャットではなく、通話ボタンを叩くようにクリックする。

 怒鳴りつけてやる!
 そう考えてのことだ。

 ムダなことだった。
 その後、何度かけ直してもA班のメンバーとはつながらなかったから。

 いや、嘘だ。
 そうではない。

 B班のリーダーは唇を噛んだ


 通話は繋がった。
 一度だけ。
 ただ、返事はなかった。

 微かに聞こえるのは、何かが滴る音と、遠くで軋むような金属音だけ。
「・・・A班? 応答しろ。・・・おい、ふざけてんじゃないわよ・・・・・・」
 返ってきたのは、ノイズ混じりの『誰かのうめき声』だった。

 何を意味するのか――
 明白すぎて口に出せなかっただけだ。

 パーティが一つ全滅した。
 この報せは、主力の進行速度を著しく下げることになる。

 犠牲者『一名』で『ダンジョンマスター』討伐。
 そのはずが、予想外に被害が膨らみつつあった。

     ◇

「こんなはずじゃない。こんなはずじゃなかった!」
 最小限の犠牲で最大限の利益を得る。
 その前提で計画され、実行されたレイドだった。

 一人を除いて、他はみんな無事に帰還するはずなのだ。
 そうでなければならなかった。

 このレイド全体のリーダーである『聖騎士』は、爆弾として使われる『仲間』のために涙溢れる追悼演説を用意してある。
 地上に出たら、『彼』の勇気を讃え『英雄』と呼ぶ心づもりでいた。

 名誉は死者に。
 実は我らに、である。

 ——いや、違う。
 本当は、俺に。

 彼の勇気を讃える言葉を、誰よりも美しく語れるのは俺だ。
 その言葉を聞いた誰もが、俺を『導いた者』として記憶する。

 そうなるはずだった。

 彼の死が、俺の名を照らすはずだった。
『彼の犠牲が我々を導いた』——そう語るはずだった言葉が、今は喉の奥で腐っていく。

 それなのに、こんなに死人が出てしまっては、ただの失策だ。
 英雄譚は、ひとりの犠牲でなければ輝かない。

 俺の言葉は、もう誰の心にも届かない。

 死者を出しての成功なら、誰でもできる。
 犠牲なく大望を叶えてこそ、尊敬を得られる。
 なのに、この様では胸を張れない。

「なにが楽に英雄になれるチャンスだ! テキトーな教師どもめ!」

  レイドリーダーは、怒りをぶつける相手を探していた。 
 その声は、誰にも届かないまま、迷宮の奥に吸い込まれていった。

 英雄譚は、誰にも語られないまま、静かに崩れていく。

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